リベンジ退職とは
会社への不満から、会社が困る形で辞めること
リベンジ退職とは、会社や上司への不満・怒りをきっかけに、会社が困るタイミングや方法をあえて選んで辞めることを指します。英語では「Revenge Quitting」と呼ばれ、2025年ごろから海外で広まり、日本でもSNSやニュースで目にするようになりました。
ポイントは、辞めること自体よりも「会社にダメージを与えること」が目的になっている点です。退職理由はハラスメントや不当な評価など、本人にとっては正当な怒りであることがほとんど。だからこそ、気持ちが先走って取り返しのつかない行動につながりやすい、という面があります。
普通の退職・静かな退職との違い
似た言葉に「静かな退職」があります。こちらは会社に在籍したまま、必要最低限の仕事だけをこなす働き方のこと。実際には辞めていない点で、リベンジ退職とはまったく別物です。
| 項目 | 普通の退職 | 静かな退職 | リベンジ退職 |
|---|---|---|---|
| 会社を辞めるか | 辞める | 辞めない | 辞める |
| 主な目的 | 転職、家庭の事情など | 仕事との距離を置く | 会社に不満をぶつける |
| 辞め方 | 引き継ぎをして円満に | 在籍したまま | 会社が困るタイミング・方法を選ぶ |
| 本人のリスク | ほぼなし | 評価や昇給への影響 | 懲戒、損害賠償、お金の損 |
「静かな退職」については下記の記事で詳しく解説しています
参考:静かな退職とは?意味やデメリット、続けた先の評価・解雇リスクと辞めるときのお金を解説
リベンジ退職の主なパターン
リベンジ退職と呼ばれる行動は、大きく分けると次の4つです。同じリベンジ退職でも、パターンによってリスクの大きさがまったく違います。
- 繁忙期や大型案件の直前など、会社が一番困る時期に突然辞める
- 引き継ぎを一切せずに辞める、資料を残さない
- 業務データを削除する、顧客情報などを持ち出す
- 退職後にSNSや口コミサイトで会社の内情を暴露する
上の2つは「迷惑ではあるけれど、やり方次第」。下の2つは、はっきり法律に触れる可能性が高い行動です。
リベンジ退職が注目されている背景
SNSや退職代行で辞め方が目に見えるようになった
以前なら、誰がどんな辞め方をしたかは社内の噂話で終わっていました。今はSNSで「繁忙期に全員で辞めてやった」「退職代行で即日いなくなった」といった投稿が拡散され、辞め方そのものが話題になります。
退職代行サービスが一般的になり、上司と顔を合わせずに辞められるようになったことも大きいでしょう。辞めるハードルが下がった分、「どうせ辞めるなら」と感情のまま動いてしまう人も出てきています。
リベンジ退職を考えるきっかけ
リベンジしたいほどの気持ちは、ある日突然わいてくるわけではありません。多くの場合、次のような不満が長い時間をかけて積み重なっています。
- 上司からのパワハラや、職場でのいじめ・無視
- 頑張っても評価されない、昇給しない
- 長時間の残業や休日出勤が当たり前になっている
- 相談しても会社が何も対応してくれない
ここで覚えておいてほしいのは、パワハラや長時間残業が原因なら、それは「仕返し」ではなく、制度を使って正当に主張できる問題だということ。この点はあとで詳しく説明します。
その行動は大丈夫?リベンジ退職の法的リスク
まずは、リベンジ退職でよくある行動が法律的にどう扱われるのかを一覧で見てみましょう。
| 行動 | 法律上の扱い | 起こりうること |
|---|---|---|
| 繁忙期に辞める | 原則として問題なし | 気まずさ程度 |
| 引き継ぎを拒否する | 就業規則違反になりうる | 懲戒、退職金の減額、損害賠償の請求 |
| 無断で出社しなくなる | 無断欠勤の扱い | 懲戒解雇、損害賠償の請求 |
| データを削除する | 犯罪になる可能性 | 刑事罰、高額の損害賠償 |
| 顧客情報などを持ち出す | 犯罪になる可能性 | 刑事罰、損害賠償 |
| SNSで暴露する | 名誉毀損になる可能性 | 刑事罰、損害賠償、投稿の削除 |
繁忙期に辞めること自体は法律上問題ない
意外かもしれませんが、「一番忙しい時期に辞める」こと自体は法律上の問題にはなりません。期間の定めのない雇用(いわゆる正社員)であれば、退職の申し入れから2週間がたてば雇用契約は終了すると民法で決まっています。会社の繁忙期かどうかは関係ありません。
ただし、契約社員など期間の定めがある雇用の場合は、原則として契約期間の途中では辞められず、やむを得ない事情が必要になります。自分の雇用形態は事前に確認しておきましょう。
引き継ぎを拒否すると懲戒や損害賠償の可能性がある
引き継ぎについては、法律で「必ずしなければならない」と決まっているわけではありません。ただ、多くの会社は就業規則で退職時の引き継ぎを定めています。退職日までは会社の社員なので、引き継ぎの指示を無視すれば業務命令違反として懲戒の対象になることがあります。
また、退職金規程に「引き継ぎを怠った場合は減額する」といった定めがある会社も少なくありません。損害賠償については、辞めたこと自体で請求が認められるのは難しいとされていますが、わざと何も残さずに辞めて会社に大きな損害が出た場合は、請求される可能性がゼロではありません。
一番やってはいけないのは、退職を伝えずに翌日から来なくなる「バックレ」です。無断欠勤が続けば懲戒解雇の理由になり、後で説明するお金の面でも大きく損をします。
データの削除や情報の持ち出しは犯罪になることもある
リベンジ退職のなかで一番危険なのがここです。会社のパソコンやサーバーのデータを消したり、システムを使えなくしたりして業務を妨害すると、刑法の「電子計算機損壊等業務妨害罪」にあたる可能性があります。罰則は5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金と重く、実際に退職時にデータを消す仕組みを仕込んだ元社員に、数百万円規模の損害賠償が命じられた裁判例もあります。
顧客リストや技術資料などを持ち出して転職先や独立後に使うケースも要注意です。会社が秘密として管理している情報であれば、不正競争防止法の営業秘密の侵害にあたり、刑事罰や損害賠償の対象になることがあります。「自分が作った資料だから」という理屈は、基本的に通りません。
参考:刑法(国民のためのサイバーセキュリティサイト/総務省)
SNSでの暴露は名誉毀損になりうる
「辞めたあとに会社の実態をSNSでぶちまけてやる」という人もいますが、これにもリスクがあります。会社や上司の社会的評価を下げる内容を不特定多数に向けて発信すると、たとえそれが事実であっても名誉毀損にあたる可能性があります。名誉毀損罪は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
刑事罰まではいかなくても、会社から投稿の削除や損害賠償を求められることもあります。実名を出していなくても、内容から誰のことか特定できれば同じです。また、在職中に知った社外秘の情報を書けば、守秘義務違反の問題にもなります。
リベンジ退職で失いかねないお金
法的なリスクと並んで見落とされがちなのが、お金の損です。リベンジ退職で会社に与えたダメージ以上に、自分の手元に残るはずだったお金が減ってしまうケースは珍しくありません。
| お金の種類 | 普通に辞めた場合 | リベンジ退職で懲戒解雇になった場合 |
|---|---|---|
| 失業保険 | 自己都合なら給付制限は原則1か月 | 重責解雇と判断されると給付制限3か月 |
| 退職金 | 規程どおり支給 | 減額・不支給になることがある |
| 最後の給与・有給 | 通常どおり | 損害賠償と相殺を主張されるなど、もめやすい |
懲戒解雇になると失業保険の給付制限が3か月に
自己都合で退職した場合、失業保険(雇用保険の基本手当)には給付制限があります。2025年4月1日以降の退職なら、給付制限は原則1か月です。
ところが、無断欠勤やデータ削除などを理由に懲戒解雇され、ハローワークで「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(重責解雇)」と判断されると、給付制限は3か月に延びます。1か月で受け取れるはずだったお金が、3か月先まで入ってこなくなるわけです。退職後の生活費を考えると、この差はかなり大きいといえます。
参考:令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます(厚生労働省)
退職金が減額・不支給になることがある
退職金は会社ごとの退職金規程にもとづいて支払われます。多くの規程には「懲戒解雇の場合は退職金の全部または一部を支給しない」といった条項が入っています。
実際に全額不支給が認められるかどうかは、それまでの勤務ぶりや行為の悪質さによって判断されますが、会社ともめて支払いが止まれば、取り戻すには時間も労力もかかります。勤続年数が長い人ほど、リベンジ退職で失う金額は大きくなります。
未払い給与や有給休暇をめぐってもめやすくなる
関係がこじれた状態で辞めると、最後の給与や残業代、有給休暇の扱いでトラブルになりやすくなります。会社から「損害が出たから給与と相殺する」と言われるケースもあります。
本来、給与は全額を支払うのが原則で、会社が一方的に損害賠償と相殺することは認められていません。ただ、こちらにも非があると反論しにくいのが現実です。自分の権利をきちんと主張するためにも、相手に付け入るすきを与えない辞め方が大切です。
仕返ししたいほどの不満があるなら「会社都合」になる可能性も
ここからが一番知ってほしいところです。リベンジしたくなるほどの原因がパワハラや長時間残業なら、自分から辞めた場合でも、ハローワークで「特定受給資格者」と認められる可能性があります。いわゆる会社都合退職と同じ扱いです。
特定受給資格者になると、失業保険の給付制限がなくなり、待期期間の7日が過ぎればすぐに支給の対象になります。年齢や加入期間によっては、受け取れる日数も自己都合より多くなります。会社に仕返しをするより、こちらのほうがよほど自分のためになります。
参考:基本手当について(ハローワークインターネットサービス)
| 辞めた理由 | 特定受給資格者になる基準(主なもの) |
|---|---|
| パワハラ・嫌がらせ | 上司や同僚などから、故意の排斥や著しい冷遇、嫌がらせを受けて離職した |
| 長時間の残業 | 離職直前の6か月間に、連続3か月で45時間、いずれか1か月で100時間、または連続2か月以上の平均で月80時間を超える残業があった |
| 給与の未払い | 給与の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった |
| 退職をすすめられた | 会社から直接または間接に退職するよう勧められて離職した |
参考:特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要(ハローワークインターネットサービス)
パワハラや嫌がらせを受けて辞める場合
上司からの暴言や、仕事を与えない、一人だけ無視されるといった扱いを受けて辞めた場合は、上の表の「嫌がらせ」の基準にあてはまる可能性があります。
注意したいのは、離職票の退職理由が会社によって「自己都合」とされていても、それで決まりではないことです。ハローワークで手続きをするときに異議を申し立てれば、本人と会社の双方の言い分や資料をもとに判断してもらえます。そのときに物を言うのが、次に説明する記録です。
長時間の残業が続いて辞める場合
残業の基準は数字ではっきり決まっているので、記録さえあれば比較的判断されやすい項目です。離職前の6か月間の残業時間を、月ごとに確認してみてください。
基準になるのは法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた時間です。サービス残業になっていて、タイムカード上の時間が実態より少ない場合でも、パソコンのログやメールの送信時刻などで実際の労働時間を示せることがあります。
会社都合を認めてもらうための記録の残し方
リベンジ退職を考えるほど追い詰められているなら、辞める前の今のうちに、次のような記録を集めておきましょう。会社への仕返しにエネルギーを使うより、ずっと確実に自分を守れます。
- パワハラの内容を、日時・場所・言われたこと・その場にいた人とあわせてメモする
- 暴言のメールやチャットは、スクリーンショットや印刷で手元に残す
- タイムカードや勤怠システムの記録、給与明細を保管する
- 会社や人事に相談した日時と、その対応内容を記録する
- 心身の不調で病院にかかった場合は、受診記録や診断書をとっておく
なお、記録として残すのはあくまで自分に関わるものにとどめましょう。顧客情報や社外秘の資料までまとめて持ち出すと、先ほどの情報持ち出しの問題になってしまいます。
損をせずに会社を離れるための辞め方
会社を困らせる辞め方をしなくても、ちゃんと辞めることはできます。むしろ、ルールどおりに辞めるほうが、お金の面でも将来のキャリアの面でも自分に有利です。流れとしては次のとおりです。
パワハラや残業の記録は、辞めたあとでは集めにくくなります
正社員なら申し入れから2週間で退職が成立します
口頭でなく資料にまとめれば、関わる時間は短くて済みます
出社せずに退職日を迎えることもできます
パワハラや残業が理由なら、記録を持って相談します
退職は申し出から2週間で成立する
前にも触れたとおり、正社員であれば退職の申し入れから2週間で雇用契約は終わります。就業規則に「1か月前までに申し出ること」とあっても、円満に辞めたいならそれに合わせるのが無難ですが、会社が引き止めて辞めさせてくれない場合は、2週間を目安に考えて大丈夫です。
伝え方に決まりはありませんが、「言った・言わない」にならないよう、退職届やメールなど形に残る方法で伝えておくと安心です。
参考:退職は2週間前でOK?非常識と思われない伝え方・就業規則との関係を解説
残っている有給休暇を使い切る
有給休暇は、退職前でも使える労働者の権利です。会社には、事業に支障がある場合に取得日をずらしてもらう権利(時季変更権)がありますが、退職日を越えて変更することはできません。つまり、退職日までの出勤日を有給で埋めてしまえば、実質的にもう出社しなくていい状態で退職を迎えられます。
職場の人と顔を合わせたくないほど関係が悪化しているなら、引き継ぎ資料をまとめたうえで有給消化に入るのが、会社とも自分とも一番きれいな離れ方です。
心身が限界なら休職や傷病手当金も考える
怒りがおさまらない、眠れない、朝になると体が動かないといった状態なら、すぐに辞めるよりも先に、病院を受診して休職するという選択肢があります。休んでいる間は、健康保険から傷病手当金(おおむね給与の3分の2)を受け取れます。
健康保険に1年以上加入していて、退職日の時点で傷病手当金を受けているか受けられる状態であれば、退職後も引き続き受け取ることができます。ただし、退職日に出勤してしまうと退職後の受給ができなくなるので注意が必要です。
参考:休職したら終わり?「休職するなら退職しろ」と言われる理由、どちらを選ぶべきか解説
自分で言い出せないときの相談先
上司が怖くて退職を切り出せない、辞めさせてもらえないといった場合は、一人で抱え込まずに外部の窓口を頼りましょう。各都道府県労働局や労働基準監督署にある「総合労働相談コーナー」では、パワハラや退職、解雇など労働問題全般の相談を無料・予約不要で受け付けています。
会社と直接やりとりしたくない場合は、退職代行サービスを使うのもひとつの方法です。ただし、未払い賃金の請求など会社との交渉が必要な場合は、弁護士か労働組合が運営するサービスを選びましょう。
リベンジ退職についてよくある質問
繁忙期に辞めたら損害賠償を請求される?
正しい手順で退職を申し入れ、2週間などの期間を守って辞めたのであれば、繁忙期だったことを理由に損害賠償が認められることは基本的にありません。辞めるタイミングを選ぶのは労働者の自由です。問題になりやすいのは、無断で来なくなる、引き継ぎを一切しないなど、手順を守らずに辞めて実際に損害が出たケースです。
引き継ぎをしないで辞めることはできる?
引き継ぎをしなくても退職そのものは成立します。ただ、退職日までは就業規則に従う必要があるため、拒否すると懲戒や退職金の減額につながるおそれがあります。顔を合わせたくない場合は、業務の内容や進み具合、取引先の連絡先などを資料にまとめて渡すだけでも、最低限の引き継ぎとして十分なことが多いです。
辞めたあとに会社から損害賠償を請求されたらどうする?
会社から「損害賠償を請求する」と連絡が来ても、慌てて支払いに応じたり、念書にサインしたりするのはやめましょう。請求が認められるには、会社が実際の損害の額や、その損害が本人の行動によって生じたことを示す必要があり、退職したことだけを理由にした請求は認められにくいとされています。まずは請求の内容を書面で受け取り、総合労働相談コーナーや弁護士に相談してから対応を決めるのが安全です。
退職代行を使うのはリベンジ退職になる?
なりません。退職代行は、本人に代わって退職の意思を会社に伝えるサービスで、正式な退職の手続きのひとつです。会社を困らせることが目的ではなく、自分で言い出せない事情があって利用するのであれば、リベンジ退職とはまったく別物です。
辞めた会社の口コミを書くのは問題ない?
転職口コミサイトに自分の経験や感想を書くこと自体は、すぐに違法になるわけではありません。ただ、事実と違う内容や、個人を特定して攻撃するような書き込みは名誉毀損になる可能性があります。また、在職中に知った社外秘の情報を書くと守秘義務違反の問題にもなります。感情が高ぶっているときは書かず、時間をおいて冷静になってからにしましょう。
まとめ
リベンジ退職は、会社への不満をぶつける辞め方として注目されていますが、ふたを開けてみると損をするのは自分のほう、ということが少なくありません。最後にポイントを整理しておきます。
- 繁忙期に辞めること自体は法律上の問題にならない
- 引き継ぎ拒否や無断欠勤は、懲戒や退職金の減額につながるおそれがある
- データ削除や情報の持ち出し、SNSでの暴露は犯罪になることもある
- 懲戒解雇で重責解雇と判断されると、失業保険の給付制限が3か月に延びる
- パワハラや長時間残業が原因なら、特定受給資格者として給付制限なしで受け取れる可能性がある
- 2週間前の申し出と有給消化を使えば、会社と関わらずに辞めることもできる
会社への怒りを仕返しに使うより、受け取れるお金をしっかり受け取って次に進むほうが、ずっと自分のためになります。退職後に失業保険や傷病手当金をどれくらい受け取れるのか、自分の場合はどうなるのかを知りたい方は、退職コンシェルジュの給付金サポートで確認してみてください。
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