2024.02.09
退職について
会社を“円満に退職する”方法は?
以前の日本の会社は終身雇用が基本的なシステムでしたが、最近では終身雇用制度も崩れ、積極的に転職する人も珍しくなくなりました。しかし、転職は勇気がいるものです。退職後の就職先も不安材料の一つですが、それだけではなく会社に対して退職の意思の伝え方がわからず、退職を申し出ることができない人もいるでしょう。「立つ鳥跡を濁さず」で、誰でも退職するときには円満に行いたいものですが、そんな方法はあるのでしょうか? 円満退職の理想像を考えてみましょう。
退職の意思を伝える理想的なタイミングは?
退職をしたいと思えば、まずは会社にその意思を伝えなければいけません。基本的には、無断で会社を辞めると会社側や他の社員はもちろん、取引先の会社にも迷惑がかかります。退職をする際には、残った社員に自分が行ってきた仕事の引き継ぎをすることが基本です。引き継ぎもしないまま退職をすると、何よりも同僚を困らせることになってしまいます。仕事内容によっては取引先や顧客に迷惑をかけてしまうこともあるでしょう。それはとても「円満退職」とは言えません。そこで、まずは退職の意思を伝える時期や方法について考えてみましょう。
- 退職したい日の2ヵ月前に伝える
- 会社の就業規則に従って1ヶ月前に伝える
- 退職したい日の2週間前に伝える
- やむを得ない場合は、退職代行サービスに依頼する
2ヶ月前
理想は2ヶ月前の申告です。会社と絶対に揉めたくない場合、円満退職を強く希望する場合は、退職日の2ヶ月前に伝えるのが良いでしょう。退職するまで十分な期間があるので、「こんなに急に辞めるなんてひどい!」といったトラブルは起きないと言えます。会社にとっても猶予があるため、後任の準備や必要があれば求人の掲載までもじっくり取り組むことができます。退職する側にとっても、会社が退職のことを把握してからの期間に余裕があるため、余裕を持って仕事の引き継ぎを行うことができます。これは同僚や後輩にとっても同じで、分からないことがあったら聞けるという期間が長いほど安心するでしょう。皆心に余裕がある状態で退職を迎えられる可能性が高い方法です。ただし、日数に余裕があることから「まだ再考の余地があるのでは」という期待から引き留めに遭う可能性も高いため、心の準備をしてから退職の意思を伝える方が良いでしょう。
1ヶ月前
多くの会社では、「退職の意向は退職日の1ヶ月前までに申し出る」という社内規則が多いとされています。社内規則に従って1ヶ月前に伝えるのも良いでしょう。特に問題はありませんが、スピーディーに引き継ぎを行う必要があります。そのため、ある程度自分で仕事の合間に引継ぎ資料の作成や、引継ぎリストなどを作っておいてから退職の意向を伝えるのがおすすめです。そうすれば退職日までの1ヶ月を慌ただしく過ごすことなく余裕を持って過ごすことができるでしょう。同僚たちにとっては急な話なので、円満退職をしたいならば特に自分の後任の担当者への引き継ぎは丁寧に行うようにしてください。
2週間前
実は、退職2週間前に提出した退職届は有効です。退職を希望する日の2週間前に退職の意向を申告しても構いません。なお、2週間の中には休日も含まれます。社内規則や雇用契約書などで「退職日の1ヶ月前までに申し出る」とされていても、民法627条にて「退職の2週間前に退職の告知を行えば問題なく退職できる」ということが定められています。当然のことながら、会社の中の規則よりも法律の方が優先です。社内規則には法的拘束力はありません。しかし、会社が退職の申告時期を定めているのは、それだけ引き継ぎに時間がかかることを想定しているからです。会社によっては退職を受けて新しい人を採用するための準備をしなければいけないこともあります。そうした会社の事情を全て無視して退職の意向を押し付ける形になってしまうので、もしも円満退職をしたいのであれば、法に則った行為とは言え、2週間前の申告はおすすめできません。
退職代行
退職を願い出ても会社が認めてくれなかった時は退職代行という手もあります。退職代行とは、自分の代わりに第三者が「退職したい」という意思を伝えてくれるサービスです。2017年頃から徐々に増え始め、テレビやラジオでの紹介も相まって認知度が高まってきました。ブラック企業などで「退職の話を切り出しても取り合ってもらえない」という方もいれば、「退職について話を切り出すのが怖い」などの理由で会社に一切話さないまま退職代行に依頼するケースもあります。様々な会社があり、サービスの内容や範囲は業者によって異なりますが、「本人が会社と話をしなくて済む」「当日は会社を休んで、その間に退職代行が会社へ連絡をするため、もう二度と会う必要がない」といった点が最大のメリットです。ただし、こちらも会社にとっては寝耳に水の話です。信用してもらえなかったという気持ちや、裏切られたというようなショックもあるでしょう。円満退職を希望しないでとにかく退職したい、という場合は利用がお勧めですが、円満退職を希望する場合は利用しない方が良さそうです。
退職までの流れを7つの手順で紹介!
本来、退職の意思を伝えるのは書面(退職願)が良いとされています。電話でも口頭でも話はできますし、最近では電話よりもメールやLINEの方が使いやすいという人もいるでしょう。電話やメールで退職を申し出るのは一般的にはマナー違反とされていますが、最初に伝える際には口頭になることがほとんどです。以下に一般的な退職の方法と手順を記してみます。
- 直属の上司に口頭で退職の意思を伝える
- 退職願を提出
- 退職が認められ、退職日が決定
- 退職届を提出
- 業務の引き継ぎ
- 取引先へ挨拶回り
- 貸与品を会社に返却して退職
直属の上司に口頭で退職の意思を伝える
「人事部ではないの?」と不思議に思う人もいるかもしれませんが、最初に伝えるべきは直属の上司です。まずは上司に時間を取ってもらい、二人で話ができるようにセッティングします。この時、他の人に見聞きされるような場所で話すのは控えましょう。いずれ分かることとは言え、退職するのではないかという憶測が飛び交うのは良くありません。余計な噂が流れたら辞める本人も退職するまで気まずくなってしまう上、周囲もモチベーションが下がってしまいます。二人きりで話すことができたら、退職の意思を伝え、退職希望日を伝えます。その理由を聞かれることがほとんどなので、退職理由を答えます。理由によっては引き留めてくる上司もいるはずです。正直に話しても、引き留めにくい理由(家庭の事情など)を伝えても、どちらでも構いません。新しい仕事にチャレンジしたいなどの前向きな理由ならば上司も応援してくれるでしょう。上司が退職について承諾してくれたら、ついでに退職願の提出について必要なことがあるかも聞いておくのがおすすめです。
退職願を提出
上司に退職の意向を伝えて認めてもらったら、退職願を提出します。宛名は会社の社長など代表者になっていますが、提出するのは直属の上司や人事です。退職願は会社によってフォーマットが決められている場合もあります。そのため、上司には退職の意向を伝えた際にあらかじめ、「退職願の提出先は上司が良いか、人事が良いか」「退職願に決まったフォーマットはあるか」といった点を確認しておくとスムーズに進めることができます。提出先を確認したら退職願を提出しましょう。必ず手渡しで直接渡します。退職願をもとに退職日を決定することとなります。退職願の提出時点ではまだ退職日が決まっていないため、会社によっては「少し退職日を先延ばしにしてほしい」と頼まれる場合もあります。退職願の書き方は「円満退職できる!? 退職願・退職届の書き方」を参考にしてください。
退職届を提出
会社との話し合いの末退職日が決定したら、退職届を提出します。退職届とは退職することが確定してから提出する書類で、原則退職届に記載された日付を変更することはできません。中小企業などの場合は退職願や退職届を不要とするケースもあるため、もし不要とされた場合は上司との話し合いで退職日を決定した後、退職願と退職届の提出を飛ばして「業務の引き継ぎ」に進んでください。
業務の引き継ぎ
退職日が決定した後は、自分の受け持っている仕事を他の人に引き継ぐ作業を始めることとなります。新しい人が入社して自分の後任となる場合は、誰が見ても分かるようなマニュアルを作成しておく必要があります。引き継ぎには意外と時間がかかるので、余裕を持ったスケジュールで進めていきましょう。せっかく作った引継ぎリストに穴があると、残された人が苦労してしまうこととなります。できる限り残された人を困らせることのないように綿密に作っておくと、円満退職に近付けるはずです。
取引先への挨拶回り
営業など社外の人とも関わりのある場合は、自分が退職することを相手に知らせておく必要があります。その場合は自分の後任を連れて挨拶に回ります。突然退職と聞いて、相手は驚くはずです。理由を聞いてくる人もいるでしょうが、ネガティブな理由を伝えるのは控えましょう。さらには連れて行った後任を「自分よりも気が利く」とか、「とても真面目で誠実な人」などと持ち上げてあげると、後任の担当者も今後仕事がやりやすくなるはずです。円満退職をしたい場合は、そうした小さな気遣いが重要になります。
貸与品を会社に返却して退職
保険証の他、カードキーやPC、制服など、会社から借りているものは全て退職日までに返却します。特に長い間勤めていた会社の場合は、なくしてしまったものがないかきちんと確認しておきましょう。さらには自分のデスクやロッカーを綺麗に掃除しておきます。「立つ鳥跡を濁さず」という言葉の通り、自分の借りていた場所は綺麗にして返しましょう。些細なことではありますが、自分の場所の掃除を人任せにしないのも、円満退職に繋げるためのポイントの一つです。
退職する際の3つの注意点
退職の話し合いにおいて、要らないトラブルは避けたいですよね。あらかじめ自分の言動によって避けられるトラブルも多いはずです。そこで、よくあるトラブル回避のための注意点について紹介します。
上司に伝える退職理由は?
退職する理由については、「引き留められにくい」理由を選ぶとスムーズです。会社を辞める際、少なからず会社に対して不満を持っていることが多いでしょう。例えばハラスメントや長時間労働、福利厚生の不満など…。しかしそれを理由に退職と伝えてしまうと、「改善するから残ってほしい」という風に引き留めに遭ってしまう可能性があります。もちろん、その原因が改善されるなら考え直すという場合はそれでも構いません。それでも辞めたいという人にとっては理由自体をなくされてしまうため断りづらくなってしまいます。このように会社に原因があるという場合は引き留めに遭いやすいため、本当の理由を避けて無難な理由を伝えるのも一つの方法です。
同僚への報告はいつ?
退職の意向を上司に伝える前に、同僚に話すのは控えてください。中には相談したいという人もいると思いますが、上司としては自分より先に他の人に話していたという事実を快く思いません。また、「退職のことを知っていたのに隠していた」と見なされ、その同僚が今後社内で気まずくなってしまう可能性もあります。退職の話を上司に切り出す際にすでに上司がその話を人づてに知っていたりしたら、話がこじれるのは言うまでもありません。円満退職をしたいのであれば、まずは上司、その話が片付いてから同僚に報告するのが一般的です。同僚にも「早く伝えたかったけれど上司に話をするまで言えなかった」という話をすれば理解してくれるでしょう。上司と退職日について話をして、きちんと話し合いが済んだ後に話をするようにしてください。
退職のことを取引先に明かすタイミングは?
取引先などに退職のことを早く伝えたくても、まずは上司にそのことを相談しましょう。「取引先にいつ頃退職のことを話すべきか」「伏せた方が良いこと、伝えた方が良いことはあるか」などをあらかじめ確認しておくとスムーズです。会社によっては取引やプロジェクトが進行中の場合、ひと段落してから伝えてほしいとお願いされることもあります。その他、退職理由や転職先などについても、伏せてほしいと言われるケースがあります。退職日まで所属する会社なので、余計な火種を生まないよう、会社の意向に従って対応しましょう。
よくある3つのトラブルと回避方法
どんなに気を付けていても、会社を退職すると申し出てから退職後の期間において、残念ながら会社とトラブルになってしまうケースも少なくありません。ここでは3つのよくあるトラブルと、そのトラブルの原因や回避するための方法について紹介します。
退職を認めてもらえない
上司が話し合いを避けたり、話し合いの日を先延ばしにしたりすることで、なかなか退職について伝える場を設けてもらえないことがあります。ズルズルと日が延びてしまえばその分在籍期間も長くなります。転職先が決まっている場合は、転職先の入社日の関係上、後ろにずらすことはできません。どうしても上司が捕まらない時は退職代行を使って退職に踏み切るのがおすすめです。
度を超える引き留め
会社としては辞めてほしくはないので、どうにか引き留めようとすることが多く見られます。しかし、「今辞めるなら損害賠償が発生する」「あなたが辞めたらみんなが迷惑する」といった脅迫に近い言葉で退職を止めようとするのは、もはや法律違反です。「退職の自由」は労働者に認められている権利だからです。直属の上司からそんな言葉で引き留められた場合は、さらにその上の上司に話をしてみましょう。それでも万一同じように引き留めに遭ってしまった場合は、民放627条を理由に「退職届」を提出します。雇用の期間に定めがない場合に限り、退職の申し入れから2週間が経過すれば退職することができるからです。
離職票をもらえない
強硬手段を取って辞めた場合や、退職前に少し揉めてしまった場合等は、会社が嫌がらせの一部で離職票を送ってくれないことがあります。離職票は退職後に雇用保険の失業手当を受ける上で絶対に必要です。しかし、離職票はハローワークでも発行できるので安心してください。ハローワークに行って会社が離職票を発行してくれないことを伝え、発行してほしい旨を伝えると発行してもらうことができます。なお、一般的に離職票は退職日~1ヶ月以内に送られてくることが多く見られます。会社によっては嫌がらせではなく単純に忘れていたという可能性もあるので、退職日から1ヶ月以内に離職票が届かない場合は会社へ確認してみるか、ハローワークに発行のお願いに行くと良いでしょう。
円満退職が難しい場合は、退職代行サービスを利用する
退職する際には円満退職が理想ですが、どうしても無理な場合は退職代行サービスを利用するのもやむを得ません。退職代行サービスは先述の通り2017年頃から増え始めましたが、退職代行サービスが登場した背景には、以下のような内容があるといわれています。
- 慢性的な人手不足のため、会社が退職させてくれない
- ハラスメントにより退職を申し出ることができない
- ブラック企業の増加で、一般的な退職ができない
誰でもブラック企業には退職の意思を伝えにくいものです。さらに企業は慢性的な人手不足に陥っているため、簡単には退職させてくれません。「後任が見つかるまで」なんて言葉を鵜呑みにしたら何年居続けることになるか分かったものではありません。そうなれば貴重な自分の時間が大幅に奪われてしまうことになります。いくら退職を申し出ても強引な引き留め工作に遭う場合などは、退職代行サービスに依頼して退職するしかありません。最近では、会社でのパワーハラスメントなどの嫌がらせが問題となっています。退職するとハラスメントがバレてしまうので、なかなか退職を認めないことがあります。あるいは退職を申し出ると昔気質の上司から「これまで育ててくれた会社に恩はないのか!」などと怒鳴られ、さらに心無い罵声を浴びて精神的にも参ってしまいます。そんな会社は、すぐにでも退職したいでしょう。
ブラック企業には退職代行が有効
ブラック企業の増加も無視できません。無理な労働環境で長時間働かされて、肉体的にも精神的にも追い込まれます。そんな会社は社員に辞められると仕事が回らなくなるので、絶対に退職させないのです。そして退職なんて言い出したことへの腹いせかのように、今まで以上に大量の仕事を回されてしまう場合もあります。そもそもブラック企業には、退職の意思を示すことすら難しいでしょう。これらの企業では、まず円満退社など無理と考えましょう。退職代行サービスなどに依頼して即刻、会社を辞めた方があなたの心身のためにも良いのです。
「円満」よりも自分自身の「安全」を優先しよう
会社との関係悪化を避けたいという思いから、円満退社をしたいと思う人は多いでしょう。しかし円満な関係を保って退職をするためには、退職するまでの間に気を付けるべきことがたくさんあります。「もう辞めるのだから関係ない」という態度では円満に退職することはできません。何より上司が退職の意思を受け入れてくれるということが前提になるのです。もし上司と話し合いが難しい場合には、いくら円満退社を望んでも残念ながら叶わないという可能性もあります。退職の話し合いが進まず疲弊してしまったり、疲れ切ってしまったりする場合もあります。気持ち良く次のステージへ進むためにも円満に退職できた方が良いとは言え、そこまでして円満退社をしなければいけない理由もありません。自分の心身を守ることを最優先に、状況に応じて退職代行サービスを検討しましょう。
まとめ
円満退社をしたいのであれば、まずは退職日の2ヶ月前に上司に伝え、段階を踏んで進めていくことが重要です。周囲への配慮を欠かさず、引き継ぎなどを充実させることで自分が抜けた穴の影響を最小限にとどめることができます。
ただし円満退社ができるかどうかは会社の対応次第でもあります。円満退社は理想ですが、忘れてはいけないのは、会社が認めようが認めまいが、退職を決めることができるのは会社ではなくあなた自身ということです。会社にはあなたの退職を認めない権利はありません。あなたの人生ですから、退職するか否かはあなた自身が決め、まず、自分自身の安全を考えましょう。
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