2024.04.12
精神疾患について
会社に行くのがつらい!仕事がつらい原因は?
仕事をしているとやりがいを感じるときもありますが、仕事内容や人間関係の影響でストレスが溜まり、心身ともに体調を崩してしまうこともめずらしくありません。しかし、うつ病などの精神疾患の場合は初期の自覚症状が現れにくいケースもあり、この先仕事とどう付き合って行けば良いのかが分からなくなることもあるでしょう。ここでは、会社に行くのがつらいときにどのように対処していけば良いのかについて、解説します。
精神疾患により体調を崩すことは多い
「仕事は自己表現の場」だと言う人もいますが、職場においては楽しいことばかりではありません。職種によっても異なりますが、取引先との打ち合わせやプロジェクトの進行、数ある案件の納期までのタスク完了など大きなストレスを抱えることは決して少なくないのです。また、仕事自体は上手く行っていても、部署の人間関係が悪いと、お互いに協力し合うことが減り、パフォーマンスが低下してしまいます。このようなことが重なると、心理的な負担が増え、精神疾患に陥る方も増えるのが現実です。
このような情勢を受けて、2006年に社会経済生産性本部のメンタル・ヘルス研究所は、企業に対してメンタルヘルスの取り組みに関するアンケート調査を行いました。その中で、企業における心の病の増減傾向を尋ねたところ、最近3年間で心の病が増加傾向にあると答えた企業が6割以上にものぼったのです。このアンケートからも把握できるように、精神疾患によって体調を崩す人はめずらしくないことがうかがえます。
9割の人が「仕事がつらい」と感じている
総合求人・転職支援サービス「エン転職」が2016年7月に行った「ストレス解消」についてのアンケート調査によると、「仕事でストレスを感じたことのある」人の割合は90%に上ります。実に9割の人が、ストレスを感じながら働いていることになるのです。なお、そのストレスの中で最も多い割合を占めるのが「上司との人間関係」でした。さらに「同僚との人間関係」「顧客との人間関係」も含まれていて、人間関係にストレスを抱えている人が多いことが分かります。人間関係の他には給与や仕事量、会社への不安感などが続く結果となっています。
仕事がつらいのは甘えではない!
仕事がつらいと感じるのは甘えではありません。高熱が出たり、頭痛に悩まされたりしている時に仕事をするのは誰だってつらいはずです。体調を崩すのは身体が悲鳴を上げている証拠です。「仕事がつらい」「会社に行きたくない」と思うのは心が悲鳴を上げているからで、風邪と似たようなものでしょう。様子を見て自然と回復することもあれば、悪化してしまうことがあるのも風邪と同じです。身体的な風邪と違って、心の不調に効く即効性の薬はありません。「つらい」というのは「甘え」ではなく「心のSOS」だと思うといいかもしれません。つらくなったらいつも頑張っている自分を認めて優しくしてあげるのです。例えば自分へのご褒美に好きなものを食べたり、休みの日には趣味に没頭したり、もし親しい友人や家族がいれば話を聞いてもらうのもおすすめです。そうして「オン」と「オフ」の心のメリハリをつけるようにして、心のデトックスをするのです。
仕事がつらいと感じる3つの原因
仕事がつらいと感じる原因は、人によって様々です。とにかく会社が嫌でたまらなくて、一番の原因を自分でもよく分かっていない場合もあります。いくつもの要因が積み重なって仕事が嫌になっていることもあるでしょう。ここではつらいと感じる原因を大きく3つに分けて解説します。
仕事の作業内容や質・量に原因がある場合
日々の仕事量が多すぎて嫌になってしまうという人は少なくありません。また、仕事の内容に手間がかかったり大変だったりする場合も、毎日その作業をしなければいけないのは辛いものです。また、求められる仕事のクオリティが高くて挫折してしまうケースもあります。自分では上手くできたと思った書類を提出しても、何度も突き返されたりダメ出しをされたりしていては、そのうちに自信を失ってしまいます。そもそも「何のためにこの作業が必要なのか」という根本を理解していなければ、目的が見えないため、どんな作業も苦痛になりかねません。一見無駄に見えても必要な工程だと分かっていれば真剣に取り組めるものも、「どうせ必要ない作業なのに」と思ってしまうとバカバカしくなってしまいます。その感情は「仕事がつらい」という気持ちに直結するものです。
仕事が原因で辛い気持ちを抱えている時は、仕事に対する意識を変えてみるのが重要です。一つ一つの仕事に目的と目標を設定して、その目標を達成するたびに小さな達成感を積み重ねていくことで、少しずつ充足感を得ることができます。どんな仕事であっても、自分の作業に達成感ややりがいを感じると、少しずつ仕事への姿勢が変わっていくでしょう。
職場環境や会社の体質に原因がある場合
職場環境が原因で仕事がつらくなってしまうのも、毎日のように出社している以上かなり大きなストレスになります。例えば仕事の都合上騒音が出たり、作業場が高温・低温になったりして体調に悪影響が出るといった物理的な理由から、職場での上司や同僚との人間関係に悩んでいる、会社全体の体質として根性論で話が進むので嫌だといった広い意味での「職場環境」にストレスを抱えている人は多いものです。仕事そのものが好きであっても、職場環境が良くない場合はそれだけで会社に行くのが嫌になってしまいます。仕事に直接的な関係がない場合でも、ほぼ毎週末飲み会に行かざるを得ない、年功序列で新人が全て雑用を押し付けられるといったことでも仕事がつらくなります。職場環境や会社が原因で仕事が嫌になってしまうと、転職を考える人が多いようです。
職場環境の中でも、特に「人間関係」に原因があるケースが多く見られます。人間関係はどうしても人の感情で左右されてしまうので難しいですが、稀に「勘違いをしていた」という場合もあります。例えば詳しい説明をしてくれない上司の教え方について悩んでいた人が、勇気を出して上司に詳しく教えてほしいとお願いしたケースがありました。上司は最初から細かい説明をすると分かりにくくなってしまうと思い、部下のためにあえて最低限のことを教え、分からないことがあったら都度教えようと思っていたのです。ただ、常日頃のコミュニケーション不足から互いの考えが行き違ってしまっていたのでした。もちろんそうした行き違いは珍しいケースですが、話もしていないのに相手の考えていることが分かるはずもありません。相手は何らかの理由があってその行動をとっているのでしょう。そうした相手の状況が分かると多少自分の受け取り方も変わってくるかもしれません。
自分の気持ちに原因がある場合
職場環境に大きな不満はないけれど、仕事内容が好きになれないという人もいます。やりがいを感じられない、このままここでずっと同じ仕事を繰り返していて良いのか不安という気持ちから、日々の仕事がつらくなってしまうこともあります。また、単に「ずっと同じ仕事をするのに飽きてしまった」という場合もあります。一度会社から気持ちが離れてしまうと、気持ちを立て直すのは難しいでしょう。「この会社で働いても意味がない」と思ってしまったら毎日の就業時間が無駄に思えてしまいます。また、家庭環境などの事情から収入を増やす必要に駆られて、今の会社では給与が足りないなどの気持ちが焦りとなり、仕事をつらいと思ってしまうこともあります。原因が「外」ではなく「内」にある分、その気持ちは根深いかもしれません。
自分の気持ちを切り替えたり、考え方を変えてみたりすることで仕事の認識が変わることもあります。例えばこれまでと同じ作業であっても、自分の中で小さな目標を立てていくのです。目標に向けて仕事をしていくと、目標達成時には達成感を覚え、作業も順調に進むでしょう。「この目標をクリア出来たら自分にご褒美をあげる」というのを楽しみにするのも効果的です。また、自分がやってみたい仕事があれば取り組んでみるのも気分を変えるいいきっかけになります。
仕事がつらいと感じる原因を自分で探る方法
「仕事が嫌だ」の根底には必ず何らかの原因やきっかけがあります。その原因が分かったら、それについて自分がどう感じているのかを考えてみてください。会社に行くのが嫌だと思いながら毎日仕事をするのは、それだけで精神的な負担になってしまいます。自分のストレスを減らすために、まずは自分の気持ちとしっかり向き合い、仕事がつらいと思う原因を探ってみましょう。一番ストレスを感じるものが人それぞれであるように、自分のストレスの原因を把握する方法も人それぞれです。自分の気持ちを知るには、大きく分けて二つの方法があります。
人に話をする
自分の気持ちを言葉にして相手に伝えてみます。「何があったのか」「自分がどう感じたのか」を人に説明するのは意外と難しいものです。言葉にして自分の口から発してみることで、「こんなふうに感じていたのか」と気付くことも珍しくありません。また、相手から質問をされて思いがけないことに気付く場合もあります。誰かに話を聞いてもらうことで自分の気持ちの整理をすることができることも多いでしょう。また、別の人に話をすることで、相手の考え方を聞いてみるのもおすすめです。相手から見たら今の自分はどう見えるのでしょうか?そうした話を通じて思いついたことや気付いたことをメモにしておくことで、さらにそれをふまえて自分で考えることができます。
紙に書いてみる
自分が感じていること、もしくは自分が嫌だった状況、出来事などを紙に書き連ねてみましょう。何が自分にとって嫌だったのか分からなくても、嫌なことをいくつか並べてみると、共通点が見えてきます。人に話をすることに抵抗がある場合でも、一人で自分と向き合うことができるので気軽に試すことが出来ます。「なんとなくイヤな気持ち」を言語化するのは難しいですが、頭の中で考えたり感じたりするだけではなく、文字に起こすことで初めて気付くこともあります。また、気持ちの強弱で文字の大きさを変えたりすることもできるので、「特にこれが嫌だった」「こっちの方がストレスだった」という指標にも使えるため便利です。
冷静に状況と向き合おう
自分が仕事を嫌だと思う原因を突き止めたら、今度はその「問題を解決する方法」について考えてみる必要があります。もちろん、解決できることであれば解決するに越したことはありません。ただ、原因によっては自分一人で解決できることではないという場合もあるでしょう。もしそれが解決できない場合は、自分のストレスを減らす方法がないか考えてみてください。改善が難しく、この先も解決される見込みがないとした時、ずっとつらいまま仕事を続けていくことになります。それならば少しでも早いうちに転職を考えた方が自分のためになるかもしれません。逆に今つらくても、いずれ改善される見込みがあるのならもう少し様子を見てもいいでしょう。例えば直近で異動や昇進のタイミングがある場合は、ストレスの原因によっては改善できる可能性があります。自分のストレスの原因とあわせて、原因と改善方法、そして現在と未来、その原因がどうなっているかについても考えてみてくださいね。
心のSOS
ストレスを無視しているうちに、心が悲鳴を上げて身体にも悪影響が出てきます。なお、働く人が抱える精神疾患の中でも大きな割合を占めているのは、うつ病だと言われることも多いです。2014年にルンドベック社が世界16カ国の働く人を対象に、「今までにうつ病だと診断されたことがあるか」を調査したところ、日本においては10人に1人がうつ病と診断されたことがあるということが分かっています。うつ病は人によって症状の現れ方に差が出ることもあり、初期症状は自分でも分かりづらい場合があります。憂うつ感や落ち込みなどの精神症状よりも、身体症状が顕著に現れることがめずらしくないからです。うつ病の初期症状に現れやすい身体症状を、以下に挙げてみます。
- 頭痛
- 首・肩こり
- 腹痛・胃の不調
- 全身倦怠感
- 喉の痛みや異物感など
症状だけ見たら「風邪を引いたのかな」「疲れが溜まっているのかな」と思っても無理はありません。そのため、市販の風邪薬を飲んだり、内科を受診したりする方が多いようです。なかなか改善しないため血液検査を受けたりレントゲンを撮ったりするケースもありますが、もちろん身体的な異常は見つかりません。そして、理由が分からないまま悪化し、会社に行けなくなってしまう場合もあるのです。もし、上記のような身体症状が2週間以上続き、内科などを受診しても回復しない際は、あなたの心がSOSを訴えている可能性もあります。心療内科や精神科での診察を視野に入れてみてください。
休職する流れ
会社に行くのが精神的に耐えられないという状況なら、休職という方法を取ることもできます。休職とは、主に病気やケガなどで働くことができなくなった従業員に対して、会社が定めた期間まで休むことができる制度です。ただ、休職という制度は法的に決められているわけではなく、会社によって制度の有無が異なります。そのため、会社によっては「休職したくても休職できない」という場合もあるので注意してください。休職制度を設けている会社ではほとんどの場合、休職を促す医師の診断書を提出して会社と話し合い、休職に至る運びとなります。診断書には大抵「2週間」「1ヶ月」等、休職期間の指定があるので、その期間に沿って調整する流れです。記載された期間内に治りきらず、「さらに休養した方がいい」と医師が判断した場合はさらに診断書を提出し、休職期間の延長について会社と話し合うことになります。最長で休職できる期間を決めてある会社も多く、決められた期間内に目一杯休職しても復職できない場合は退職という流れになることもあります。なお、休職中の給料が支払われない場合でも、会社の健康保険に加入していれば給料の2/3程度が支給される傷病手当金を受給できる可能性が高いので、休職中の経済面もカバーすることができます。
休職した方がいいケース
主治医から休職を勧められている場合は、休職を促すための診断書を発行してもらうことができます。当然、誰でも診断書をもらえるわけではありません。診察し、「休養が必要だ」と診断された場合にもらうことができるものです。つまり診断書をもらうということは、専門家の目から見てすぐに休養すべきだと判断される状態にあるということです。特に医師から「すぐに休んだ方がいい」と言われる場合は、早急に休むべきだと言えます。言うまでもなく、素人の判断よりも医師の判断の方が重要です。医師から休職を勧められた場合は早めに休職した方が良いでしょう。仕事の都合上すぐに休職できない場合もあるでしょうが、医師はあなたの心身の健康を第一に考えてアドバイスをくれています。疲れ切っている時は判断力も鈍ってしまい、自分一人での判断が難しいときもあります。そんな時は大きな決断をせず、まず医師の指導に従って休むのが一番です。
退職した方がいいケース
休職してもあまり意味がないため、退職した方が良いとされるケースもあります。そもそも休職とは、一時的に休んで回復した後に同じ職場へ復帰するというものです。もしも体調を崩した原因が職場の人間関係だったりしたら、いくら休職しても何も変わっていない職場へ復帰したところで解決にはなりません。きっとまたいつか同じように限界を迎え、体調を崩してしまうでしょう。つまり、「休職する意味があるかどうか(復職したいか)」が大きなポイントです。もし、どれだけ休んだとしても復職したいと思えないようなら、最初から辞めてしまった方が気持ちも楽になります。ただ、少し迷ったり自分の判断に自信を持てなかったりする時は、退職という大きな決断をするのを少し待った方がいいかもしれません。退職は大きな節目になります。後悔のないようにじっくり考えてくださいね。
つらいと感じている時に「やってはいけないこと」3選
精神的に落ち込んだ時には「やってはいけないこと」があります。「やってはいけないこと」をしてしまうと、ますます自己嫌悪になり、悪循環になってしまいます。しかし無意識のうちにやってしまうことも少なくありません。ここではつらい時にやってはいけないことを3つ紹介します。やってはいけないうちの1つをやってしまうと他の1つも同時にやってしまうこともあるので、どれもやらないように注意しましょう。頭の片隅に置いておいて、自分が落ち込んだ時に「これはやったらダメだ」と思い出してくださいね。
「○○すべきだ」と考えること
真面目な人や完璧主義の人にありがちなことです。「こうするべきだ」「これをしなければ」という義務感に駆られ、その「すべきこと」に縛られてしまうと苦しくなってしまいます。自分の理想通りに対処できている時は良いですが、ひとたび理想から外れてしまうとどうしたらいいか分からなくなってしまうこともあるでしょう。自分が追い詰められている時は特に、「完璧にできないのは当然だ」という気持ちで俯瞰してみることが大切です。
自分を責めてしまうこと
上手くいかなかったことを自分のせいにしていると、どんどん自分を追い詰めていってしまいます。他人に責任を押し付けないのは素敵なことですが、それで自分を苦しめてしまうのは違いますよね。責任感が強い人ほど自分のせいにしてしまいがちですが、実は他に原因があったということも少なくないはずです。それによく考えてみれば、自分を責めたところで何も解決はしません。反省と後悔は違うので、もしも自分のやったことが原因で失敗してしまったと気付いた時は、反省して次に生かすようにすれば前に進めますよ。
八つ当たりしてしまうこと
気持ちに余裕がない時は、自分に対しても周囲の人に対しても優しくするのが難しくなります。いつもなら大して気にならないようなことも、落ち込んでいる時は我慢できなくなってしまうこともあるでしょう。でも、そんな時に感情任せに八つ当たりをしてしまえば、当然八つ当たりされた人は嫌な気持ちになります。人間関係にヒビが入ってしまえば、結果的にさらに自分を追い込んでしまうことにもなりかねません。後悔することにならないよう、周囲の人に当たるのではなく、自分の気持ちを切り替えることで昇華させられればそれが一番です。
今は終身雇用の時代ではない!退職しても再就職は可能
勤めている会社の仕事内容や人間関係が原因で退職を決意したケースでは、新たな会社で再スタートをしたいと考えている方もいるでしょう。退職すると再就職先があるだろうかと悩む気持ちはあるかと思いますが、現代では転職が当然として捉えられ、新卒から定年までずっと同じ会社に勤め続ける例は少なくなっています。そのため、転職歴があっても昔ほど不利にはならないと言えます。また、うつ病などを経験したものの、再就職先を見つけたいと思っている方に対して、職業訓練を提供するサービス(就労移行支援サービスや復職支援プログラムなど)もさまざまな場所で開催されていますので、それを利用しながら新たな職場を見つけることも可能です。
さらに、自分だけの力で退職をしづらいと感じている方に対しては、退職代行サービスを使うこともできます。退職した後すぐに働ける状態にない時は、給付金を受け取って療養の期間に充てることもできます。給付金の受け取りには様々な条件があるので、詳しく知りたい方は退職コンシェルジュに相談してみてくださいね。
まとめ
昔は、うつ病などの精神疾患で会社に行くのが苦痛だという訴えは、一種の怠慢だと捉えられていた時代もあったと言われています。しかし、その当時は精神疾患やメンタルヘルスの概念が社会に浸透していなかったのも、ひとつの原因だったかもしれません。現在では、精神疾患に対する認識や理解が存在する時代となっています。メンタルの不調で仕事ができない場合は、まずは自分を大切にすることを優先して休職を検討し、さまざまな制度も利用しながらゆっくり休養することを心がけましょう。
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