「退職給付金」はなぜ怪しい?
ネットやSNSで目にする「退職給付金」という言葉に対し、多くの人が「怪しい」という印象を抱いたり、不安を感じたりするのはなぜでしょうか。その理由は単なる広告の手法だけでなく、私たちが直面する情報の不透明さや制度の複雑さにあります。
公的制度と民間サービスの混同
そもそも退職給付金とは失業手当(雇用保険の基本手当)や傷病手当金の継続給付など退職後に受給ができる公的制度の総称、俗称であり申請に際しては必ずしもサポートの利用が必須なわけではありません。しかし、複雑な書類手続きを要したりその手続きの方法がインターネット上などに情報が存在していないケースはほとんどです。精神的に追い込まれ退職に至った方であればなおさら困難な申請手続きを分かりやすく手ほどきする、という役割で生まれたのが「退職給付金サポート」です。
しかし、この公的な名称ではないはずの「退職給付金」が広告などで人目に付くようになり、一般化するにつれ本来給付金の対象にならないはずの人も受給へ誘導する悪質業者の台頭があり、その流れでまるで「退職すれば誰でも特別な給付金がもらえる」かのような誤解を招き、結果として「怪しい」「詐欺ではないか」という警戒心を生んでいるのが現状です。
誇大広告による「受給額アップ」の誤解
近年ではSNS広告などでも退職給付金サポートの広告を目にする機会が圧倒的に増えました。
特に注意が必要なのは、「誰でも必ずもらえる」「受給額を簡単に増やせる」といった誤認を意図的に招くような過度な広告です。失業手当や傷病手当金には、それぞれ明確な受給条件が法律で定められています。条件を満たしていないにもかかわらず、虚偽の申請を行ったり、不正な手段で受給しようとすることは「不正受給」にあたります。
上記でも既に触れましたが、単純に「お金がもらえる」といった訴求内容に対しては、目ざとい人なら見てすぐに何か裏があるのではと感じるのが自然でしょう。
虚偽の症状による給付の申請
虚偽の病状による給付の申請本来は健康で労務可能な状態であるにもかかわらず、事業者から「心身の不調があるということにしましょう」と持ちかけられ、受診時の回答マニュアルを渡されたり、特定のクリニックへ誘導されたりするケースです。医師を欺き事実と異なる診断書を作成させる行為は、各公的制度の根幹を揺るがす重大な不正行為とみなされます。
国が認めた「悪質業者トラブル」の実態
悪質業者によるトラブルの報告は年々増え続けています。
国民生活センターへの相談件数は4年で約5倍に
2025年12月3日、国民生活センターは「失業保険の給付額等を増やすことができるとうたう申請サポートに注意——不正受給を促すかのようなケースも!」と題した注意喚起を公表しました。 PIO-NETに登録された相談件数の推移は以下のとおりです。
| 年度 | 相談件数 |
|---|---|
| 2021年度 | 42件 |
| 2022年度 | 54件 |
| 2023年度 | 113件 |
| 2024年度 | 217件 |
| 2025年度(10月末時点) | 216件 |
2025年度はすでに2024年度の年間件数に迫る水準であり、被害は徐々に拡大しています。同時期、国民生活センターのみではなく東京労働局も独自に注意喚起を公表しており、厚生労働省・消費者庁・国民生活センターが連携して啓発資料を作成するに至っています。
参考:「失業保険の金額・期間を増やせる」とうたう申請サポートにご注意ください
まだ世間一般での知名度を獲得したというまでではない退職給付金サポートですが、このまま被害が広がれば今後は社会問題となっていく可能性もあるでしょう。
不正受給に課せられる「三倍返し」のペナルティ
もし不正受給と判断された場合、単に支給が止まるだけではありません。
「受給した金額の全額返還」に加え、さらに「受領額の2倍(合計3倍)の金額の納付(通称:三倍返し)」
という極めて重い罰則が課せられます。悪質な場合は刑事罰の対象となり、その後の再就職や社会生活に深刻な悪影響を及ぼします。安易な勧誘に従って手続きを進めた結果、重大なトラブルに巻き込まれるリスクがあることを十分に認識しておくことが必要です。
不正受給が発覚した際に責任を負うのは受給者であり、加担したからといって業者側が返還の肩代わりをしてくれるわけではありません。個別面談やサポートの申し込みの際は会社の運営母体など、信頼できる会社かどうか、そもそも不正受給を促すような仕組みになっていないかどうかをしっかり確実に確認しましょう。
信頼できる業者であれば、こうしたリスクを隠さず、あくまで「法令の範囲内」で正当な権利を行使するための助言を行うはずです。
法令遵守で適切にサービスを提供する業者の役割
一方で、全ての業者が悪質なのかというとその限りではありません。本来、こうした申請サポートは、メンタル面での不調を抱えている方や、受給対象となる疾患を既に持っているにもかかわらず、手続きの複雑さや心身の負担から申請を諦めてしまっている方を支えるためのものです。法令を遵守し、利用者のリスクを排除しながら、正当な権利行使を適切にサポートしている誠実な業者も存在します。大切なのは、不適切な勧誘を行う業者と、利用者の状況に寄り添う適切な業者を見極めることです。
「怪しい業者」を選ばないための3つの確認ポイント
サポート業者を検討する際、広告の内容だけでなく、契約前に確認しておくべき実務的なポイントがあります。ここでは国民生活センターの注意喚起や関連法令をもとに、3つの視点を紹介します。
解約条項・違約金は契約前に確認する
国民生活センターが2025年12月に公表した注意喚起では、「途中で解約を申し出たところ高額な違約金を請求された」「解約を求めても事業者が認めなかった」といった相談事例が報告されています。契約時には、解約が可能な条件と、解約時に発生する費用の有無・金額を事前に確認しておくことが重要です。口頭説明だけでなく、契約書面に明記されているかどうかも合わせて確認してください。
「支援」と「代行」、どちらを提供しているかを確認する
退職給付金に関する申請書類の作成を、報酬を得て本人に代わって行う「代行」は、社会保険労務士法第27条により、社会保険労務士または社会保険労務士法人のみが行える業務と定められています。つまり、社会保険労務士が代行を行うこと自体は適法な業務であり、代行という行為そのものが問題なのではなく、資格を持たない事業者が代行を行うことが法律上認められていない、という点がポイントです。サポートを選ぶ際は、代行を行っているのがどのような立場・資格を持つ担当者かを確認しておくと安心です。
法人の実在性を自分で確認する方法
契約前には、運営会社が実在する法人かどうかを自分でも確認できます。国税庁の法人番号公表サイトで法人名や所在地を検索すると、登記されている法人かどうかを確認できます。また、有償のサービスを提供する事業者には、特定商取引法に基づき、事業者名・所在地・連絡先などの表示義務があります。公式サイトに「特定商取引法に基づく表記」のページが用意されているかどうかも、確認の一つの目安になります。
また、法人として登記されている事実だけでは、必ずしも安全性を保証するものではありません。登記情報だけでは、実際の事業実態(事務所の運営形態、従業員の雇用状況など)までは分かりません。所在地がバーチャルオフィスやレンタルオフィスになっていないか、公式サイトに運営責任者や事業内容の具体的な記載があるかなども、あわせて確認しておくとより安心です。
その会社の従業員規模を確認したい場合は、日本年金機構の厚生年金保険適用事業所検索システムで法人名や所在地から検索すると、その事業所の厚生年金保険の被保険者数を確認できます。
退職給付金サポートは「本当に必要」なのか?
「公的制度なら自分で申請すればいい」という意見は確かに正論です。しかし、実際には制度が複雑で、個々の状況に合わせてどの制度をどのタイミングで申請すべきか判断が難しいケースも多くあります。
手続きの複雑さと専門的知見
自身の健康状態や離職理由、キャリアプランによって、選択すべき制度や申請の優先順位は大きく異なります。
そもそも申請書類の記入が複雑で、慣れない方が一人で完璧に作成するのは容易ではありません。さらに、傷病手当金などの申請において重要な「医師の診断書」等の記入内容についても、医師が多忙であったり制度の細かなルールを完全に把握していなかったりすることで、記入漏れや誤りが生じる可能性もゼロではありません。
加えて、健康保険組合などの審査は非常に厳格です。書類の不備や内容の矛盾が一度指摘されると、審査が大幅に長引いたり、最悪の場合は受給が認められなかったりと、退職後の生活設計に大きな支障をきたすリスクがあります。
専門的な知識を持ったサポートサービスは、こうした煩雑な書類のチェックや個々の状況整理を行い、法的に正しい受給スケジュールを組み立てる役割を担います。これは「特別な裏技」を提供するのではなく、手続きのミスを防ぎ、審査をスムーズに進めるための「伴走者」として、申請者の負担とリスクを軽減するためのものです。
給付金サポートの利用事例
「一つ一つ丁寧にサポートしてくれた」「複雑な書類作成の心理的ハードルが下がった」など、実際に弊社のサポートを通じて新しい一歩を踏み出されたお客様の声をご紹介します。正しい知識と並走者がいることで、どのように不安が解消されたのか、ぜひ参考にしてください。
S.Aさんの体験談

M.Nさんの体験談

信頼できる相談先を見極める視点
もしサポートサービスの利用を検討する場合、以下のポイントを必ず確認してください。
- 法人としての実態が明確か:運営元の企業情報や所在地が公開されているか。
- 料金体系が妥当か:サービス内容と価格が見合っているか。不明瞭な成功報酬を請求されないか。
- リスクを説明しているか:「絶対に受給できる」といった断定的な表現を使わず、受給の条件や注意点を説明しているか。
よくある質問
Q. 社労士と「提携」「監修」と書いてあれば安全ですか?
それだけでは安全とは言い切れません。「提携」「監修」の実態は業者によって大きく異なります。名義だけを借りていて実際には関与していないケースもあります。社労士の登録番号・事務所名・具体的な関与内容を確認するのが正しい判断基準です。
Q. 「給付金が受け取れなければ全額返金」という業者は安心ですか?
文面だけでは判断できません。「給付金が受け取れなければ」の定義が業者によって異なるためです。一般的な失業保険であれば、ハローワークに行くだけでほぼ誰でも受給できます。「何らかの給付金が受け取れなければ返金」という条件なら、返金が発生する可能性は極めて低くなります。契約前に「具体的にどのケースが返金対象か」を書面で確認してください。
Q. 無症状なのに「うつ病の診断を取れる」と言われた場合はどうすればいいですか?
その業者とは関わらないことを強くおすすめします。実際の状態と異なる診断を取得させ、それをもとに申請を行うことは不正受給に該当します。発覚した場合、受給額の最大3倍の返還請求と刑事罰が科される可能性があります。業者の勧めでも、個人の責任が免除されることはありません。
Q. すでにトラブルになっています。どこに相談すればいいですか?
まず消費者ホットライン「188(いやや)」に電話してください。最寄りの消費生活センターにつながります。契約書・やり取りの記録・支払い明細など、証拠になりそうなものはすべて保管しておいてください。弁護士への相談には法テラス(0570-078374)の活用も選択肢の一つです。
まとめ
「退職給付金」という言葉の裏にあるのは、必ずしも怪しい仕組みばかりではありません。しかし、不安を煽るような広告手法には注意が必要です。
重要なのは、自分の状況を正確に把握し、国が定めた公的制度を正しく理解して活用することです。不明点があればまずはハローワークや健康保険組合といった公的機関を確認し、それでも手続きの進め方や個別の状況判断に不安がある場合は、法令を遵守した透明性の高いサポートサービスを選択するようにしてください。
煽り文句に惑わされず、冷静な判断で自身のキャリアと生活を守りましょう。
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