傷病手当金の計算方法

傷病手当金の1日分の支給額は、「12か月間の標準報酬月額を平均した額÷30日×3分の2」で計算します。「12か月間の標準報酬月額の平均金額」とは、支給開始日以前の健康保険加入期間によって条件が変わるため注意が必要です。
ここでは、健康保険の加入期間別に、詳しい計算方法と具体例を解説します。
支給開始日以前に12か月以上加入期間がある場合
傷病手当金の支給開始日以前に、連続した12か月間の加入期間がある場合は、12か月の標準報酬月額の1か月分の平均値を出して、以下の計算式に当てはめます。
- 12か月間の標準報酬月額を平均した額÷30日×3分の2
例えば、過去12か月のうち、5か月は標準報酬月額が22万円、残りの7か月は24万円だった場合で計算してみましょう。1か月の標準報酬月額の平均値は、以下の計算式で算出できます。
(22万円×4か月+24万円×8か月)÷12か月=約23万3,333円
つまり、1日分の支給額は、23万3,333円÷30日×3分の2=5,185円です。この支給額が、傷病により休業した日数分受け取れます。
支給開始日以前の加入期間が12か月に満たない場合
傷病手当金の支給開始日以前の健康保険の加入期間が12か月未満の場合は、12か月の標準報酬月額を平均できないため、以下のどちらか低い金額を使って計算します。
- 支給開始日が属する月以前の直近の連続した各月標準報酬月額の平均
- 標準報酬月額の平均値
上記のうち低い方の金額を30日で割って、3分の2を掛けて計算した支給額が支給されます。
例えば、健康保険の加入期間が支給開始日以前に3か月あり、その標準報酬月額が24万円、平均値が32万円の場合は、以下のように計算できます。
傷病手当金の日額=24万円÷30日×3分の2=5,333円
計算で出た金額に申請する日数分を掛けると、1回分の支給額を計算できます。
傷病手当金を計算する際の基礎知識
傷病手当金の金額を正しく把握するためには、まず「標準報酬月額」という基礎的な仕組みを理解することが大切です。標準報酬月額は、給与額そのものではなく、社会保険料や給付金の計算の基準となる金額で、定義が複雑でわかりにくいことがあります。
ここでは、標準報酬月額とは何か、対象になる報酬・ならない報酬の違いをわかりやすく解説します。
標準報酬月額とは
標準報酬月額とは、社会保険料を算出する際に使われる報酬区分のことです。会社から毎月受け取る給与などの報酬月額を区切りのいい範囲で区分したもので、実際の支給総額や手取り額とは異なります。
標準報酬月額の対象になる報酬の範囲は、原則として毎月決まって支払われるものです。
標準報酬月額の対象になる報酬に含まれるもの
標準報酬月額を決める際の報酬は基本給だけでなく、役職手当や通勤手当、住宅手当、残業手当、家族手当など毎月支給される手当も含まれます。
食事や住宅、定期券などの現物給与も対象になることがあります。原則として、毎月支給されるものが対象ですが、年4回以上支給される賞与は報酬の範囲に入ることに留意しましょう。
また、時間外勤務手当や休日勤務手当など、毎月固定で支払われる給与以外の手当も対象です。
標準報酬月額の対象になる報酬に含まれないもの
報酬に含まれないのは、臨時で支給される年3回以下の賞与(ボーナス)や出張旅費、退職手当などです。見舞金や結婚祝い金は、労働の対価とは認められないため原則報酬には含めません。
「標準報酬月額の平均値」とは
傷病手当金の支給開始日以前に、健康保険の加入期間が12か月未満の場合に計算式で使われる「標準報酬月額の平均値」とは、健康保険の全被保険者の同月標準報酬月額を平均した金額です。
したがって、平均値は健康保険組合や基準日によって異なります。協会けんぽの場合は、前年9月30日時点で算出した全被保険者の平均額を用います。例えば、支給開始日が2025年4月1日以降の人は、平均値を32万円として計算する仕組みです。
標準報酬月額ごとの傷病手当金日額の早見表
前述のとおり、傷病手当金の支給額は標準報酬月額によって変動します。標準報酬月額は、実際の手取り額や給与の支給総額とは異なり、会社から受け取る報酬月額により区分されます。
標準月額とは、社会保険料の支払いの基準となる給与額です。報酬月額による標準報酬月額の区分と傷病手当金の日額について、以下の表にまとめました。
ただし、以下はあくまで協会けんぽの例であり、金額は組合ごとに異なります。詳細は加入している健康保険組合の公式サイトを参照しましょう。
| 報酬月額(円以上〜円未満) | 標準報酬月額(円) | 傷病手当金の日額 |
| 146,000〜155,000 | 150,000 | 3,333円 |
| 155,000〜165,000 | 160,000 | 3,553円 |
| 165,000〜175,000 | 170,000 | 3,780円 |
| 175,000〜185,000 | 180,000 | 4,000円 |
| 185,000〜195,000 | 190,000 | 4,220円 |
| 195,000〜210,000 | 200,000 | 4,447円 |
| 210,000〜230,000 | 220,000 | 4,887円 |
| 230,000〜250,000 | 240,000 | 5,333円 |
| 250,000〜270,000 | 260,000 | 5,780円 |
| 270,000〜290,000 | 280,000 | 6,220円 |
| 290,000〜310,000 | 300,000 | 6,667円 |
| 310,000〜330,000 | 320,000 | 7,113円 |
| 330,000〜350,000 | 340,000 | 7,553円 |
| 350,000〜370,000 | 360,000 | 8,000円 |
| 370,000〜395,000 | 380,000 | 8,447円 |
| 395,000〜425,000 | 410,000 | 9,113円 |
| 425,000〜455,000 | 440,000 | 9,780円 |
| 455,000〜485,000 | 470,000 | 10,447円 |
| 485,000〜515,000 | 500,000 | 11,113円 |
| 515,000〜545,000 | 530,000 | 11,780円 |
| 545,000〜575,000 | 560,000 | 12,447円 |
| 575,000〜605,000 | 590,000 | 13,113円 |
| 605,000〜635,000 | 620,000 | 13,780円 |
| 635,000〜665,000 | 650,000 | 14,447円 |
| 665,000〜695,000 | 680,000 | 15,113円 |
| 695,000〜730,000 | 710,000 | 15,780円 |
傷病手当金とは
そもそも傷病手当金は、病気やケガで働けなくなったときに、給与の代わりとして支給される大切な制度です。支給を受けるためには、一定の条件や手続き、申請期限を満たす必要があります。
ここでは、支給の対象となる条件や期間、申請方法など、傷病手当金の基本的な仕組みをおさらいしながら詳しく解説します。
支給条件
傷病手当金は、以下の条件をすべて満たした上で申請が必要です。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業である
- 仕事に就けないこと
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業期間に給与の支払いがないこと
ただし、「給与の支払い」に関しては、その金額によって例外もあります。詳しくは後ほど解説します。
支給期間
傷病手当金は、支給開始日から労務不能と判断された日が通算1年6か月に達するまでです。支給開始日以降に途中で出勤した日がある場合、出勤日は支給期間にカウントされません。
受給している傷病に付随する合併症などによる労務不能は、同一の傷病とみなされるため、支給期間は通算1年6か月のままです。
また、別の病気を発症した場合は、それぞれの傷病ごとに1年6か月の支給期間が与えられます。しかし、療養期間が重なる場合は重複して受け取れず、同時期に1つの傷病に対してのみ支給されます。
申請期限
申請期限は、労務不能日の翌日を起算日として2年間です。傷病手当金は1日ずつ支給されるため、申請期限も1日ずつ設定されています。
例えば、12月1日から12月10日までの休業を申請する場合、12月1日の分は2年後の12月1日、12月10日の分は2年後の12月10日とそれぞれに期限があります。
申請方法
傷病手当金の基本的な申請方法は、以下の流れで行います。
- 傷病手当金支給申請書を会社から受け取る
- 申請書の医師記入欄に医師に記入してもらう
- 本人記入欄を埋める
- 会社に事業主欄を記入してもらう
- 健康保険組合に申請書と必要な添削課題を提出する
会社を通じて書類を提出する場合は、労働者本人が行うのは医師記入欄と本人記入欄を埋めて会社に提出するところまでです。
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【傷病手当金が調整されるケース】支給額の計算方法
傷病手当金を受給する際に以下の給付金を受けている場合は、原則として傷病手当金は支給されません。
ただし、差額が発生するケースでは、差額分が傷病手当金から支給されることがあります。ここでは、傷病手当金が調整されるケースごとに、支給額を計算する方法を解説します。
休んだ日に給与の支払いがあったとき
傷病手当金の支給対象になる日に給与が支払われた場合、傷病手当金の1日分より、給与の日額が少ないときに限り差額が支給されます。
例えば、支払われた給与日額が5,000円、傷病手当金の日額が6,000円のときは、差額の1,000円を受け取れる仕組みです。給与日額より傷病手当金の方が少ないときは、差額は支給されません
注意したいのは、給与の対象になるのが基本給だけでなく、通勤手当や住宅手当などの手当も含まれることです。出勤の有無にかかわらず支給される手当は、傷病手当金の調整対象になる可能性があるため、休業中の報酬について確認しておく必要があります。
出産手当金を同時に受給するとき
条件を満たして傷病手当金と出産手当金を同時に受給できる場合は、出産手当金より傷病手当金が多いときに差額が支給されます。
出産手当金の支給日額は、以下の計算式で算出します。
- 支給開始日が属する月以前の継続した12か月間の標準報酬月額の平均額÷30日×3分の2
出産手当金の支給期間は、出産日以前の42日から出産日の翌日以降の56日です。最短でも98日分受け取れます。
上記の計算式は傷病手当金の支給額を算出するものと似ていますが、標準報酬月額の平均額の対象となる期間が若干異なり、差額が生じるケースがあります。差額が出る場合に、上記の通り差額分を受け取れます。
資格喪失後に老齢退職年金をもらうとき
退職後、傷病手当金の継続給付を受けている人が、老齢退職年金を受けるときは、以下のケースで差額が支給されます。
- 老齢退職年金額の360日分の1が傷病手当金の日額より少ない場合
障害厚生年金や障害手当金を受けているとき
傷病手当金の日額より、360分の1にした障害厚生年金の支給額が少ない場合は、差額が支給されます。
2つの制度の併用は、障害手当金の支給額を傷病手当金の合計額が上回るまでできません。傷病手当金の合計額が障害手当金の支給額を超えたら、傷病手当金は全額支給される仕組みです。
ただし、傷病手当金と障害厚生年金・障害手当金で別の傷病について受給する場合は、それぞれ満額支給となります。
労災保険の休業補償給付を受給しているとき
労災保険の休業補償給付は業務中に発生した傷病、傷病手当金は業務外で発生した傷病が対象のため、同じ傷病で同時に受け取ることはできません。過去に労災保険の休業補償給付を受けていた場合も同様に、後に同じ傷病で傷病手当金を受け取れないことに注意しましょう。
別の原因で発生した傷病で、それぞれの支給条件を満たすときは、傷病手当金の日額より、休業補償給付の日額が少ないときに差額が支給されます。
傷病手当金の支給額や受給中の支出に影響を与えるもの

傷病手当金の金額や受給中の生活に影響を与える要素は、実は手当金や年金以外にもあります。例えば、企業型確定拠出年金(企業型DC)や住民税、社会保険料の支払いなどです。
支払い方法によっては、傷病手当金として受け取れる金額や手元に残る資金が変わることもあります。ここでは、傷病手当金の受給額や療養中の支出に影響を与えるポイントを解説します。
企業型確定拠出年金(企業型DC)
企業型DCとは、会社が掛金を拠出して労働者が運用する年金制度です。掛金は会社負担ですが、給与を減額してその分を拠出したり、給与の一部から天引きする形で拠出したりします。
掛金額の分だけ報酬額が下がることで、社会保険料の負担が減るメリットがある一方で、傷病手当金をもらう際は、支給額の計算で使う標準報酬月額も下がる可能性があります。拠出しない場合と比べて、受け取れる金額が少なくなることが懸念されます。
住民税
傷病手当金は非課税のため、支給額に対して所得税や住民税はかかりません。ただし、住民税は前年の1月1日から12月31日までの所得に課税されるため、前年の所得に応じて傷病手当金の受給中に住民税の支払いが発生します。
在職中は給与から天引きされるのが一般的ですが、休業中は給与の支払いがないため、以下の方法で納税が必要です。
- 労働者が会社に支払う
- 労働者が納付書を使って直接自治体に支払う
労働者が直接支払う場合は徴収方法の切り替えが必要なため、会社に依頼して「普通徴収」に切り替えてもらいましょう。
社会保険料
傷病手当金の受給中や失業中でも、健康保険や厚生年金・基礎年金などの社会保険料は支払う必要があります。働けない状態で収入がなくても原則として免除されないため、保険料を確保しておくことが大切です。
また、収入によっては免除制度を利用できる可能性があります。条件は自治体により異なるため、居住地の市区町村役場への問い合わせが必要です。
まとめ
傷病手当金の支給額は、標準報酬月額の平均をもとに算出され、加入期間や給与、他の給付との兼ね合いによって変動します。また、企業型確定拠出年金の扱いや、休業中の税金・社会保険料の支払い状況によっても、実際の支給額や手取りが変わることがあります。
支給額の計算には標準報酬月額や加入期間など、多く要素が関係するため、正確に算出するのは簡単ではありません。そこでおすすめなのが、「社会保険給付金サポート」の活用です。
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