高年齢求職者給付金とは
高年齢求職者給付金は、65歳以上の雇用保険被保険者(高年齢被保険者)が離職した際に支給される一時金です。いわば「65歳以上のための失業手当」と考えるとわかりやすいかもしれません。
通常の失業手当(基本手当)は64歳以下の方が対象ですが、高年齢求職者給付金は65歳以上の方専用の制度として設けられています。65歳になると雇用保険上の区分が「一般被保険者」から「高年齢被保険者」に変わり、離職した場合に適用される給付制度も自動的に切り替わります。
なお、本制度は厚生労働省・ハローワーク「離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>」に詳細が掲載されています。
通常の失業手当と何が違うの?
混乱しやすいポイントなので、まず違いを整理しておきましょう。
| 項目 | 高年齢求職者給付金 | 失業手当(基本手当) |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 65歳以上 | 65歳未満 |
| 給付日数 | 30日分 または 50日分 | 90〜360日分 |
| 支給方法 | 一括支給 | 4週間ごとに分割支給 |
| 年金との併給 | できる(全額) | できない(年金が停止) |
| 被保険者期間の要件 | 離職前1年間に6か月以上 | 離職前2年間に12か月以上 |
| 課税 | 非課税 | 非課税 |
給付日数は通常の失業手当より少ないですが、年金と同時に受け取れる点は大きなメリットです。老齢厚生年金などを受給しながら、給付金も満額もらえます。
受給できる人・できない人
受給要件は2つだけ
高年齢求職者給付金を受け取るには、以下の2つの要件をすべて満たす必要があります(厚生労働省リーフレットより)。
要件① 離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上あること
被保険者期間とは、離職日から1か月ごとに区切った期間のうち、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月のことです。なお、11日以上の月が6か月に満たない場合でも、賃金の支払基礎となった時間数が80時間以上の月があれば1か月として計算できます。
要件② 失業の状態にあること
「就職したいという積極的な意思と、いつでも就職できる能力があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態」のことを指します。ポイントは「再就職したこと」が条件ではなく、「再就職しようとしている意思があること」が条件だという点です。
受給できないケース
以下のような状態にある方は、就職する意思・能力がないと判断されるため、原則として受給できません。
| 受給できないケース |
|---|
| 家事・育児・介護に専念していて求職活動ができない |
| 学業に専念している(昼間学生など) |
| 家業に従事していて就職できない状態にある |
| 自営業を開始した、または自営準備に専念している |
| すでに次の就職先が決まっている |
| 雇用保険の被保険者にならないような短時間労働のみを希望している |
| 自分名義で事業を営んでいる |
| 会社の役員などに就任している(名義だけの役員も含む) |
| すでに就職・就労中(試用期間を含む) |
| 同一事業所で離職・就職を繰り返し、再び同じ職場に戻る予定がある |
70歳以上でも受給できる?
はい、受給できます。高年齢求職者給付金には年齢の上限が設けられていません。65歳以上であれば、70歳でも80歳でも要件を満たす限り受給可能です。また、受給回数にも制限はなく、離職と再就職を繰り返した場合でも、そのつど要件を満たせば給付を受け取ることができます。
パート・アルバイトでも対象になる?
雇用保険に加入していれば、パートやアルバイトの方も対象です。週20時間以上の所定労働時間があり、31日以上の雇用見込みがある場合は雇用保険の加入対象となります。離職前1年間に被保険者期間が6か月以上あれば、受給要件を満たす可能性があります。
いくらもらえる?支給額の計算方法
支給額は「基本手当日額 × 給付日数」で計算します。それぞれの算出方法を順番に見ていきましょう。
ステップ1:賃金日額を計算する
まず、退職前6か月の賃金合計を180で割って「賃金日額」を出します。
賃金日額 = 退職前6か月の賃金合計 ÷ 180
ここでいう「賃金」には基本給のほか、通勤手当・役職手当なども含みます。ただし、賞与や3か月を超える期間ごとに支給される手当は除きます。
ステップ2:給付率から基本手当日額を求める
賃金日額に「給付率」を掛けたものが、1日あたりの受給額(基本手当日額)になります。給付率は賃金日額の水準によって変わります。
以下は令和7年8月1日改定後の給付率早見表です(厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更」より)。なお、高年齢求職者給付金を受給する場合は、年齢にかかわらず「29歳以下」の上限額(7,255円)が適用されます。
| 賃金日額 | 給付率 | 基本手当日額の目安 |
|---|---|---|
| 3,014円以上 5,340円未満 | 80% | 2,411円〜4,271円 |
| 5,340円以上 13,140円以下 | 80〜50%(逓減) | 4,272円〜6,570円 |
| 13,140円超 14,510円以下 | 50% | 6,570円〜7,255円 |
| 14,510円超(上限超え) | ― | 7,255円(上限額) |
基本手当日額の最低額は2,411円、最高額(29歳以下区分)は7,255円です(令和7年8月1日時点)。賃金が高い方は上限の7,255円が適用されます。
ステップ3:給付日数を確認する
給付日数は、雇用保険の被保険者期間によって決まります。
| 被保険者期間 | 給付日数 |
|---|---|
| 1年未満 | 30日分 |
| 1年以上 | 50日分 |
ステップ4:支給額を計算する
高年齢求職者給付金の支給額 = 基本手当日額 × 給付日数(30日または50日)
最大支給額は「7,255円 × 50日 = 362,750円」となります。
月収別の受給目安(シミュレーション)
退職前の月収・雇用保険加入期間ごとの受給目安をまとめました(令和7年8月1日改定値を適用)。あくまでも目安であり、実際の金額はハローワークの審査によります。
| 退職前の月収(賞与除く) | 賃金日額の目安 | 給付率 | 加入1年未満(30日) | 加入1年以上(50日) |
|---|---|---|---|---|
| 10万円 | 約3,333円 | 80% | 約80,000円 | 約133,000円 |
| 15万円 | 約5,000円 | 80% | 約120,000円 | 約200,000円 |
| 20万円 | 約6,667円 | 約72% | 約144,000円 | 約240,000円 |
| 25万円 | 約8,333円 | 約63% | 約157,000円 | 約262,000円 |
| 30万円以上 | 約10,000円〜 | 上限適用 | 約217,650円(上限) | 約362,750円(上限) |
具体的な計算例
Aさんの場合(月収15万円・加入期間1年6か月)
| 賃金日額 | 150,000円 × 6 ÷ 180 = 5,000円 |
| 給付率 | 80% |
| 基本手当日額 | 5,000円 × 80% = 4,000円 |
| 給付日数 | 50日(1年以上) |
| 受給額 | 4,000円 × 50日 = 200,000円 |
Bさんの場合(月収12万円・加入期間11か月)
| 賃金日額 | 120,000円 × 6 ÷ 180 = 4,000円 |
| 給付率 | 80% |
| 基本手当日額 | 4,000円 × 80% = 3,200円 |
| 給付日数 | 30日(1年未満) |
| 受給額 | 3,200円 × 30日 = 96,000円 |
申請手続きの流れ
必要書類を準備する
ハローワークへ持参する書類は以下のとおりです(厚生労働省・ハローワーク公式リーフレットより)。
| 必要書類 | 備考 |
|---|---|
| 離職票-1・離職票-2 | 退職後10〜14日以内に会社から届く |
| マイナンバーカード | ない場合は個人番号確認書類+身元確認書類の2種類が必要 |
| 写真1枚 | 縦3.0cm×横2.4cm・正面上三分身の最近の写真(マイナンバーカード提示の場合は省略可) |
| 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード | 給付金の振込先として指定 |
手続きのステップ
ハローワークでの手続きはざっくり以下の流れになります。
- 離職票を受け取る:退職後、会社から離職票-1・2が届くのを待つ
- ハローワークへ行く:住所を管轄するハローワークへ必要書類を持参し、求職申込みを行う
- 受給資格の決定:書類審査のうえ、受給資格が認定される
- 待期期間(7日間)の経過:求職申込み日から7日間は支給されない
- 給付制限期間の経過(自己都合退職の場合):待期後さらに原則1か月の給付制限がある
- 失業の認定:ハローワーク指定の認定日に来所し、失業状態の確認を受ける
- 給付金の振込:認定日の約7日後に指定口座へ一括振込
なお、オンラインでの求職登録(ハローワークインターネットサービスから仮登録)も可能ですが、雇用保険の受給手続きはハローワーク窓口での対応が必要です。
待期期間・給付制限期間について
「手続きしてすぐにもらえる」というわけではありません。以下の期間の経過が必要です。
| 退職理由 | 待期期間 | 給付制限期間 |
|---|---|---|
| 会社都合(解雇・倒産など) | 7日間 | なし |
| 定年退職 | 7日間 | なし |
| 自己都合退職(通常) | 7日間 | 原則1か月(※) |
| 重大な理由による解雇(懲戒解雇など) | 7日間 | 3か月 |
(※)令和7年4月1日以降の退職が対象。ただし退職日から遡って5年間のうちに2回以上、正当な理由なく自己都合退職して受給資格決定を受けた場合は3か月になります。令和7年3月31日以前の自己都合退職は原則2か月です。
受給期限に要注意
高年齢求職者給付金には受給期限があります。離職日の翌日から1年以内に手続きを完了させる必要があり、この期限を過ぎると受け取れなくなります。待期期間や給付制限期間を考慮すると、手続きが遅れるほど実際に受給できる金額が少なくなってしまうため、退職後はできるだけ早くハローワークへ向かうことが大切です。
年金と同時にもらえる?
高年齢求職者給付金は、老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)と同時に受け取ることができます。年金が減額されることもなく、給付金が減らされることもなく、どちらも全額受け取れます。
これは65歳未満向けの失業手当(基本手当)とは大きく異なる点です。通常の失業手当を受給している期間中は老齢厚生年金が全額停止されますが、高年齢求職者給付金にはその制約がありません。
| 退職時の年齢 | 適用される給付 | 年金との関係 |
|---|---|---|
| 65歳未満で離職 | 失業手当(基本手当) | 老齢厚生年金が全額停止 |
| 65歳以上で離職 | 高年齢求職者給付金 | 年金と全額併給できる |
ただし、退職日と65歳の誕生日の関係には注意が必要です。65歳の誕生日の前々日以前に退職した場合は「一般の失業手当」が適用され、誕生日の前日以降に退職した場合は「高年齢求職者給付金」が適用されます。退職のタイミングによって、どちらの制度が適用されるかが変わります。
失業手当と高年齢求職者給付金、どちらが得?
65歳前後で退職する場合、「どちらの制度で受け取る方が有利か」を気にする方も多いと思います。一概にどちらが得とは言えませんが、判断のポイントを整理しました。
高年齢求職者給付金が有利になるケース
- 退職日が65歳の誕生日前日以降(制度上、こちらしか選べない)
- 老齢厚生年金の受給額が高い人(年金が停止されないメリットが大きい)
- 早期に一括で受け取りたい人(分割ではなく一括支給)
失業手当(基本手当)が有利になるケース
- 退職日が65歳の誕生日前々日以前で、給付日数が多い(最大150日以上)
- 老齢厚生年金の受給額が低く、年金停止のデメリットが小さい人
- 長期間にわたって給付を受けながら就職活動をしたい人
失業手当は最大で360日分(定年退職・加入期間20年以上の場合は150日)まで受け取れるため、給付総額では上回ることがあります。ただし年金が停止される点を考えると、単純な比較は難しいです。退職のタイミングを検討している場合は、事前にハローワークへ相談することをおすすめします。
参考:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
よくある質問
再就職しなくてももらえますか?
はい、受給できます。「再就職すること」は受給の条件ではありません。ただし「就職したい意思があり、求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態」であることが必要です。「もう働く気はない」という場合は対象外となります。
自己都合退職でももらえますか?
もらえます。自己都合退職の場合、7日間の待期期間に加えて原則1か月の給付制限期間(令和7年4月1日以降の退職の場合)が経過した後に支給されます。
税金はかかりますか?
かかりません。高年齢求職者給付金は雇用保険法第12条により非課税所得とされており、所得税・住民税のいずれも課税されません。確定申告で収入として申告する必要もなく、国民健康保険料の算定にも影響しません。
いつ振り込まれますか?
ハローワークで失業の認定を受けた日から約7日後に、指定した金融機関口座へ一括で振り込まれます。土日祝日を挟む場合は、その分だけ遅れることがあります。
定年退職の場合、給付制限はかかりますか?
かかりません。定年退職は自己都合退職とは異なる扱いで、7日間の待期期間のみ経過すれば支給されます。ただし、65歳の誕生日前日以降の退職が高年齢求職者給付金の対象となる点に注意してください。
70歳を過ぎていても申請できますか?
申請できます。受給に年齢の上限はなく、65歳以上であれば何歳でも要件を満たせば受給できます。受給回数にも制限がないため、再就職と離職を繰り返す場合でも、そのつど申請が可能です。
受給期限はいつまでですか?
離職日の翌日から1年間です。この期間を過ぎると受け取れなくなるため、退職後はできるだけ早くハローワークへ手続きに行くことが重要です。
まとめ
高年齢求職者給付金について、要点を整理します。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 65歳以上の高年齢被保険者で離職した方(70歳以上も対象・年齢上限なし) |
| 受給要件 | 離職前1年間に被保険者期間が6か月以上 + 失業状態にあること |
| 支給額 | 基本手当日額 × 30日(1年未満)または50日(1年以上)。最大362,750円 |
| 年金との関係 | 老齢年金と全額併給できる(年金は停止されない) |
| 支給方法 | 一括支給(分割ではない) |
| 課税 | 非課税(所得税・住民税ともかからない) |
| 受給期限 | 離職日の翌日から1年以内に手続きが必要 |
| 給付制限 | 自己都合退職の場合は原則1か月(令和7年4月1日以降の退職) |
受給期限は離職後1年と決まっているため、退職後はなるべく早くハローワークへ足を運んでください。手続きが遅れるほど、受け取れる金額が減ってしまうケースがあります。また、令和7年4月以降の制度改正(給付制限の短縮)や令和7年8月以降の日額改定など、最新情報については厚生労働省・ハローワークの公式リーフレットをあわせてご確認ください。
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