2025.09.04

精神疾患について

パワハラの証拠がない場合でも失業保険はもらえる?手続きの流れを徹底解説

パワハラを受けている様子

パワハラが原因で退職した、退職する予定の人のなかには、証拠がないために失業保険がもらえるのか不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、パワハラの証拠がなくても失業保険を受給できるケースや会社都合による退職と認定してもらう方法、必要書類や手続きの流れを解説します。

社会保険給付金サポートのお問い合わせはこちら▼ 社会保険給付金サポートバナー

パワハラの証拠がなくても失業保険を受け取れる?

パワハラの証拠がなく途方に暮れる女性
パワハラの証拠がなくても、退職後に失業保険を受け取れるのでしょうか。また、退職理由がパワハラだと認められると、どのようなメリットがあるのか解説します。

パワハラの証拠がない場合も失業保険は受給できる

結論として、パワハラの証拠がなくても条件を満たせば、失業保険は受給可能です。

失業保険は、失業者の生活を安定させるために支給される給付金で、正式には「雇用保険の基本手当」を指し、「失業手当」と呼ばれることもあります。就職の意欲があり、すぐにでも働ける人であれば、転職など自己都合による退職でも失業保険を受給できます。

ただし、原則として離職日以前の2年間に通算12か月以上雇用保険に加入していた実績が必要です。

パワハラが認められると失業保険の受給に有利

パワハラで退職すると離職理由が「会社都合」となり、失業保険の給付開始が早くなったり、支給日数が多くなったりするなど、その他の失業者と比べて優遇されることがメリットです。さらに、受給の条件が「雇用保険の加入期間が離職日以前の1年間のうち通算6か月」と緩和されます。

パワハラの証拠がない場合は「自己都合」と判断されることがあり、パワハラによる退職と認定された場合と比較して、失業保険の支給日数が少なくなることがあります。

ただし、証拠がなく「自己都合」として退職せざるを得なかった場合でも、後から必要書類を提出すれば「会社都合」に変更することも可能です。状況によっては「特定理由離職者」とみなされる可能性もあり、パワハラの場合と同様に条件が「離職前1年間に通算6ヶ月以上」に緩和されます。

離職理由による失業保険の支給条件の違い

パワハラなど会社都合による退職と、転職など個人的な都合での自己都合退職は、失業保険の支給条件に違いがあります。

給付開始の時期

失業保険は受給申請後に7日間の待期期間が設けられており、期間終了後から給付が開始されます。自己都合での退職は待期期間後に1か月の給付制限がかかるため、実際に受給できるのは申請から1か月以上先になるのが一般的です。

一方、パワハラなど会社都合で退職した人は、1か月の給付制限を受けないため、待期期間後から受給できます。

給付日数

失業保険は離職理由や雇用保険の加入期間、離職時の年齢によって支給される日数が異なります。自己都合退職の場合、20年以上加入していても給付日数は150日が最長です。

パワハラによる退職と認められると、以下の表のように最長で330日分が給付されます。

離職時の年齢

雇用保険の加入期間

1年未満

1年以上5年未満

5年以上10年未満

10年以上20年未満

20年以上

30歳未満

90日

90日

120日

180日

30歳以上35歳未満

120日

180日

210日

240日

35歳以上45歳未満

150日

240日

270日

45歳以上60歳未満

180日

240日

270日

330日

60歳以上65歳未満

150日

180日

210日

240日

参考:ハローワークインターネットサービス|基本手当の所定給付日数

パワハラの証拠がない場合に「会社都合退職」と認めてもらう方法

パワハラと認められる主な証拠には、録音データやメールなどが挙げられます。

ただし、決定的な証拠がない場合でも、証言やメモ、医師の診断書などが証拠として認められることがあるため、ここでは「会社都合」での退職と認めてもらう方法を解説します。

複数の証人から証言を集める

紙面やデータとして証拠が残っていないときは、証人に証言してもらうことでパワハラによる退職と認められることがあります。証言を証拠にする際は2人以上の複数の証人が求められるため、パワハラの事実を知っている上司や同僚に協力してもらえるように依頼します。

証言の依頼はあくまでお願いする形になるため、断られる可能性があることに注意が必要です。証人がいない場合や証言してもらえない場合は、別の方法でパワハラを認めてもらえないか検討しましょう。

パワハラの内容を記した日記やメモを準備する

パワハラに関する録音データやメールなどの客観的な証拠がない場合、問題の言動があった日時や内容を記したメモや日記があれば、証拠として活用できる可能性があります。

紙に書かれたメモでなくても、スマホのメモでも証拠になることがあるため、失業保険の受給決定までは消さないように保存しておきましょう。

医師の診断書やカルテを請求する

パワハラによって心身にダメージを受けて医療機関を受診した場合、医師に作成してもらった診断書が事実の根拠になることがあります。

医療機関のカルテに、受診時の訴えや症状などが詳細に記載されていれば、カルテを開示請求して証拠にすることも可能です。ただし、開示請求には手数料やコピー代などの費用が発生します。

パワハラの証拠がないときに離職理由を変更する流れ

 

失業保険の支給条件にかかわる離職理由は、会社から受け取る離職票に記載されています。パワハラの証拠がなく会社が「自己都合」として処理した場合は、離職理由が「会社都合」になっていないことがあります。

会社が「自己都合」として離職票を発行していても、ハローワークで手続きしてパワハラが原因で退職したと認めてもらえれば、「会社都合」に変更できるケースがあります。離職理由を変更する場合、通常の失業保険の手続きとは手順が異なるため、流れを把握しておくことが重要です。

STEP1:異議申し立ての手続きを開始する

まず、会社から受け取った離職票と証拠になり得る書類を準備します。

退職届にパワハラが原因で辞めることを書いた場合、証拠と認められる可能性があるため、コピーがあれば用意しておきましょう。個人的な日記やメモでも、パワハラの日時や内容が書かれていれば証拠と認めてもらえることがあります。

会社から受け取った離職票の本人判断欄を「異議あり」にし、離職者記入欄で該当する離職理由に印をつけて、具体的な内容を記入します。書類が準備できたら、ハローワークの窓口で異議申し立ての手続きをして手続きは完了です。

STEP2:ハローワークが調査する

離職理由の異議申し立てが行われると、ハローワークが調査に入ります。

本人の申し出や関係者の証言、客観的な証拠をもとに、会社側にも確認を取り、双方の意見を聞いてハローワークが最終的な判断を下します。

STEP3:会社都合として認定される

証拠が十分でパワハラによる退職と判断された場合、離職理由の変更が認められます。

異議申し立ての結果が通知されるまでの期間は明確にされておらず、調査が長引くこともあることに留意しましょう。

失業保険の受給申請を行う

離職理由が変更された離職票を入手したら、通常どおり失業保険の申請手続きを進めます。申請では、離職票のほかに雇用保険被保険者証などの書類が必要です。

パワハラの証拠がないときは別の選択肢も視野に入れる

証拠がないため別の手段を取ろうとする男性
パワハラの証拠がない場合でも、「自己都合」による退職として失業保険の受給は可能です。しかし、離職理由が自己都合だと給付日数が少なくなるなど、会社都合の場合より条件が厳しくなります。

失業保険以外にも退職後に活用できる給付金があるため、別の制度を利用できないか検討し、もらえる金額が増えるように手続きすることが大切です。

失業保険以外の給付金を利用する

失業保険以外にもらえるお金として、主に以下の給付金が挙げられます。

  • 傷病手当金:社会保険の加入者が業務外の傷病で一定期間以上休職するときに支給される。
  • 技能習得手当・寄宿手当:再就職の支援を目的とし、職業訓練に参加した人に支給される。
  • 職業訓練給付金:雇用保険に未加入の求職者が職業訓練を受けるときに支給される。
  • 住居確保給付金:離職による収入の減少で住居の維持が困難な人に支給される。

 

各制度を利用するためには、それぞれ支給条件に該当するかを確認し、必要書類を集めて手続きする必要があります。

退職サポートを活用する

失業保険やその他の給付金は手続きが複雑なため、退職サポートを活用する方法もあります。利用できる制度を一人ひとりに合わせて提案してもらえるため、自分で調べる手間も省けてスムーズに給付金を受け取れることが特徴です。

まとめ

パワハラの証拠がない場合でも、一定の条件を満たせば失業保険は受給可能です。証言や日記、診断書など客観的な証拠を用意できれば、会社都合による退職と認定され、給付条件が優遇されます。

また、失業保険以外にも失業により支援が必要な人のための給付金制度が多くあります。

「自分がもらえる給付金はあるの?」「どうやって手続きしたらいいの?」と不安を抱えている方は、「社会保険給付金サポート」の利用がおすすめです。個々の事情に応じて、利用できる給付金の手続きを丁寧にサポートいたします。

社会保険給付金サポートのお問い合わせはこちら▼ 社会保険給付金サポートバナー

この記事の監修者

杉山雅浩

スピネル法律事務所 弁護士

東京弁護士会所属。
池袋中心に企業顧問と詐欺被害事件に多く携わっています。
NHKやフジテレビなど多くのメディアに出演しており、
詐欺被害回復などに力を入れている個人に寄り添った弁護士です。

YouTubeの他、NHK、千葉テレビ、テ日本テレビ、東海テレビ、FM西東京、フジテレビ、共同通信社、時事通信社、朝日新聞、朝日テレビ、読売新聞、日本経済新聞、毎日新聞、TBS、CBCテレビ、名古屋テレビ、中日新聞その他数多くのネット記事、週刊誌多数のメディアに取材されたり、AbemaTV、NHKスペシャル、クローズアップ現代、バイキングモア、おはよう日本、など有名番組に出演してます!

テーマ

新着記事