2025.11.18
社会保険について
テーマ:
有給休暇と傷病手当金の関係をわかりやすく解説|有給中は対象外?半休・退職時の注意点も整理

「体調が悪くてしばらく仕事を休まないといけない…」
そんなときに気になるのが、有給休暇と傷病手当金のどっちを使うべきか問題です。
その他にも、
「有給を使うと傷病手当金がもらえないって本当?」
「順番を間違えると損するって聞いた」
といった声が多く上がっています。
結論から言うと、有給休暇中は傷病手当金は受け取れません。
理由はシンプルで、有給休暇中は会社から給与が支払われるため、
健康保険の条件である「報酬がない日」に該当しないからです。
ただし、安心してください。
有給を使い切って給与が出なくなったタイミングから傷病手当金を申請できる仕組みになっています。
ここからは、有給と傷病手当金の関係を正しく理解するために、
両方の制度の基本をやさしく整理していきます。
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傷病手当金とは?支給される条件と金額

傷病手当金は、病気やケガが原因で働けなくなり、お給料が出なくなったときに健康保険から支給されるお金です。
仕事中のケガ(労災)は対象外で、私生活での病気やケガが対象になります。
全国健康保険協会(協会けんぽ)では、支給条件として次の4つを挙げています。
参考:全国健康保険協会「傷病手当金」
傷病手当金の主な支給条件
下記が傷病手当金の受給条件となっています。
- 業務外の病気やケガで療養している
- 働くことができない状態である(医師の判断が必要)
- 連続3日間の待期期間をおき、4日目以降も働けない
- その期間に給与(報酬)が支払われていない
受け取れる金額
支給額は「標準報酬日額の3分の2程度」、
つまり、通常の給与の約65%が大体の目安です。
つまり、
「お給料が途切れてしまった期間の生活を支えるための制度」という位置づけの給付金になります。
有給休暇とは?給与が全額出る仕組み
有給休暇は、お給料をもらいながら休める制度です。
これは“会社の好意”ではなく、労働者に認められた権利として法律に明記されています。
付与される日数の目安
入社して6か月が経ち、全労働日の8割以上を出勤していれば、
最低10日の有給休暇が付与されます。
その後は勤続年数に応じて増えていき、最大20日付与されます。
有給休暇のポイント
制度を利用する上で抑えておきたい有給休暇のポイントがこちらです。
- 休んでいても給与が100%支払われる
- 健康保険の扱いでは「報酬がある日」と判断される
- そのため、傷病手当金とは重複できない
この「給与が出ているかどうか」が、両制度の大きな分岐点になります。
傷病手当金と有給休暇の違い
どちらも「休んでいる期間にもらえるお金」に見えますが、目的も仕組みもまったく異なります。
比較表
| 項目 | 傷病手当金 | 有給休暇 |
|---|---|---|
| 支給元 | 健康保険 | 会社 |
| 支給額 | 給与の約67% | 給与100% |
| もらえる条件 | 給与が支払われていない日 | 給与が支払われる日 |
| 法的根拠 | 健康保険法 | 労働基準法 |
| 同時利用 | 不可 | 不可 |
要するに、
- 有給=給与あり(働いた扱い)
- 傷病手当金=給与なしの期間を補う制度
という役割の違いがあります。
なぜ有給休暇中は傷病手当金がもらえないのか
ここまでは「有給休暇は給与が支払われる仕組み」といった制度の基本を整理しました。
ここからは、その前提を踏まえて “実際にどのように支給可否が判断されるのか” を詳しく見ていきます。
傷病手当金には支給のための複数条件がありますが、中でも重要なのは“その休業期間に給与支払いがない、または支払われた給与が傷病手当金の金額を下回ること”という点です。
これについては協会(協会けんぽ)などでも明確に示されている傷病手当金を受給する上で必要となる条件の一つです。
つまり、有給休暇の日は “休んでいるのに給与が満額支払われるため、
健康保険側としては 「この日は補償が必要な休業ではない」 という扱いになります。
「有給を使わず欠勤した場合」はどう扱われる?
有給休暇の日は給与が満額支払われるため、傷病手当金は対象外になりますが、
「じゃあ有給を使わず欠勤した日はどうなるの?」という疑問もよくあります。
欠勤の場合は、有給とは異なり 給与が支払われない(=無給) になるため、
この日から傷病手当金の対象になる可能性があります。
ただし、支給されるためには
- 3日間の待期期間
- 医師の証明
- 業務外の病気やけが
など、基本の条件を満たしている必要があります。
つまり、同じお休みでも給与が満額発生するか、給与が1円も発生しないのかで傷病手当金の受給可否が異なります。
ここが、「有給休暇を使った日は支給対象外になる」理由の一つです。
有給と傷病手当金は「順番に使っていく」流れ
実際に長期間休む人の多くは、だいたい次のような流れになるため、
ステップごとに整理してみます。
①まず有給休暇を使う(給与100%)
最初の数日は、有給休暇で休むケースが一般的です。
有給の日は給与が満額出るため、収入が減らず安心して休めます。
また、有給は退職すると消滅するため、持っている場合は先に使っておくほうが合理的です。
②有給がなくなる
有給を使い切ってしまうと、次のお休みからは“欠勤(無給)”になります。
このタイミングが、制度が切り替わる大きな節目になります。
- 有給中 → 給与あり(=手当は対象外)
- 有給消化後 → 給与なし(=手当の検討に入る)
この流れを理解しておくと、傷病手当金がいつから使えるのか迷いません。
③給与が出なくなった日から傷病手当金の対象になる可能性
有給がなくなり給与がゼロになると、
ここから傷病手当金の対象になる可能性が出てきます。
- 給与がない
- 医師が「働けない状態」と判断している
- 休業が3日以上続いている
これらを満たすと、無給の日から傷病手当金が支給される流れです。
整理すると、「休んだ日数」ではなく「その日の給与の扱い」で切り替わる
という点が非常に重要になります。
半休・時間有給でも対象外になる理由
半休や時間有給についても、考え方は同じです。
- 午前のみ有給
- 数時間だけ有給
- 有給扱いで途中退勤
こういったケースでも、その日分の給与が支払われる点では同じなため、健康保険では 「給与がある日」 と判断されます。
働いた時間の長さは関係なく、その日の給与処理がどうなっているかが基準 です。
つまり、半日の利用や数時間の利用であっても、
給与が発生する日は傷病手当金の対象外 という扱いになります。
有給を残しておくと手当が早くもらえる?
有給休暇が残っていると、
「有給を温存しておけば傷病手当金が早くもらえるかも」
と考える人もいますが、これは誤解です。
傷病手当金の支給条件は
- 医師の証明
- 休業3日間(待期期間)
- 給与が出ていないこと
この3つで決まります。
有給の残日数は関係ありません。
むしろ、有給を残したまま欠勤扱いにすると、
会社によっては「有給を使って休んでほしい」と言われるケースもあります。
退職が近い人は特に注意したいポイント
退職を考えている人は、有給の扱いに注意が必要です。
- 有給を使わずに欠勤してしまう
- 結果として退職時に有給が残ってしまう
- 本来もらえたはずの給与100%の期間がゼロになる
- そのまま傷病手当金の申請をしてしまう
というケースは実際に多いです。
退職後に傷病手当金(継続給付)ができる場合でも、
退職前の有給は給与100%なので、使い切らないと損
というわけです。
病気で休む前に“やっておくべきこと”
制度が絡むと複雑に見えますが、実際に必要な行動はシンプルです。
- 医師の診断書を用意する
- 会社の休職/休業のルールを確認する
- 有給の残日数を把握する
必要に応じて傷病手当金の申請書の準備をしておく
これだけで、制度に振り回されずに動けます。
有給休暇と傷病手当金は「順番が決まっている」制度
ここまでの内容を踏まえると、有給休暇と傷病手当金の使い方はとてもシンプルです。
- 有給休暇 → 給与100%
- 傷病手当金 → 給与の約65%
- 有給中は給与が支払われるため傷病手当金は使えない
- 有給がなくなり無給になった日から傷病手当金が使える
この仕組みから、実際の流れは自然と決まります。
→ 基本的には「有給 → 傷病手当金」の順番で使う制度です。
会社の規定によって細かな違いはありますが、
収入面でも制度面でも、この並びで考えておくと迷うことはありません。
傷病手当金を利用するときのポイント
制度に慣れていない人がつまずきやすい点をまとめておきます。
①待期期間の3日間は支給されない
傷病手当金には 「待期期間」 という仕組みがあり、
最初の3日間は給与がなくても支給されません。
ただし、この3日間は連続していればOKです。
有給にするか欠勤にするかで迷う人もいますが、
待期期間のカウントは給与の有無に関係なく“休んだ日”で判断されます。
(例:有給→欠勤→欠勤 でも3日連続の休みとしてカウントされる)
②医師の証明がないと申請できない
傷病手当金は、医師が
「働けない状態です」
と判断していることが必須です。
軽い体調不良や自己判断では申請できないため、
- いつ受診するか
- どの診療科に行くか
証明書の内容は適切か
など、早めに動いておく必要があります。
③会社の休職・欠勤ルールが影響する
有給を使うか、欠勤にするか、休職に入るかなど、
会社ごとにルールが違います。
よくある違いは、
- 欠勤が続くと自動で休職扱いになる
- 有給を優先して使うよう会社が指示する
- 勤務時間数によって欠勤扱いになる
など。
「会社としてどの扱いになるのか」
を確認しておかないと、思わぬ形で有給が消えていたり、
欠勤扱いになっていたりすることがあります。
退職前に有給を使うときの注意点
退職前に有給を消化しながら休むケースもよくあります。
ただ、このタイミングは制度の切り替わりが複雑なので注意が必要です。
①退職前の有給は優先的に使うべき
有給休暇は退職日に消滅するため、
使わずに残すほど損になります。
可能であれば、退職前の有給は使い切るという方針で動くほうが確実です。
②退職後に傷病手当金(継続給付)を使うこともできる
退職すると給与の支払いはなくなりますが、
条件を満たせば退職後も傷病手当金を受け取ることができます。
「資格喪失の日の前日(退職日等)までに被保険者期間(任意継続被保険者、共済組合の組合員である被保険者又は国民健康保険に加入していた期間を除く)が継続して1年以上あり、
被保険者資格喪失日の前日に、現に傷病手当金を受けているか、
受けられる状態であれば、資格喪失後も引き続き支給を受けることができます。」
上記のように協会けんぽでも案内されています。細かい条件は組合によって異なる場合もあるため注意しましょう。
ただし、以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 退職日に労務不能状態である
- 退職前の在職中に連続して1年以上健康保険に加入している
- 退職後も療養が必要で働けない状態である
このあたりは誤解されやすいので、退職前に必ず確認しておきましょう。
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実際の申請の流れ

傷病手当金の申請はやや手間がかかるため、
先に流れを把握しておくとスムーズです。
①会社へ「傷病手当金支給申請書」を提出してもらう
申請書は協会けんぽの場合は公式サイトからダウンロードできます。
参考:傷病手当金支給申請書
会社が記入する欄と、本人が記入する欄があるため、
申請手続きのスタート地点は「会社へ依頼する」ことです。
②医師に証明を記入してもらう
休業している期間について、
医師が診断内容を記入する欄があります。
ここがないと申請できないので、
受診予定や通院計画と合わせて準備しておくとスムーズです。
③健康保険へ提出する
会社または本人から提出します。
提出後、審査が行われ、問題なければ支給される流れです。
支給までの期間は組合によって差がありますが、
協会けんぽの場合では「1か月〜2か月程度」が一般的とされています。
まとめ:有給と傷病手当金の関係はシンプルに考えると迷わない
制度を横並びで見ると複雑に見えますが、
実は考え方はとてもシンプルです。
- 有給の日は給与100% → 傷病手当金は出ない
- 欠勤・休職で“給与ゼロの日”が出てくる → 条件次第で手当が出る
- 順番は「有給 → 傷病手当金」が基本
- 半休・時間有給でも給与が出る日は対象外
- 退職が近い人は有給を使い切るのが鉄則
- 医師の証明と会社ルールの確認がとても大事
この流れさえ押さえておけば、
制度に振り回されることなく、必要なサポートを受けられます。
退職後の傷病手当金の申請については、「社会保険給付金サポート」に相談してみましょう。
これまでは会社が肩代わりしてくれた手続きも、退職後は自分一人で行う必要があります。そんな時退職コンシェルジュが、複雑な手続きの心強い味方になってくれるでしょう。
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