2025.11.19
社会保険について
妊娠悪阻で傷病手当金が「もらえなかった」理由を徹底解説|よくある落とし穴と確認ポイント

妊娠悪阻は、一般的につわりと混同されやすいものの、実際は強い吐き気や嘔吐、脱水などが続き、仕事を続けるのが難しくなることも珍しくありません。
そのため、休職が長引くと「傷病手当金を利用できるのか?」という疑問が自然と生まれます。
しかし、いざ申請してみると
「妊娠悪阻で休んだのに支給されなかった」「自分のケースは対象外と言われた」
といった結果になることもあります。
背景には、制度上の要件や申請書の書き方、医師の判断など、いくつかつまずきやすいポイントがあるためです。
この記事では、妊娠悪阻で傷病手当金が支給されなかったケースでよく見られる理由を整理しながら、受給の仕組みや確認しておきたい点をわかりやすくまとめていきます。
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妊娠悪阻でも傷病手当金は対象になるのか

結論、妊娠悪阻は傷病手当金の対象に含まれる場合が多いです。
傷病手当金は「業務外の病気やけが」で働けない場合に支給される制度であり、医師が労務不能と診断する限りはその病名は問われません。
妊娠自体は病気ではありませんが、妊娠悪阻は医学的に病気(病態)として扱われるため制度の対象になります。
妊娠悪阻が対象外と誤解されやすい理由
妊娠悪阻については、周囲から
「妊娠は病気じゃないから対象外では?」
「つわりなら認められないのでは?」
といった情報が伝わることがあります。
実際には上記の通り、妊娠悪阻は疾患として扱われるため、休業が必要と医師が判断すれば対象になります。
ただ、軽度のつわりの場合は労務不能と判断されないこともあるため、結果的に「支給されなかった」というケースが起こりやすいのが実情です。
妊娠悪阻で傷病手当金が支給されるための4つの要件
協会けんぽの基準では、傷病手当金の受給には次の4つの要件があります。
- 業務外の病気やけがであること
- その病気やけがのため仕事ができない状態であること(労務不能)
- 連続した3日間の待期期間があること
- 休業中に給与の支払いがないこと
妊娠悪阻の場合、①は自然と満たします。
一方で、②〜④は状況によって満たさないことがあり、支給されなかったケースではこの部分が原因となることが多くあります。
妊娠悪阻で「傷病手当金がもらえなかった」主な理由
妊娠悪阻での申請において、不支給になる理由はいくつかのパターンに分かれます。
次に挙げる内容は、実際の相談でも非常に多く見られる項目です。
①給与・有給休暇が支払われていた
傷病手当金は「給与が出ない期間を補うための制度」のため、休んだ日に給与や手当が支払われている場合は、支給されないことがあります。
よくある例:
- 有給休暇を使っていた
- 会社から休業手当が出ていた
- 公休日やシフトの関係で欠勤扱いになっていなかった
このような場合、制度上は「給与が出ている」とみなされ、支給額がゼロになることがあります。
ただし、給与の金額が傷病手当金の日額より少ない場合は、差額が支給されることもあります。
②待期3日が成立していなかった
傷病手当金を受けるには、連続した3日間の休み(待期)が必要です。
待期は欠勤だけでなく有給休暇もカウントされますが、以下のようなケースでは成立しません。
- 欠勤と出勤が混ざって連続しなかった
- 半休のみで休んだ日が途切れていた
- そもそも欠勤扱いが少なかった
この待期の成立は非常に重要で、ここが満たされていないと支給対象になりません。
③医師の意見書で「労務不能」と判断されなかった
申請書に含まれる医師の意見書は、受給の可否に大きく関わります。
妊娠悪阻であっても、記載内容が軽度と判断されると「働ける状態」とみなされ、不支給となる場合があります。
例として、
- 症状の程度が具体的に書かれていない
- 労務不能と判断する根拠が弱い
- 日常生活の制限が反映されていない
といった点が原因になることがあります。
④退職後の申請で要件を満たせていなかった
妊娠悪阻をきっかけに退職した場合、退職後でも傷病手当金を受け取れる可能性がありますが、次の条件を満たす必要があります。
- 退職日の時点で労務不能である
- 退職前に待期3日が完成している
これらが揃っていないと「継続給付」として扱われず、結果として支給されないことがあります。
⑤申請書の記載漏れや日付のずれがあった
妊娠悪阻に限らず、申請書の不備は不支給の理由として多い項目です。
例えば、
- 医師欄の記載漏れ
- 事業主欄の日付や期間の間違い
- 添付書類の不足
- 対象期間に空白がある
といったちょっとしたミスでも返戻されることがあり、結果として支給まで進めないケースがあります。
妊娠悪阻で本当は「受給できた」可能性があるケース
妊娠悪阻で支給されなかった場合でも、条件の捉え方や書類の整理で実際には受給できた可能性があるケースもあります。
ここでは、上述の不支給となる理由を踏まえ、不支給事例としてよく見られるパターンをいくつか紹介します。
ケース1:有給休暇を使ったことで「対象外」と誤解していた例
有給休暇を使うと給与が支払われるため、傷病手当金が支給されない日があります。
そのため、「有給を使ってしまったから全期間は対象外になった」と勘違いしやすいのですが、実際には以下のような扱いになります。
- 有給や給与の支払いがある日 → 傷病手当金は支給なし
- 給与の支払いがない日 → 傷病手当金が支給対象
つまり、有給を取得していても、給与が出ていない日があれば、その日については傷病手当金が申請できます。
勤務シフトや給与の出方に応じて「一部支給」となるケースもあり、全期間が自動的に不支給になるわけではありません。
ケース2:退職後でも「継続給付」で受給できたケース
妊娠悪阻が重い場合、退職を選ぶ人も中にはいます。
ただ、退職後の申請でも条件を満たしていれば傷病手当金を受給できます。
妊娠悪阻の場合、退職前に欠勤日が続いているケースが多く、見逃してしまうと本来受け取れた給付を逃すことになります。
ただ、それ以前に退職後の傷病手当金は在職時の申請よりかなり複雑になります。詳細は「社会保険給付金サポート」へ問い合わせましょう。
社会保険給付金サポートのお問い合わせはこちら▼
ケース3:医師の記載内容によっては受給できたケース
医師の意見書は、申請する側でコントロールしづらい項目ですが、診察時の伝え方によって記載内容が変わることはよくあります。
例えば、
- 日常生活で困っている場面
- 食事が取れない日が続いたこと
- 職務内容が妊娠悪阻によってどの程度困難になったか
- 立ち仕事や動きの多い業務があること
- 通勤自体が困難なこと
こうした情報を医師へ伝えることで、労務不能の判断が明確になることがあります。
医師の判断に影響があるわけではなく、単に「事実が伝わりきっていない」ことで軽度と誤解されるケースが存在するためです。
妊娠悪阻で支給されなかったときに確認したいチェック項目
妊娠悪阻で傷病手当金が不支給となった場合、次の項目を整理すると状況が把握しやすくなります。
以下は、状況をまとめるうえで使いやすいチェックリストです。
■チェックリスト(表形式)
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 待期3日の成立 | 連続した3日間の欠勤・有給・休日などが揃っているか |
| 給与の有無 | 欠勤中に給与・有給・休業手当が出ていない日があるか |
| 医師の意見書 | 症状・労務不能の程度が記載されているか |
| 勤務形態 | シフト制・公休などで「欠勤扱いの日」が十分に確保されているか |
| 退職のタイミング | 退職日までに待期が完成しているか |
| 申請書の記入内容 | 事業主欄・医師欄に不備がないか、日付がズレていないか |
| 提出期限 | 申請期間内に提出しているか |
この表を使って整理していくと、「どの条件が満たされていなかったのか」が具体的に見えてきます。
妊娠悪阻で傷病手当金を受給するために準備しておきたいポイント

妊娠悪阻は妊娠初期に突然症状が悪化することもあり、事前準備が難しいことが多いです。
ただ、知っておくと受給の可能性が大きく変わるポイントがあります。
医師へ伝えておきたい情報
医師の診断は、症状以外に「どれだけ生活や仕事に支障が出ているか」も参考にします。
次のような点は、診察時に伝えておくと意見書に反映されやすくなります。
- 通勤が困難になっている
- 食事が取れない日が続いている
- 仕事中に体調が急激に悪化する
- 休みながらでないと動けない
- 職場の業務に支障が出ている
- 勤務形態(立ち仕事・重い作業・長時間勤務)が体調に合わない
医師に判断してもらうための材料を共有するイメージです。
勤務先に記入してもらう休業証明のポイント
事業主記入欄(休業状況の証明)は、実際の休業日が正しく記載されていることが重要です。
実際の勤怠状況とずれがないかを確認しましょう。
シフト制の場合、休業日と公休日の扱いが混在しやすいため注意して確認したいところです。
退職を考えている場合に特に注意するポイント
妊娠悪阻が重く、退職を考えるケースもあります。
ただ、退職後の受給には次の条件が必須です。
在職中に待期3日が完成している
退職日の時点で労務不能である
退職日を早めすぎると、待期が完成しないまま資格喪失となり、受給につながらないことがあります。
申請の順番や退職日は慎重に検討しておきたい部分です。
妊娠悪阻での申請の流れ
以下は、妊娠悪阻での申請の基本的な流れを簡単な図でまとめたものです。
【1】症状が強く働けない → 医療機関を受診 ↓ 【2】医師の診断 → 労務不能の判断 ↓ 【3】会社へ欠勤連絡 → 休業開始 ↓ 【4】連続3日の待期を確認 ↓ 【5】申請書を用意(本人・医師・事業主欄) ↓ 【6】健康保険へ提出 ↓ 【7】審査 → 結果通知
この流れを押さえておくと、どの段階で支給要件を満たしているかが理解しやすくなります。
妊娠悪阻で傷病手当金を申請するときに確認しておきたいポイント
上述での「支給されなかった理由」と「実例」を踏まえると、妊娠悪阻で申請する際に重要となるポイントが見えてきます。ここでは、実務的に確認しておきたい項目を整理しています。
医師の診断を受けるときに伝えておきたい内容
医師の意見書は、傷病手当金の申請で非常に重要です。妊娠悪阻の場合、症状そのものだけでなく、以下のような「生活や仕事に支障が出ている部分」も共有しておくと記載内容に反映されやすくなります。
- 通勤が難しい、または通勤で悪化しやすい
- 食事や水分の摂取が困難
- 嘔吐が頻繁に起きて業務が続けられない
- 立ち仕事・動く仕事が負担になっている
- 職場で横になったり休まないと動けない
会社の休業証明(事業主記入欄)で確認したい点
事業主記入欄は、実際の休業状況が正しく記載されているかどうかが重要です。特にシフト制の場合、公休日と欠勤日が混在しやすいため、以下の点を確認すると間違いが起きにくくなります。
- 欠勤日・有給日・公休日の区別が正しいか
- 申請期間に抜けやズレがないか
- 勤務実績と書類の内容が一致しているか
退職を検討している場合の注意点
妊娠悪阻が重く退職を考えるケースでは、退職日が傷病手当金の受給可否に大きく影響します。協会けんぽの基準では、退職後に受給する場合、次の条件が必要です。
- 在職中に待期3日が完成している
- 退職日の時点で労務不能である
退職日を早めすぎると、待期が成立しないまま資格喪失となり受給に結びつかないため、退職日は慎重に検討する必要があります。
妊娠悪阻で傷病手当金がもらえなかったときに利用できる制度
傷病手当金が不支給だったとしても、他に利用できる制度がある場合があります。ここでは代表的なものを紹介します。
出産手当金
健康保険加入者が産前産後に休む場合に支給される制度です。妊娠悪阻に対して直接支給されるものではありませんが、出産手当金の支給期間に入ると傷病手当金は停止されるため、スケジュールを知っておくと安心です。制度の詳細は以下で確認できます。
協会けんぽ:出産手当金
高額療養費制度
妊娠悪阻で入院した場合、医療費が高額になることがあります。高額療養費制度を利用すると、自己負担額が一定の金額を超えた分が後から払い戻されます。 公式の案内はこちらです。
協会けんぽ:高額療養費制度
医療費控除
年間の医療費が一定額を超えた場合、確定申告で医療費控除を受けられる可能性があります。妊娠悪阻は検査や通院が多くなるため、領収書は保管しておくと安心です。
妊娠悪阻と傷病手当金に関するよくある質問(Q&A)
妊娠悪阻とつわりは同じ扱い?
一般的なつわりは日常生活に支障がないと判断されることがありますが、妊娠悪阻は医学的な疾患として扱われ、労務不能と判断される場合は傷病手当金の対象になります。
パートやアルバイトでも受給できる?
健康保険に加入していれば正社員でなくても対象です。社会保険加入の有無が判断基準になります。
在宅勤務なら働けると判断される?
在宅勤務でも、妊娠悪阻の症状が強く業務ができない場合は労務不能と判断される可能性があります。医師の意見書の内容が重要です。
再申請すると受給できることはある?
医師の意見書の内容が変わった場合や、休業期間が増えた場合など、状況が変われば再度申請できるケースがあります。ただし、不支給決定された期間のやり直しはできないため注意が必要です。
まとめ:妊娠悪阻で「もらえなかった」ときは理由の整理が重要
妊娠悪阻で傷病手当金が支給されなかったケースには、有給休暇の扱い、待期3日の成立、医師の意見書、退職のタイミング、書類の不備など、いくつか共通した理由があります。
「支給されなかった理由」、「実例」、「対策と他の制度」をあわせて整理することで、自分のケースでどこに問題があったのかが見えやすくなります。
妊娠悪阻は体調が大きく揺れやすい時期でもあり、制度の条件を揃えるのが難しい場面もあります。丁寧に状況を振り返ることが、次の申請や他制度の活用につながっていきます。
業界初の「社会保険給付金サポート」、退職コンシェルジュでは、退職後の傷病手当金の申請も総合的にサポート可能です。
自分がどのケースに当てはまるか迷ったときは、お気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者
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