2023.10.20
退職について
退職で損害賠償を請求された場合の対処方法と法的対応

転職などの関係で、会社を退職したいと思ったときは、その会社と円満にお別れしたいですよね。しかし、稀に、ステップを踏んで退職手続きを行わなかったことで、退社すること自体がルール違反のように扱われてしまうことがあります。こう言ったケースでは、損害賠償を求められる可能性もゼロではありません。ここでは、退職において損害賠償を求められた時の対処法や、そうならないための対策についてお伝えします。
無期雇用契約で勝手に退職をしてしまった場合
まず、大前提として企業で働いている限り、私たち労働者は、国の法律でしっかりと守られています。憲法第22条では「職業選択の自由」が保障されているからです。また、「退職する自由」も民法第627条に記載があります。その中で無期雇用契約を結んでいる正社員などは、「2週間前に会社側に申し出ること」で退職ができると示されているのです。企業によっては、就業規則で「1カ月前に退職を申し出なければならない」と定められている場合もあります。しかし、一般的には、この「1ヶ月前」というのが暗黙のルールとして知られていることが多いです。つまり、会社の就業規則に違反してしまっている場合は、損害賠償請求される可能性があるのです。
労働者が決まりを守らず、突然音信不通になるなどして退職した場合、会社はそのことで調整しなければいけないことがたくさん出てくるでしょう。そして、一人の従業員を育てるために使用した経費が全て無駄になってしまいます。こういった場合に、損害賠償を求められる可能性があるのです。ただ、これまでの裁判例では、ほとんどそのような事例はありません。
ただ、昨今の日本の経済状況を鑑みると、企業によってはそういった対応を検討するところもあるかもしれません。また、退職を検討している人が、会社にとって大きな役割を占めている場合などにも注意が必要です。退職により会社が大きな損失を被ってしまうことになった場合には、損害賠償請求をされてしまうかもしれません。
有期雇用で期間内に一方的に退職してしまった場合
民法第627条の2項では、短期アルバイトなどの期間の定めのある雇用契約(有期雇用)については、正社員のような無期雇用契約とは異なり、原則として契約期間の満了まで退職することはできないとされています。そして、実は、企業側でも同じく、その期間内に労働者を一方的に解雇するということはできません。ただし民法628条では、やむを得ない事由がある場合は、双方に退職や解雇を認めています。しかし、その理由の如何によっては、「相手方に対して損害賠償の責任を負う。」とも記されているのです。
例えば、以下のような場合には、損害賠償請求をされる可能性があります。
- 
- 従業員が退職するときに他の従業員に転職の勧誘や、引き抜きをした場合
 - 会社負担での海外研修を経験後、短期間で辞めた場合
 
 
退職の損害賠償請求に関する裁判例はある?
ここからは、具体的な事例を知るために、退職時の損害賠償をめぐって起きた裁判の判例をお伝えしていきます。特に、退職にまつわる損害賠償請求について争われた裁判について、ご紹介します。
ケイズインターナショナル事件
従業員が就労4日後から病気を理由に退職した結果、取引先との契約が解約になってしまいました。従業員は、会社に対して200万円を支払う約束をしましたが、支払わなかったために裁判になったのです。
結果として、会社の損害賠償請求が認められ、従業員は退職後に約束をした金額の約3分の1を支払うことになりました。これは、無期雇用契約における退職者の損害賠償請求が認められた、極めて珍しいケースで、労働契約などを鑑み、減額されるという措置が取られることになりました。
こう言ったケースからも、個人として損害額を全額支払うことになることは少ないといえるでしょう。
ラクソン事件
取締役だった従業員がその地位を辞退した後、内密に同社のセールスマンらに移籍を提案、実行しました。この件で会社側は多くの人材を失ったことから損害請求をします。裁判において、計画的な引き抜き行為であり、背信的であるとみなされたため、損害賠償が認められました。
長谷工コーポレーション事件
会社の社員留学制度を利用して、2年間アメリカの大学院に留学し、学位を取得した従業員が、帰国後2年5カ月で退職しました。従業員は学費分467万円の賠償金を要求され、支払いを行いました。
これまでに記述してきた裁判例は、いずれも、会社からの請求をなんらかの形で受け入れることが必要だったものです。最後に、損害賠償請求が不当だとし、慰謝料の支払いが求められたケースもご紹介します。
プロシード事件
企業Aの入社9カ月ほどの新入社員が、双極性障害の発症を理由に退職することになりました。しかし、その後、退職から2カ月以内に転職をしていたことが判明します。これを知った企業Aは、詐病による退職として元従業員に損害賠償を求めました。
しかし、従業員は“損害賠償請求は不当”として反訴します。結果として、裁判では会社の請求が認められず、従業員の主張が支持され、110万円の慰謝料の支払いが会社側に命じられました。
このように、退職者に対して根拠に乏しい損害賠償請求を行う会社も存在します。きちんとした事実に基づき、証拠を用意することで、損害賠償を逃れるだけではなく、慰謝料が認められることもあると言えるでしょう。
退職届の出し方にも配慮しよう
退職をする時は、退職届を出す前にすることがいくつかあります。まず、必ず就業規則を読み、退職の何日前までに退職の意志を告げる必要があるのかということを確認してください。その期間がよほど長いものなどでない限りは、どんなに早く会社を辞めたくても、就業規則が定めている時期ギリギリに退職の意思を伝えることをおすすめします。
忙しい会社だと、辞めたいのに会社が辞めさせてくれるような雰囲気ではないときがあります。また、事前に退職の相談をすると、「なんとかして残って欲しい」と説得されることもよくあるのです。そのため、少しずつ業務量を減らしていき、1ヶ月前など、契約書類通りに伝えるのが一番スマートに退職できる方法でしょう。
しかし、業界によっては、引継ぎ等の兼ね合いもあり、規則上はOKでも会社に迷惑がかかってしまう可能性もあるので、就業規則の定める時期よりも少しだけ早めに、意思だけでも伝えておくのがいいでしょう。それから、退職届を提出するのは、退職が受け入れられ、今後の方向性が決まってからでも遅くありません。
退職届を提出した後も、終わりではなく、その他にも退職に関わる書類はたくさんあります。少し面倒に思うこともあるかもしれませんが、面倒くさがらずに、きちんと調べながら、正しい情報を記載するようにしましょう。
まとめ
基本的には、退職時のトラブルで労働者が損害賠償を求められるケースは少ないものです。しかし、退職する際の不安を少しでも軽減するために、契約書類には必ず目を通しておくようにしましょう。そして、万が一、退職に関して会社と揉めてしまうようなことになったときには、一人で悩み支払いに応じるのではなく、まずは専門機関に相談するようにしてくださいね。
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