退職後の傷病手当金で会社の証明が必要かは申請期間で決まる
まずは、そもそも「会社の証明」とは何なのか、どんなときに要るのかをはっきりさせておきます。
会社の証明(事業主記入欄)で証明するのは何か
傷病手当金の支給申請書は全部で4ページ構成になっています。1〜2ページ目が本人が書く部分、3ページ目が事業主(会社)が書く部分、4ページ目が医師が書く部分です。退職後に「会社の証明」と呼ばれているのは、この3ページ目の「事業主記入用」のことです。
会社が書くのは、申請期間のうちどの日に出勤したか(勤務状況)と、出勤していない日に給与や手当を支払ったかどうか、支払った場合はその金額(賃金の支払い状況)です。傷病手当金は、休んでいる間に給与が出ていると、その分が差し引かれる仕組みです。出勤した日があれば、その日は支給の対象にもなりません。こうした事実を確認できるのは会社だけなので、会社の証明が求められているわけです。
在職日を含むなら必要、資格喪失日以降だけなら不要
判断の軸はひとつだけです。申請書に書く「申請期間」に、在職していた日が1日でも入っているかどうか。ここで分かれます。
| 申請する期間 | 会社の証明(事業主記入欄) |
|---|---|
| 在職日を1日でも含む | 必要 |
| 資格喪失日(退職日の翌日)以降だけ | 不要(空欄で提出) |
ここで大事なのは、「不要」になるのは資格喪失日以降だけを申請する場合に限られるということです。在職中の日と退職後の日をひとつの申請期間にまとめてしまうと、在職日を含むことになるので、その申請書には会社の証明が必要になります。
会社の証明の前に確認したい、退職後も受給できる条件
会社の証明が要るか要らないか以前に、そもそも退職後も傷病手当金を受け取れる状態かどうかを確認しておく必要があります。ここを満たしていないと、申請書の書き方で悩んでも意味がなくなってしまうからです。
満たすべき3つの条件(資格喪失後の継続給付)
退職後も引き続き傷病手当金を受け取る仕組みを、資格喪失後の継続給付といいます。協会けんぽの案内では、次の3つが条件として示されています。
| 条件 | チェックのポイント |
|---|---|
| 被保険者期間が継続して1年以上ある | 退職日までの加入期間で判断します。任意継続、共済組合、国民健康保険の期間は数えません |
| 退職日に傷病手当金を受けているか、受けられる状態にある | 業務外の病気やケガで、働けず、連続3日間の待期を完成していることが目安です |
| 退職後も同じ傷病で働けない状態が続いている | いったん働ける状態になると、その後また働けなくなっても支給されません |
2つ目の「受けられる状態」というのがポイントです。在職中に一度も申請していなくても、退職日の時点で支給の条件を満たしていれば、退職後に申請できる可能性があります。在職中は有給休暇や会社からの給与が出ていて傷病手当金が支払われていなかった、というケースもこれに当たります。
参考:協会けんぽ|傷病手当金
退職日に出勤すると継続給付が受けられなくなる
見落としやすい落とし穴が、退職日の出勤です。
引き継ぎやあいさつ、荷物の整理のために退職日だけ顔を出す、というのはよくある流れですが、これをやってしまうと退職後の分が全部対象外になってしまいます。必要な引き継ぎは退職日の前日までに済ませておき、退職日当日は出社しないのが基本です。
【退職日別】会社の証明が必要な申請と不要な申請の境目
判定の考え方がわかったところで、実際の退職日に当てはめてみましょう。資格喪失日は退職日の翌日です。この日を境に、会社の証明が必要な期間と不要な期間が分かれます。
月末退職の場合
3月31日に退職した場合、資格喪失日は4月1日です。3月分はまるごと在職期間なので会社の証明が必要で、4月1日以降だけを申請するなら不要になります。
図にすると、次のようなイメージです。
| 3月1日〜3月31日 | 4月1日以降 |
|---|---|
| 在職期間 会社の証明が必要 |
資格喪失後 会社の証明は不要 |
| 境目は退職日(3月31日)と資格喪失日(4月1日)の間です | |
月中退職の場合
3月15日に退職した場合は、資格喪失日が3月16日になります。同じ3月の中でも、3月1日〜15日は在職期間、3月16日〜31日は資格喪失後です。
| 申請期間の例 | 在職日を含むか | 会社の証明 |
|---|---|---|
| 3月1日〜3月15日 | 含む | 必要 |
| 3月16日〜3月31日 | 含まない | 不要 |
| 3月1日〜3月31日(まとめて申請) | 含む | 必要 |
表の3行目のように、在職期間と退職後をひとつの申請にまとめると、会社の証明が必要になります。在職期間の分と資格喪失日以降の分は、別の申請書に分けて出すのが一般的です。その場合、会社の証明が必要なのは在職期間の分の申請書だけになります。
在職中から申請していた場合と、申請期間のルール
退職後の傷病手当金は、在職中の休業からそのまま続いているケースがほとんどです。初めて申請するときは、待期(連続3日間の休み)が完成した初日から申請する決まりになっています。待期は在職中に完成しているはずなので、在職中に一度も申請していない人の初回の申請には、基本的に在職日が含まれます。つまり、その場合は初回の申請で会社の証明が必要になるのが普通です。
逆に、在職中にも毎月のように申請していて、退職日までの分がすでに申請済みの人は、退職後に出す申請書が資格喪失日以降だけの期間になります。この場合は、会社の証明は基本的に要りません。「不要」になるのは、主にこのパターンです。
気をつけたいのは、申請期間のルールです。申請書は、申請期間を暦で3か月以内にして作る決まりになっていて、期間が3か月を超えるときは申請書を分ける必要があります。
なお、在職期間の分は、会社に連絡したくないからといって申請から外せるものではありません。初回の申請は待期完成の初日から始める決まりなので、在職期間が含まれる場合は会社の証明が必要になります。会社とのやり取りが難しいときは、後ほど紹介する保険者や社会保険労務士への相談を検討してください。
会社の証明が必要なときの依頼方法と、不要なときの申請書の出し方
申請書3ページ目だけを会社に送る流れ
在職日を含む期間を申請するときは、申請書の3ページ目を会社に記入してもらいます。退職後は会社の人事・総務に直接お願いすることになるので、次の流れで進めるとスムーズです。
まず、加入していた保険者の申請書を用意して、自分で書ける部分と医師に書いてもらう部分を進めておきます。次に、3ページ目の事業主記入用を会社に送って、記入してもらいます。返ってきたら、他のページと一緒に提出します。
会社に送るときは、返信用封筒を同封して、いつまでに返送してほしいかを書き添えておくと動いてもらいやすいです。記入のしかたがわからない担当者もいるので、協会けんぽの記入例(記入の手引き)も一緒に送っておくと、やり取りが減ります。
会社側の記入のポイントも、手引きに書かれています。出勤した日には〇をつけること、出勤していない日に有給休暇の賃金や手当などを支払った場合は、その日と金額を書くこと、証明の日付は申請期間が終わったあとの日にすること、などです。賃金台帳や出勤簿の写しは添付しないようにする必要があるため、会社から「資料も付けたほうがいい?」と聞かれたときの参考になります。
資格喪失日以降だけの申請書は事業主欄を空欄で出す
在職中の分をすでに申請済みで、今回の申請期間が資格喪失日以降だけなら、3ページ目は空欄のままで提出してかまいません。そのうえで、1〜2ページ目の書き方に、退職後の申請ならではの注意点があります。
| ページ | 記入する人 | 退職後の申請での注意点 |
|---|---|---|
| 1〜2ページ目 | 本人 | 記号・番号は勤めていたときのものを書きます。仕事の内容は在職時のものを書きます |
| 3ページ目 | 会社 | 資格喪失日以降だけの申請なら空欄で提出します |
| 4ページ目 | 医師 | 働けないと認められる期間を医師に記入してもらいます。通院のタイミングで持参すると早いです |
退職後の申請でも、記号・番号は在職時のものを使います。国民健康保険に切り替えていても、申請先は変わりません。退職前に加入していた保険者(協会けんぽなら加入していた支部)に出します。
会社が証明を書いてくれない・連絡が取れないときの対処法
在職日を含む期間を申請するのに、会社が証明を書いてくれない、というトラブルも少なくありません。事業主の証明は申請書の一部として求められているものなので、あきらめる前に順番に動いてみましょう。
まずは書面やメールで依頼する
最初のステップは、口頭ではなく書面かメールで依頼することです。記録が残りますし、担当者にも何をしてほしいのかが伝わりやすくなります。次の内容を入れておくと、話が早く進みます。
| 依頼文に入れる内容 | 書き方の例 |
|---|---|
| お願いしたいこと | 傷病手当金支給申請書の3ページ目(事業主記入用)への記入 |
| 対象の期間 | 在職日を含む申請期間(例:3月1日〜3月31日) |
| 返送の期限 | 依頼日から2週間ほどを目安に日付を指定 |
| 同封するもの | 返信用封筒、記入例(記入の手引き) |
協会けんぽ・健保組合に相談する
期限を過ぎても返事がない、はっきり断られた、という場合は、加入していた保険者に相談します。協会けんぽなら各都道府県支部、健康保険組合なら加入していた組合の窓口です。
伝えるのは、会社に記入を依頼したけれど対応してもらえない、という事実です。依頼したときのメールや書面の控え、会社からの返答があれば、それも手元に用意しておくと状況を説明しやすくなります。会社に対して保険者から働きかけてもらえることもありますし、会社の証明が揃わない場合にどう進めるかも、保険者の判断になります。個別の取り扱いは保険者ごとに異なるため、必ず窓口で確認してください。
倒産・廃業・連絡不通で証明が取れない場合
会社が倒産した、廃業した、連絡がまったくつかない、といった場合も、まずは保険者に事情を伝えるのが第一歩です。こうしたケースで証明が欠けたままでも申請を受け付けてもらえるかどうかは、保険者の判断になります。給与明細や退職証明書、出勤の状況がわかるものなど、在職中の勤務や賃金を示せる資料があれば、相談のときに見せられるよう整理しておくと話が進みやすくなります。
| 状況 | まず動くこと | 相談先 |
|---|---|---|
| 会社が返事をくれない | 期限つきで書面・メールを再送する | 会社の人事・総務 |
| 会社に断られた | 依頼の記録を持って保険者に相談する | 協会けんぽ支部・健保組合 |
| 倒産・廃業・連絡不通 | 事情を伝え、手元の資料を整理して相談する | 協会けんぽ支部・健保組合 |
| 会社とのやり取り自体がつらい | 間に入ってもらう方法を探す | 社会保険労務士など |
社会保険労務士に相談する
ハラスメントや体調のことで、会社と直接やり取りするのが難しいという人もいます。そういうときは、社会保険労務士に相談する方法があります。社労士は社会保険の手続きの専門家で、申請書の作成や提出の代行を依頼できます。なお、協会けんぽの申請書には、社労士が提出を代行する場合の記入欄も用意されています。費用や対応範囲は事務所によって違うので、依頼する前に確認しておきましょう。
退職後に傷病手当金を申請する流れ
ここまでの内容を踏まえて、退職後に自分で申請するときの流れをまとめます。
申請書の入手先と電子申請
申請書は、退職前に加入していた保険者のものを使います。協会けんぽなら申請書のページからダウンロードできます。健康保険組合の場合は、組合ごとに申請書が用意されているので、加入していた組合の案内を確認してください。
協会けんぽは、紙の申請書より電子申請をすすめています。入力時のチェックで記載もれを防げることや、郵送の手間が省けること、申請後の処理状況をスマホやパソコンで確認できることが理由として挙げられています。紙で出す場合は、加入していた協会けんぽ支部に郵送します。
参考:協会けんぽ|電子申請
医師の意見書をもらう
申請書の4ページ目は、診察した医師に記入してもらう部分です。働けなかったと認められる期間や傷病名、症状の経過などを書いてもらいます。この記入に数週間かかることもあるので、通院のたびに「次の申請の分をお願いします」と早めに伝えておくと、あとが楽になります。なお、医療機関によっては文書料がかかります。
提出から支給までの目安と時効
書類が揃ったら、保険者に提出します。審査の結果、支払いが可能であれば、受付日から10営業日以内に支払われます。記入もれや押印もれがあると差し戻しになり、そのぶん支給が遅れてしまうので、出す前に見直しておきましょう。
申請には期限もあります。傷病手当金を受ける権利は、働けなかった日ごとに、その翌日から2年で時効になります。「もう遅いかも」と思っても、日付によってはまだ間に合う分が残っていることがあるので、早めに保険者へ確認するのがおすすめです。
退職前の12か月以内に勤務先が変わっていた場合などは、健康保険加入状況等申告書といった添付書類が必要になることもあります。詳しくは申請書のページの添付書類の欄で確認してください。
退職後の傷病手当金と会社の証明に関するよくある質問
退職後の傷病手当金は、会社の証明なしで申請できますか?
資格喪失日(退職日の翌日)以降の期間だけを申請するなら、事業主記入欄は空欄で提出できます。在職日を含む期間を申請する場合は、会社の証明が必要です。
会社に連絡せずに申請することはできますか?
在職中の分をすでに申請済みで、退職後の申請が資格喪失日以降だけなら、会社に連絡する必要はありません。一方、まだ一度も申請していない場合は、待期完成の初日から申請する決まりなので、初回の申請には在職日が含まれ、会社の証明が必要になります。会社に連絡するのが難しいときは、保険者への相談や社会保険労務士への相談を検討してください。
在職中に一度も申請していなくても、退職後に申請できますか?
退職日の時点で傷病手当金を受けられる状態(業務外の傷病で働けず、待期を完成している)で、被保険者期間の条件なども満たしていれば、退職後の申請が可能な場合があります。ただし、退職日に出勤していないことが前提です。なお、在職中に一度も申請していない場合、初回の申請は在職期間を含むため、会社の証明が必要です。
会社が倒産していて証明がもらえません。申請はできませんか?
あきらめる必要はありません。加入していた保険者に事情を伝えて、どう進めればよいか相談してください。受け付けてもらえるかどうかは保険者の判断になるので、手元の資料を整理して持参すると説明しやすくなります。
傷病手当金の申請に期限はありますか?
働けなかった日ごとに、その翌日から2年で時効になります。古い日付の分から順に時効にかかっていくので、申請できる期間が残っているうちに動くのが大切です。
まとめ
退職後の傷病手当金で会社の証明が必要かどうかは、申請期間に在職日を含むかどうかで決まります。在職日を含むなら会社の証明が必要で、在職中に申請を済ませたうえで資格喪失日以降だけを申請するなら、事業主記入欄は空欄で提出できます。
ただ、実際に手続きを進めてみると、難しいのは申請書の書き方そのものよりも、その手前と周辺にあることが多いです。
まず申請書は、本人、会社、医師の3者がそれぞれ書く4ページ構成です。自分の分を埋めても、会社の記入が戻ってこなければ出せませんし、医師の意見書は書いてもらうまでに数週間かかることもあります。申請期間は暦で3か月以内、初回は待期完成の初日からと決まっているので、期間の区切り方を間違えたり、記入もれや押印もれがあったりすると、差し戻しになって支給が遅れます。
さらに厄介なのが、書類の記入以外のところで起きるトラブルです。たとえば退職日に出勤してしまうと、退職後の傷病手当金がすべて対象外になります。これは退職後に気づいても取り返しがつきません。被保険者期間が継続して1年以上あるか、退職日の時点で待期が完成しているかといった条件も、退職日を決める前に確認しておかないと、あとから変えられないものです。退職後にいったん働ける状態になると、その後また働けなくなっても支給されない、というルールもあります。そのうえ、会社が証明を書いてくれない、連絡が取れない、という事態になると、保険者との調整まで必要になります。時効も働けなかった日ごとに進んでいくため、手間取っているあいだに受け取れる分が減っていくこともあります。
こうした制度の細かい条件の確認と、会社・医師・保険者との調整を、体調がすぐれないなかで一人で進めるのは、想像以上に大きな負担です。申請の段取りや書類の準備に不安があるときは、傷病手当金や失業保険などの申請をサポートする退職コンシェルジュに相談する方法もあります。退職前後の給付金について、どこでつまずきやすいかを踏まえて進められるので、サービスの内容や相談の流れは退職コンシェルジュの給付金サポートのページから確認してみてください。
▼社会保険給付金サポートへのお問い合わせはこちら
給付金がいくらもらえるか
知りたい方
給付金サポートを
ご検討中の方
評判・口コミ
給付金がもらえる
転職支援を活用する方
1年以上ご通院を続けている方
もらえる給付金ラボ
退職コンシェルジュについて 


