「退職給付金」という名前の国の制度はない
まず押さえておきたいのは、国の法律や公的な窓口に「退職給付金」という名前の制度はない、という点です。
雇用保険法や健康保険法といった法律にもこの言葉は出てこず、ハローワークや健康保険の窓口でも使われていません。窓口で「退職給付金を申請したい」と伝えても、どの手続きのことなのか確認されることになるでしょう。
退職給付金は、退職後に受け取れる公的な給付金をまとめて呼ぶために広まった俗称です。主に退職後の手続きを手伝う民間サービスの広告などで使われてきた言葉で、国が名付けた制度名ではありません。
似た言葉に、公務員の「退職手当」や、企業の決算書に出てくる「退職給付」があります。どちらも退職金に関する用語で、この記事で扱う「退職後にもらえる公的な給付金」とは別のものです。
ただし中身は、法律で定められた国の社会保険の給付
名前は俗称でも、退職給付金と呼ばれているお金の中身は国の制度です。代表的なものを、根拠となる法律と運営する組織で整理すると次のようになります。
| 給付金の正式名称 | 根拠となる法律 | 運営・申請先 |
|---|---|---|
| 基本手当(失業保険) | 雇用保険法 | 国(厚生労働省)/ハローワーク |
| 再就職手当 | 雇用保険法 | 国(厚生労働省)/ハローワーク |
| 傷病手当金(退職後の継続給付) | 健康保険法 | 全国健康保険協会(協会けんぽ)・健康保険組合 |
雇用保険は国(政府)が保険者として運営しており、窓口はハローワークです。
傷病手当金は健康保険の給付で、運営しているのは協会けんぽや各企業の健康保険組合です。これらは国の役所そのものではありませんが、健康保険法にもとづいて国の健康保険制度を運営している公的な法人です。給付の内容も法律で決まっており、制度としては国の制度にあたります。
参考:協会けんぽ|傷病手当金
また、どちらも財源は在職中に給与から天引きされていた雇用保険料・健康保険料と、会社の負担分などです。国から特別にもらえるお金というより、自分も保険料を払ってきた社会保険の「保険金」を、条件を満たしたときに受け取る仕組みだと考えるとわかりやすいでしょう。
退職給付金と混同されやすい「国の制度ではないもの」
会社の退職金
退職金は、会社が就業規則や退職金規程にもとづいて独自に支払うお金です。法律で支払いが義務づけられているものではなく、制度があるかどうか、いくら出るかは会社ごとに異なります。国の制度ではないため、退職金について確認したいときは勤務先に問い合わせることになります。
民間の「退職給付金サポート」
SNSや広告で「退職給付金」という言葉を目にする場合、その多くは国の給付金の申請を手伝う民間企業のサービスです。
給付金そのものは国の制度ですが、サポートを提供しているのは民間企業で、国の機関でも国から委託された窓口でもありません。利用するかどうかは本人の自由で、使わなくても国の給付金は自分で申請できます。
民間サービスの中には、条件を満たさない人を受給へ誘導するような悪質な事業者もあり、国民生活センターなどが注意を呼びかけています。業者を選ぶときの確認ポイントは下記の記事で解説しています。
「国の退職金制度」は退職者が申請する給付金とは別物
「退職給付金 国の制度」で調べると、「国の退職金制度」という言葉が出てくることがあります。名前は似ていますが、退職後に本人が申請して受け取る給付金とは仕組みが違います。
中小企業退職金共済制度(中退共)
中退共は、中小企業退職金共済法にもとづいて設けられた、中小企業のための国の退職金制度です。運営は独立行政法人勤労者退職金共済機構が行っています。
ただし、これは会社が加入して従業員ごとに掛金を払い込み、退職金を積み立てていく仕組みです。会社が加入していなければ対象にならず、退職した人が自分で申し込んで給付金をもらう制度ではありません。勤務先が加入していた場合は、退職金を機構から受け取ることになります。制度の概要は厚生労働省静岡労働局の中小企業退職金共済制度のページで確認できます。
公務員の退職手当
国家公務員の退職手当は、国家公務員退職手当法という法律にもとづいて支払われます。法律で定められた制度ですが、公務員が職場から受け取る退職金にあたるもので、会社員が退職後に受け取る失業保険や傷病手当金とは別の話です。
| 名称 | 国の制度か | 退職した人が自分で申請して受け取るか |
|---|---|---|
| 失業保険・傷病手当金など | 国の制度 | 受け取る(条件を満たす場合) |
| 中退共 | 国の退職金制度 | 会社が加入していた場合のみ、退職金として受け取る |
| 公務員の退職手当 | 法律にもとづく制度 | 公務員が職場から受け取る |
| 会社の退職金 | 国の制度ではない | 会社の規程による |
| 退職給付金サポート | 国の制度ではない(民間サービス) | お金をもらう制度ではなく、申請を手伝うサービス |
国の制度だからこそ知っておきたいこと
失業保険や傷病手当金が国の制度であることから、次のようなことがいえます。
- 受け取れる条件と金額は法律で決まっている:誰でももらえるわけではなく、誰かの工夫で金額を増やせるものでもありません。
- 自分で申請できる:ハローワークや加入していた健康保険へ本人が申請する制度で、窓口での手続き自体に手数料はかかりません。
- 不正受給は国に対する重い責任を負う:事実と違う申告で受け取ると、受け取った額の返還に加えて、さらに最大2倍の納付を命じられることがあります(いわゆる3倍返し)。
「国の制度だから安心」という言葉だけで判断せず、自分が実際に条件に当てはまるのかを確認することが大切です。厚生労働省の東京労働局も、失業保険の金額や期間を増やせるとうたうサポートに注意を呼びかけています。
参考:東京労働局「失業保険の金額・期間を増やせる」とうたう申請サポートへの注意喚起
国の制度かどうかを確かめる方法
広告やSNSで「国の給付金」「国の制度」と書かれているものが本当に国の制度なのか、次の3点で確かめられます。
- 正式名称が書かれているか:「基本手当」「傷病手当金」など、法律上の名前が示されているかを確認します。「退職給付金」としか書かれていない場合は、何の制度を指しているのか問い合わせてみましょう。
- 申請先が公的な窓口か:国の制度なら、申請先はハローワークや加入していた健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)です。申請先が民間企業になっている場合、それはサービスの申し込みです。
- 公式の情報で裏付けがとれるか:厚生労働省やハローワーク(mhlw.go.jp)、協会けんぽ、加入している健康保険組合のサイトに同じ制度が載っているかを確認します。
よくある質問
退職給付金は国に申請するものですか
制度によって申請先が違います。失業保険(基本手当)や再就職手当は、国の窓口であるハローワークに申請します。傷病手当金は、退職前に加入していた健康保険(協会けんぽや健康保険組合)に申請します。「退職給付金」という一つの窓口があるわけではありません。
国の制度なら、退職すれば誰でももらえますか
もらえません。失業保険は雇用保険に、傷病手当金は会社の健康保険に、それぞれ一定期間加入していたことが前提で、そのうえで制度ごとの条件を満たす必要があります。国の制度だからこそ、条件は法律で決まっており、条件を満たさない人は受け取れません。
退職給付金サポートを使うと、国からもらえる額が増えますか
増えません。サポートを使っても使わなくても、受け取れる給付金の条件と金額は同じ法律で決まっています。民間サービスにできるのは、制度の選び方や申請手続きを手伝うところまでです。
まとめ
「退職給付金」という名前の国の制度はなく、退職後に受け取れる公的な給付金をまとめた俗称です。
ただし中身の失業保険(基本手当)や再就職手当は雇用保険法、傷病手当金は健康保険法にもとづく、国の社会保険の給付です。会社の退職金や民間の退職給付金サポートは国の制度ではなく、中退共のような「国の退職金制度」も、退職者が自分で申請してもらう給付金とは仕組みが違います。
広告などで「国の制度」と書かれていたら、正式名称、申請先、公式の情報の3点を確かめておくと安心です。
国の制度であっても、自分がどの給付金の対象になるのか、どの順番で申請すればよいのかを一人で判断するのは簡単ではありません。
退職コンシェルジュでは、受給要件の確認から申請書類の準備まで、法令の範囲内で手続きをサポートしています。自分のケースで何が使えるのか知りたい方は、退職コンシェルジュの給付金サポートもあわせてご覧ください。
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