2025.07.10

給付金について

潰瘍性大腸炎で退職したら失業保険はもらえる?その他の支援制度も解説

悩んでいる女性の様子

 

潰瘍性大腸炎の悪化によって退職する場合も、原則的には失業保険の受給が可能です。ただし、失業保険は働ける状態にある求職者への給付となるため、症状が悪化するケースではすぐに失業保険を受け取れない可能性があります。

本記事では、潰瘍性大腸炎で退職した場合の失業保険の受け取り方と、失業保険の概要、すぐに働けない場合の延長申請の可否などについて解説します。

社会保険給付金サポートのお問い合わせはこちら▼

社会保険給付金サポートバナー

 

潰瘍性大腸炎で退職した場合は失業保険はどうなる?

具合が悪そうに携帯を見ている女性の様子

 

潰瘍性大腸炎が原因で退職する場合でも、失業保険の受給条件を満たしていれば、手当を受け取ることが可能です。ただし、失業保険は「就労可能な状態の求職者」を対象とした制度であり、病状が悪化して働けない状態では、すぐに受給できない可能性があります。

そのため、潰瘍性大腸炎の症状が比較的安定していて、転職活動が可能なうちに退職するほうが、スムーズに失業手当を受け取りやすくなります。受給を希望する場合は、タイミングに注意しましょう。

失業保険とは

失業手当(失業保険)は、働く意欲がありいつでも就労できる状態の求職者へ給付を行う雇用保険の制度です。ここでは、失業保険の概要と受給条件、具体的な金額や受給期間を解説します。

失業保険の概要

失業給付は、労働者が失業した場合及び雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に、必要な給付を行うとともに、生活及び雇用の安定を図るための給付です。雇用保険(失業保険)に加入していた人が、失業時に給付を受けられる公的保険制度の一つです。

失業保険の受給条件

失業手当は、退職したすべての人が受給できるのではなく、以下の条件が設けられています。

  • 雇用保険に加入し、保険料を支払っていること
  • 離職前2年間に12ヶ月以上の雇用保険の被保険者期間がある(特定受給資格者や特定理由離職者は1年間に6ヶ月以上)
  • 就労の意志と能力があり、求職活動を行っていること

 

なお、給付額は失業前の給与額と年齢によって変動します。また、詳しくは後述しますが、給付開始までの期間は退職理由によって異なります。

潰瘍性大腸炎を理由に退職する場合に、失業保険を受け取れるかどうかを調べるには、まずは自分が雇用保険にどの程度の期間加入しているのかを確認することが大切です。

失業保険の受給金額

失業保険の具体的な受給額は、次の計算式で算出されます。

失業保険の受給総額=給付日数 × 基本手当日額

具体的な計算手順は以下のとおりです。

  • 賃金日額の計算方法:退職前6ヶ月の賃金合計 ÷ 180
  • 基本手当日額の計算方法:賃金日額 × 給付率
  • 基本手当総額の計算方法:基本手当日額 × 給付日数

 

「基本手当日額」は、雇用保険で定められた1日当たりに受給できる金額のことです。退職前の6ヶ月間の賃金(賞与を除く賃金総額)を180で割った「賃金日額」に、50〜80%の給付率をかけて算出します。一般的な受給額は、離職前の賃金の5〜8割程度が目安となります。

なお、給付額のバランスをとるために、給付率は離職時の年齢や退職前の賃金により異なり、賃金が低いほど給付率が高くなる仕組みが採られています。

失業保険の受給期間

雇用保険の受給期間は、原則として離職日の翌日から1年間となり、所定給付日数が330日の場合は1年と30日、360日の場合は1年と60日です。

ただし、就労できる状態であることが受給の条件となります。そのため、病気、けが、妊娠、出産、育児等で30日以上働けない場合は、その期間分だけ受給期間を延長可能です。なお、延長できる期間は最長4年間になります。

潰瘍性大腸炎ですぐに働けない場合は失業保険の延長申請ができる

潰瘍性大腸炎の影響で、退職後すぐに働けない場合は、前述の「病気で30日以上働けない場合」に該当します。そのため、失業保険の「受給期間延長申請」が可能で、最大で4年まで延長できます。

延長申請は、退職日の翌日から30日を経過した日以降、延長後の受給期間が終了する日までの間であれば可能です。

受給期間を延長するには、医師の診断書を添えてハローワークに申請します。病気により「すぐに働けない状態である」ことを証明するために、かかりつけの医師に診断書など、健康状態を証明する書類を発行してもらいましょう。

潰瘍性大腸炎で仕事を辞めた場合は自己都合退職になる?

失業保険の受給に際しては、退職理由が自己都合か会社都合かによって受給期間や給付開始までの待期期間が異なります。潰瘍性大腸炎で仕事を辞めるケースがどちらに該当するかを判断するために、それぞれの退職理由について理解しておきましょう。

自己都合退職とは

自己都合退職とは、労働者自身の意思や個人的な事情により退職することを指します。具体的には、転職、結婚、出産、介護、家庭の事情、キャリアチェンジなど、労働者の自主的な理由で退職する場合が該当します。

自己都合退職の場合は、失業保険の給付条件が会社都合退職とは異なる点に注意が必要です。そもそも、失業保険の受給には申請後7日間の待期期間が設けられます。自己都合退職の場合は、待期期間に加え、原則としてさらに1ヶ月待たなければなりません。

なお、潰瘍性大腸炎の症状が軽く、業務に支障がないうちに退職する場合は、自己都合退職として扱われます。

会社都合退職とは

会社都合退職とは、企業側の事情によって従業員が退職せざるを得なくなった場合を指します。リストラや事業の縮小、倒産、解雇のほか、退職を促される「退職勧奨」、過重労働や賃金未払い、ハラスメントなど、本人に責任がない理由で退職するケースが該当します。

潰瘍性大腸炎については、直接的な発症原因は明らかではないものの、職場での過度なストレスやハラスメントが一因となって発症したと考えられる場合、会社都合退職として認められる可能性があります。

会社都合退職では、失業保険の給付条件が自己都合退職よりも優遇され、1ヶ月の給付制限期間は設けられません。また、手当の受給期間も長く設定されています。

特定理由離職者とは

特定理由離職者とは、やむを得ない事情によって自ら退職した人が対象となる制度で、自己都合退職でありながら、失業保険の面で一定の優遇を受けられる仕組みです。たとえば、家族の介護、配偶者の転勤、健康上の理由などが該当します。

潰瘍性大腸炎の場合、病状が悪化して長期間の治療や入院が必要になり、働き続けることが難しくなったときは、特定理由離職者として認められる可能性があります。

特定理由離職者と認定されるには、医師の診断書とハローワークでの申告が必要です。認定されれば、給付制限なしで失業保険を受け取ることができ、また、通常より短い被保険者期間でも受給資格が得られる場合があります。

潰瘍性大腸炎の人が受け取れる可能性のある傷病手当金とは

潰瘍性大腸炎にかかった場合、失業保険以外に傷病手当金を受け取れる可能性があります。傷病手当金とは、会社員や公務員などが加入する健康保険から支給される制度です。病気やけがが原因で働けなくなったときに生活を支えるために支給されます。

ここからは、傷病手当金の概要と具体的な金額、受給期間、申請方法を解説します。

傷病手当金の受給条件

傷病手当金は、業務外の病気やけがで働けなくなったときに、収入を補うための制度です。受給には、以下の条件をすべて満たす必要があります。

  1. 業務外の理由で病気やけがをしていること
    仕事中や通勤中のケガ(労災対象)や、美容整形など健康保険の対象外の治療は対象外です。
  2. 療養のために労務不能であること
    これまで従事していた業務を行うことが難しい状態である必要があります。医師の診断や仕事内容をもとに判断されます。
  3. 連続して4日以上仕事を休んでいること
    最初の3日間(待期期間)は無給となり、4日目以降から支給対象となります。
  4. 会社から給与の支払いがないこと
    給与が出ている間は支給対象外となりますが、一部のみ支給されている場合は、その差額が傷病手当金として支給されます。

傷病手当金の受給金額

傷病手当金の1日当たりの金額は、以下の計算式で求められます。

支給開始日以前の継続した12ヶ月間の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 3分の2

算出した1日あたりの金額に基づいて、受給期間の分だけ傷病手当金は支給されます。

傷病手当金の受給期間

傷病手当金が支給されるのは、病気やケガで休んだ期間のうち、最初の3日間の待期期間を除いた4日目からです。ただし、受給期間は、手当の支給日数が合計して1年6ヶ月になるまでと定められています。

なお、退職後に健康保険の資格を喪失した場合であっても、保険の加入期間が継続して1年以上あれば、傷病手当金を受給できる可能性があります。会社で加入している組合によって取り扱いのルールが異なるため、専門家に確認を行うようにしましょう。

傷病手当金の申請方法

傷病手当金の申請は、次の手順で進めます。

  1. 「健康保険傷病手当金支給申請書」を用意し記入する
  2. 勤務先と医療機関に必要な項目を記載してもらう
  3. 必要書類を揃え健康保険組合に提出する

傷病手当金と失業保険は同時にもらえる?

傷病手当金と失業保険は同時にもらうことはできません。傷病手当金は「働けない人」が受け取る制度で、失業保険は「働く意思がある人」が受け取る制度であるためです。両方を同時に受給することはルール上不可能となっています。

ただし、同時でなければ両方を受給することは可能です。詳しくは後述しますが、こちらの記事も参考にしてください。

傷病手当金をもらって退職しても失業保険をもらうことはできる?

傷病手当金と失業保険を両方受給する方法

傷病手当金と失業保険を両方受給するには、受給する時期を分け、失業保険の受給期間を延長する方法が挙げられます。

受給する時期を分ける

傷病手当金と失業保険は、時期を分けることで両方を受給可能です。退職後すぐに求職活動ができない場合は、傷病手当金を優先するのが一般的です。傷病手当金の支給が終わった後に失業保険を申請すると良いでしょう。

ただし、失業保険には受給可能期間があるため、事前に「受給期間延長」の手続きをしておくことをおすすめします。

失業保険の受給期間を延長する

失業保険の受給期間は、最大で4年間に延長可能です。傷病手当金を受給している間に、失業保険の受給期間延長を申請しておくと、あとから失業保険を受け取れます。

受給延長申請をしない場合は、失業保険をもらえなくなる可能性があるため、必ず延長申請を行いましょう。

傷病手当金から失業保険に切り替えるタイミング

傷病手当金から失業保険に切り替えるタイミングの判断基準となるのが、重要なのが退職後29日以内に働けるかどうかです。

退職後29日以内に働ける場合

退職後すぐに働ける場合は、傷病手当金の受給は終了して、失業保険を申請しましょう。ただし、自己都合退職で特定理由離職者に該当しないケースで1ヶ月の給付制限がある場合、傷病手当金の受給終了後、すぐに収入がない期間が発生するため注意が必要です。

ハローワークでの手続きを早期に行い、できるだけ早く給付を開始することが重要です。

退職後30日以上、働けない場合

退職後30日以上にわたって働けない場合は、傷病手当金を継続受給できます。後日、失業保険を受給するために、「受給期間延長」を申請しておき、回復後に失業保険を受給すると良いでしょう。

傷病手当金の受給が終了し、就労可能な状態に回復した状態で求職活動を開始すると、失業保険の受給資格を得られます。

潰瘍性大腸炎の人が使えるその他の支援制度

相談を受けている女性

 

潰瘍性大腸炎にかかった場合、失業保険や傷病手当金以外にも活用できる支援制度があります。

障害年金

潰瘍性大腸炎の症状が重度で日常生活や就労に支障がある場合は、障害年金の対象になる可能性があります。

初診日から一定の保険加入期間を満たしていれば、障害等級に応じて年金が支給されます。原則として、初診日の前日時点で国民年金や厚生年金に加入していることが条件です。

ただし、障害認定基準は厳しく、医師の診断書や日常生活の状況が重要な判断材料になるため、医師に「障害年金用の診断書」を依頼する必要があります。

医療費助成制度

潰瘍性大腸炎は「指定難病」に認定されており、一定の医療費が助成される制度が設けられています。医療費助成制度を利用すると、対象医療機関での治療費が自己負担上限額まで軽減されます。

この制度は、所得に応じて自己負担上限額が変動する仕組みで、申請には医師の診断書と書類が必要です。上限は、月額2,500円〜30,000円程度とされています。

指定難病に認定されるには、病状の重症度が一定以上であることが必要で、審査があります。軽度の場合は対象外となることもあるので、事前に医師に相談し、認定される状態であるかどうかを確認しましょう。

自治体の福祉制度や就労支援サービス

自治体によっては、通院交通費助成、障害者手帳交付、在宅支援などの福祉制度を実施していることがあります。居住している市区町村にどのような福祉制度が設けられているかは、市区町村の保険窓口や自治体の公式サイト、地域福祉センターなどで確認してください。

また、ハローワークや地域障害者職業センターでは、難病患者向けの就労相談や職業訓練を行っています。就職支援員が体調に配慮した職場探しをサポートしてくれるため、就労に向けて活用すると良いでしょう。

ただし、制度によっては、診断書や障害者手帳の提示が必要で、申請条件が細かく規定されているケースもあります。利用できる支援が限られていることもあるため、早めの情報収集が重要です

まとめ

潰瘍性大腸炎を理由に退職する場合、失業保険の受給条件を満たしていれば失業手当をもらうことができます。ただし、失業保険は就労可能な人が受給できる手当であるため、潰瘍性大腸炎の症状が悪化していて就労が難しい状態では、受給できない可能性があります。

失業保険を受け取るには、必要書類の準備や、ハローワークへ出向いて手続きを行う必要があります。一方で、傷病手当金などの受給とどちらを優先すべきか、どのように申請すれば良いのかと悩む方もいるでしょう。

「社会保険給付金サポート」では、支援実績のある専門スタッフによる申請手続きのサポートを提供しております。失業保険についての詳細を知りたい方や手続きに不安を感じる人はぜひご利用ください。

社会保険給付金サポートのお問い合わせはこちら▼

社会保険給付金サポートバナー

 

この記事の監修者

杉山雅浩

スピネル法律事務所 弁護士

東京弁護士会所属。
池袋中心に企業顧問と詐欺被害事件に多く携わっています。
NHKやフジテレビなど多くのメディアに出演しており、
詐欺被害回復などに力を入れている個人に寄り添った弁護士です。

YouTubeの他、NHK、千葉テレビ、テ日本テレビ、東海テレビ、FM西東京、フジテレビ、共同通信社、時事通信社、朝日新聞、朝日テレビ、読売新聞、日本経済新聞、毎日新聞、TBS、CBCテレビ、名古屋テレビ、中日新聞その他数多くのネット記事、週刊誌多数のメディアに取材されたり、AbemaTV、NHKスペシャル、クローズアップ現代、バイキングモア、おはよう日本、など有名番組に出演してます!

テーマ

新着記事