2025.12.01
精神疾患について
適応障害で傷病手当金はもらえる?受給するメリット・デメリットと申請方法

適応障害と診断され、仕事を休まざるを得なくなったとき、「収入はどうなるのだろう」という不安を抱えている方も少なくありません。
実は、適応障害を含む精神疾患でも、条件を満たせば傷病手当金を受給し、生活費の不安を軽減しながら治療に専念できます。
本記事では、適応障害で休職する際に知っておくべき傷病手当金の基本的な仕組み、支給条件、メリット・デメリット、具体的な申請の流れを解説します。傷病手当金と併せて押さえたい給付金制度も紹介するので、適応障害で休職を考えている方はぜひ参考にしてみてください。
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適応障害で休職する場合も傷病手当金を受け取れる可能性がある

適応障害を含む精神疾患であっても、健康保険の加入者で、医師が就労不能と判断すれば、傷病手当金を受け取ることは可能です。しかし、受給するためには、制度の基本的な仕組みや条件を正しく理解し、スムーズに申請を進めることが重要です。
そこでまずは、適応障害で休職する際に知っておくべき傷病手当金の基本的な知識として、「制度の概要」「支給期間と申請期限」「支給額の計算方法」について解説します。
傷病手当金とは
傷病手当金とは、健康保険に加入している人が病気やケガで働けなくなったときに、一定の条件を満たすと給付金が支給される制度です。
支給対象となる傷病の種類は限定されていないため、医師が働けないと判断すれば、適応障害やうつ病などの精神疾患でも受給できます。
支給期間と申請期限
傷病手当金の支給期間は、支給開始日から通算1年6か月です。同じ傷病で受給する場合は、途中で出勤した日があっても、その後再び働けない日があれば受給できます。つまり、支給対象となる日が合計1年6か月になるまで受給可能です。
また、傷病手当金の申請期限は、労務不能日の翌日から2年間です。期限を過ぎると条件を満たしていても受給できなくなるため、速やかに申請しましょう。
支給額の計算方法
原則として、以下の計算式で算出された金額が支給額となります。
傷病手当金の日額=支給開始日以前の継続した12か月間の標準報酬月額の平均額÷30日×3分の2
ただし、支給開始日以前の健康保険の加入期間が12か月未満の場合は、標準報酬月額の平均額の求め方が異なります。直近の標準報酬月額の平均額か、各健康保険組合で算出された平均値のうち、どちらか低い方を使って計算します。
適応障害で傷病手当金が支給される条件
適応障害で療養が必要な場合に、傷病手当金が支給される条件は以下の4つです。
- 業務外の事由による適応障害で休業が必要であること
- 仕事に就けないこと
- 連続3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業期間に給与の支払いがないこと
ただし、給与の支払いがあっても、傷病手当金より少ない場合は差額が支給されることがあります。
適応障害で傷病手当金がもらえないケース
適応障害で休職し、傷病手当金の受給資格がある場合でも、状況によっては支給を受けられない、または支給額が調整されることがあります。「休職したから必ずもらえる」わけではないため、事前に不支給となる条件を把握しておくことが重要です。
ここでは、適応障害で休職したにもかかわらず、傷病手当金が不支給になったり、支給額が調整されたりする具体的なケースについて解説します。
労災保険の休業補償給付の対象になるとき
適応障害が業務によって発生した場合は、労災保険の休業補償給付の対象になるため、傷病手当金は受け取れません。
例えば、上司や同僚のハラスメント、人間関係のトラブル、過重労働など業務に起因する場合が該当します。この場合は、労災保険の休業補償給付の申請が必要です。
給与などの報酬を受け取っているとき
休職期間中に給与などの報酬を受け取っているケースでは、傷病手当金がもらえないことがあります。
ただし、支払われた報酬が傷病手当金より少ないときは、差額が支給されます。傷病手当金の支給に影響する報酬とは、給与のほか、出勤の有無にかかわらず支払われる通勤手当や住宅手当などの手当です。
退職後に条件を満たしていないとき
退職後に初めて傷病手当金をもらうことや、在職中から継続して受給することも可能ですが、以下の条件を満たす必要があります。
- 退職日までに健康保険の被保険者期間が継続して1年以上ある
- 退職日に傷病手当金を受けている、または受ける条件を満たしている
- 退職日に出勤していない
特に注意したいのが、退職日の出勤状況です。退職日に挨拶するためや私物を持ち帰るためなど、短時間でも出勤すると条件を満たさないことがあることに注意しましょう。
適応障害で傷病手当金を受給するメリット
適応障害の人が傷病手当金を受給するメリットは、生活費の不安を軽減して療養に専念できることです。
症状の程度にもよりますが、適応障害になると仕事に集中できなかったり、動悸やめまいなどで通勤できなかったりと、外見は元気に見えても労務不能になることがあります。だからといって、給付金をもらわず自宅療養すると、収入が途絶えて経済的な不安を感じながら過ごすことになってしまいます。
傷病手当金を受給すれば、毎月の給与と同じように安定して給付金が支給されるため、経済的な不安を抱えながら療養することを避けられることが魅力です。
適応障害で傷病手当金を受給するデメリット
適応障害による休職中の生活を支える傷病手当金ですが、受給する際はいくつかの留意点や、将来的な影響が存在します。これらの「デメリット」を事前に把握しておかないと、予期せぬストレスや不利益につながる可能性があるため、ここで詳しく解説します。
会社を通じて申請する必要がある
傷病手当金を受給するためには、申請書の入手・記入・提出などは基本的に会社を通じて行います。
申請書には事業主欄が設けられており、勤務状況や出勤していない日の報酬額など会社の証明が必要です。対応するのは人事部や総務部、労務担当者のため、通常であれば上司や同僚に知られる可能性は低いと考えられます。
しかし、適応障害でそもそも人と接すること自体にストレスを感じる場合は、会社とやり取りして申請することが難しいと感じる方も少なくありません。
支給期間を過ぎるともらえなくなる
前述のとおり、傷病手当金は同一の傷病で引き続きもらえる最大期間は1年6か月です。適応障害で支給期間をすべて受給した後は、以下の条件を満たさないと再び受給できない可能性があります。
- 医師に「全治」または「完治」と判断され、療養を中止・終了していたこと
- 自覚的・他覚的に症状がないこと
- 労務可能になった後の健康状態が良好だった期間が十分にあること
反対に、上記の条件を満たせば再度受給することも可能です。
生命保険の加入に影響する可能性がある
適応障害で休職していた場合、生命保険の加入に影響する可能性があります。ただし、傷病手当金を受給していたかは関係なく、適応障害の病歴の有無が重要です。
生命保険に加入する際は、過去から現在までの健康状態を嘘偽りなく申告する告知義務が発生します。加入の際、適応障害の病歴を隠して加入すると、告知義務違反となり保険金が支払われなかったり、契約解除となったりすることがあります。
しかし、加入の際に病歴を正直に申告した場合、適応障害を理由に生命保険に加入できない可能性がある点に留意しましょう。
就職活動が不利になることがある
傷病手当金の受給歴が、直接将来の就職活動に影響することはほとんどありません。
ただし、面接の際に病歴や休職の理由を聞かれる可能性はあるため、答え方によっては不利になることがあります。履歴書に病気で休職した期間を書く義務はなく、原則として入社年月日と退職年月日のみでよいため、在職中の休職はあえて言う必要はありません。
適応障害で傷病手当金をもらわない方がいいケース
傷病手当金は適応障害で働けないときに経済的な安定を助けてくれる制度ですが、前述のようにデメリットもあります。このデメリットを踏まえて、適応障害で傷病手当金をもらわない方がいい2つのケースを紹介します。
短期の休職で復帰できる見通しがあるとき
適応障害による休職から短期間で復帰できる見通しがある場合は、傷病手当金を受給しない選択肢もあります。
傷病手当金には支給期間があり、原則として期間を超えて受給を続けることはできません。そのため、すぐに職場復帰できて生活費の不安が少ない状況であれば、万が一の長期療養に備えて今は支給期間を残しておくことも可能です。
しかし、将来的に受給するかどうかは予想しにくいことも事実です。一度受給した場合でも、条件を満たせば同じ傷病で受給することも可能なため、現時点で経済的な不安がある場合は受け取っておくとよいでしょう。
また、申請期限内であれば、後から申請することも可能です。すぐに給付金が必要ない場合は、タイミングを見て申請するのも一つの選択肢です。
退職して再就職する予定のとき
休職後、退職して再就職することが決まっている場合は、傷病手当を受け取らないでおくこともできます。
傷病手当金の手続きには手間がかかるため、申請に時間をかけるより再就職先の仕事を覚えたり、スキルを身につけたりする方に集中したいケースなどは受給しない選択肢もあります。
前述の通り、労務不能日の翌日から2年以内であれば申請可能なため、判断を先延ばしにしておくのもよいでしょう。傷病手当金でいくらもらえるのか、申請にどれくらい手間がかかるかを総合的に判断することが大切です。
適応障害で傷病手当金を受給する流れ
適応障害で傷病手当金を受給する流れは、その他の傷病と大きな違いはありません。主に以下の流れで手続きを進めます。
- 心療内科や精神科を受診する
- 会社に休職することを相談する
- 3日間の待期期間を成立させる
- 傷病手当金支給申請書をもらう
- 申請書を作成する
- 健康保険組合に申請書と添付書類を提出する
- 支給決定後に支給額が振り込まれる
ここでは、受給の手順を一つずつ詳しく解説します。
<h3>心療内科や精神科を受診する
精神的な不調により業務に影響を与えると判断した場合は、速やかに心療内科や精神科を受診しましょう。
傷病手当金の受給には初診日が関わるため、体調に異変を感じたら早めに診察を受けておくと、その後の手続きがスムーズに進められます。
会社に休職することを相談する
医療機関で適応障害と診断され、仕事を休んで療養が必要だと判断されたら、その旨を会社に伝えます。
無断欠勤や理由を伝えずに休むと心証が悪くなるため、理由と医師からの診断内容を明確に伝えることが重要です。相談の時点で、ある程度まとまった期間の療養が必要と診断されている場合は、傷病手当金の手続きについても相談しておくとよいでしょう。
3日間の待期期間を成立させる
傷病手当金を受け取るためには、3日間の連続した休業が必要です。待期期間は、原則として有給休暇や土日祝日などの公休も含まれます。
途中で出勤してしまうと待期期間が成立しないため、成立するまでは休業することが求められます。成立後は出勤日を挟んだとしても、休業4日目から傷病手当金の支給対象です。
傷病手当金支給申請書をもらう
傷病手当金をもらうことが決まったら、会社から傷病手当金支給申請書を受け取ります。申請書の書式は健康保険組合によって異なるため、加入している健康保険のものを入手しましょう。
療養が長期化する予定であれば、複数枚もらっておくと毎回受け取る手間がなくなります。
申請書を作成する
申請書には、「本人」「医師」「会社」の三者が記入する欄があります。一般的には、次の手順で申請書を完成させます。
- 医療機関で医師記入欄に記入してもらう
- 本人記入欄を埋める
- 会社に事業主欄を記入してもらう
傷病手当金は、申請する期間を経過後から申請できるため、申請書を依頼するタイミングに注意しましょう。
健康保険組合に申請書と添付書類を提出する
申請書の準備が完了したら、加入している健康保険組合に申請書を提出します。在職中は、会社を通じて提出するのが一般的です。
通常、期間中に給与の支払いやその他の給付金を受け取っていなければ、提出するのは申請書のみです。ただし、状況に応じて添付書類が必要になることがあります。
支給決定後に支給額が振り込まれる
健康保険組合が申請内容を審査し、支給決定となると、指定の口座に支給額が振り込まれます。その後は、休業期間が終了するまで申請と受給を繰り返します。
適応障害の人が傷病手当金以外で支援を受けられる制度

適応障害で傷病手当金を受給しない場合や、支給条件を満たさなかった場合など、他の支援制度を活用できる可能性があります。傷病手当金の受給中に、併用して利用できる制度もあるため、ここで確認しておきましょう。
自立支援医療制度
自立支援医療制度とは、心身の障害により医療機関を利用する人の医療費負担を軽減する公費負担医療制度です。
医師の診断があれば、適応障害で医療機関を受診したり、投薬治療を受けたりするときの医療費を軽減できます。通常、医療費の自己負担額は3割ですが、自立支援を使うと1割負担で適応障害に対する治療を受けられることが特徴です。
ただし、登録した医療機関以外を受診した場合や、その他の傷病の医療費は、通常通り3割負担となります。
労災保険の休業補償給付
人間関係のトラブルやハラスメントなど、適応障害を発症した原因が業務にある場合は、傷病手当金ではなく労災保険の休業補償給付の対象です。
労災保険は、業務や通勤中に起因する病気やケガに対して、本人や遺族に給付金が支払われる公的保険制度です。労災保険のうち休業補償給付は、業務上や通勤中の疾病・負傷で働けなくなったときに支給されます。
失業保険
雇用保険の基本手当(失業保険)は、退職後に再就職を目指す人が受け取れる給付金です。傷病手当金とは併用できません。
適応障害の症状が緩和されて労務可能と判断されると、傷病手当金の支給は終了します。退職後に一定の条件を満たせば、失業保険を受給できます。
また、雇用保険の失業等給付に含まれる「傷病手当」は、社会保険の「傷病手当金」とは異なることに注意しましょう。雇用保険の傷病手当は、退職後に病気やケガで働けなくなったときに、一定の条件を満たすと失業保険と同額の失業手当を受け取れる制度です。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳とは障害者手帳の1種で、適応障害などで一定程度の障害があると認定する書類です。自立と社会参加促進を図る制度で、手帳を活用すると以下のようなさまざまな支援を受けられます。
- 所得税・住民税・相続税の障害者控除
- 携帯電話の使用料割引
- 公共交通機関の運賃割引
まとめ
本記事では、適応障害で休職する際の傷病手当金について、その仕組み、受給条件、不支給となるケース、メリット・デメリット、そして申請の流れを詳しく解説しました。傷病手当金は、療養中に収入を確保し、経済的な不安を軽減してくれる制度です。
しかし、申請手続きには会社や医師とのやり取りが必要で、受給条件や期限を正しく把握し、準備を進める必要があります。特に、適応障害の場合は、症状から思うように手続きを進められない方も少なくありません。
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この記事の監修者
杉山 雅浩
スピネル法律事務所 弁護士
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