2025.11.04
社会保険について
傷病手当金の「医師の証明」もらい方を徹底解説|申請の流れと注意点(2025年最新版)

病気やケガでしばらく仕事を休まないといけなくなったとき、心強いのが「傷病手当金」。
でも実際に申請しようとすると、「医師の証明ってどうもらうの?」「診断書と何が違うの?」と、最初につまずく方がすごく多いです。
実は、この“医師の証明”がないと、どんなに体調が悪くても給付金はもらえません。
この記事では、医師の証明をスムーズにもらうための流れとコツを、できるだけ分かりやすくまとめました。
2025年10月時点の最新制度をもとに、厚生労働省や協会けんぽの情報を参考にしています。
傷病手当金ってどんな制度?

制度の基本
ざっくり言うと、「仕事以外の病気やケガで働けない期間に、収入の一部を補ってくれる制度」です。
健康保険に入っている会社員や公務員の方が対象で、次の4つの条件をすべて満たす必要があります。
- 仕事とは関係のない病気・ケガである
 - 医師が「働けない状態」と認めている
 - 3日間連続で休み、4日目以降も仕事ができない
 - 給与が出ていない(もしくは減っている)
 
詳しい条件は、全国健康保険協会(協会けんぽ)の「傷病手当金について」でも確認できます。
「医師の証明」ってなぜ必要?
申請のときに最も大事なのが、「医師の証明欄」。
いわゆる「医師意見書」と呼ばれる部分で、“本当に働けない状態かどうか”を医学的に判断してもらう欄です。
つまり、自分で「体調が悪くて無理です」と言うだけではダメで、医師が正式に認めてくれる必要があるんですね。
ここが抜けていると、どんなに症状が重くても審査が通らないことがあります。
医師の証明をもらう流れ
まずは申請書を用意しよう
最初に必要なのが「傷病手当金支給申請書」。
勤務先の健康保険組合や協会けんぽからもらえます。協会けんぽの場合はWebからもダウンロードOKです。
申請書は4枚つづりになっていて、それぞれ以下のように記入します。
| 枚数 | 記入する人 | 内容 | 
|---|---|---|
| 第1枚 | 本人 | 氏名・住所・休業日・口座など | 
| 第2枚 | 会社 | 出勤状況や給与の有無 | 
| 第3枚 | 医師 | 労務不能の期間・初診日など | 
| 第4枚 | 健康保険組合 | 審査用なので提出のみ | 
医師に書いてもらうのはこの第3枚目の「医師の意見欄」です。
診てもらっているクリニックや病院に原本を渡して、記入をお願いしましょう。
証明をお願いするタイミング
「いつお願いすればいいの?」という質問もよくあります。
原則として、休職(仕事を休み始めた日)より前、またはその時点で受診していることが条件です。
たとえば、数日休んだあとに病院へ行った場合、その「休んでいた分」は医師が証明できない可能性があります。
だからこそ、「ちょっと長引きそう」と思った段階で早めに受診するのがおすすめです。
医師に伝えておくとスムーズな情報
医師に記入してもらう際は、以下をメモして渡すと話が早いです。
- 会社を休み始めた日
 - 実際に働けなかった日数
 - 仕事内容(体力仕事かデスクワークか)
 - 症状が仕事にどう影響しているか
 - 今後どのくらい休む見込みか
 
これらをしっかり伝えておくと、医師も「労務不能」の判断をつけやすくなります。
診察のときに慌てて思い出せない人も多いので、事前にメモしておくのがおすすめです。
この段階で押さえておくポイント
- 申請書は「医師」「本人」「会社」でそれぞれ書く欄が違う
 - 初診日はかなり重要(後からさかのぼって証明は難しい)
 - 医師には正確な情報を渡すほどスムーズ
 
医師の証明をもらった後の手続きの流れ
提出先といつまでに提出した方がいいかを確認しよう
医師に「医師意見書」を書いてもらったら、いよいよ申請です。
申請書一式をまとめて、勤務先が加入している健康保険組合や協会けんぽに提出します。
提出期限は「支給対象月の翌月末まで」が目安です。
傷病手当金の申請には、「〇月〇日までに出さないと無効になる」という厳密な期限はなく、
法律上は“時効”が2年と定められているため、これを超えなければ申請自体は可能です。
しかし、実際の運用では多くの健康保険組合・協会けんぽが、
以下の理由から「支給対象月の翌月末までに提出」を推奨しています。
- 会社が「給与支払いの有無」を月ごとに記入するため
 - 月単位で申請書を区切って審査する保険者が多いため
 - 提出が遅れると、その分だけ支給時期も遅れるため
 
そのため、例として「10月分の休業」を申請するなら、
11月末までに申請書を出すのが理想です。
会社経由で提出する場合は、事業主の記入欄(第2枚)も必要になるので、少し早めに動くのがおすすめです。
| 例:10月に休職した分を申請する場合 → 11月末までに健康保険組合へ提出するのが理想  | 
協会けんぽの場合、郵送提出も可能です。
送付先は、協会けんぽ各支部一覧ページから確認できます。
書き方のチェックポイント
提出前に、必ず次の3点を確認しましょう。
- 医師の意見欄(第3枚)に署名・押印があるか
 - 休業期間の日付が本人・会社・医師でズレていないか
 - 会社の証明欄(第2枚)がすべて埋まっているか
 
どれか1つでも抜けていると、審査で差し戻しになってしまうことがあります。
再提出になると支給が1〜2か月遅れるケースもあるため、封入前にしっかりチェックしておきましょう。
医師が証明してくれないときの対処法
「診断書は出せるけど証明は書けない」と言われたら
実際に多いのが、「診断書は発行できるけど、傷病手当金の証明は難しい」というケースです。
これは、医師が「労務不能とまでは言えない」と判断している場合に起こります。
たとえば、
- 軽症で通院はしているけれど、働こうと思えば働ける
 - 受診回数が少なく、経過がはっきりしていない
 - 初診日より前の休業について証明を求められている
 
といったケースでは、医師が慎重になることがあります。
そんなときは、無理に頼み込むのではなく、説明で補うのがコツ。
「業務内容が体にどんな負担になっているか」や「職場でどんな支障が出ていたか」など、医師に分かるように伝えることで、判断が変わることもあります。
それでも難しい場合の選択肢
どうしても証明がもらえない場合は、次のような方法もあります。
・別の診療科で改めて受診する
 → たとえば、心身の不調があるならメンタルクリニックや心療内科に相談してみる。
・会社の産業医に相談する
 → 医師意見書を出せる場合もあります。勤務先の人事部などに確認してみましょう。
・健康保険組合に事情を説明する
 → 書類の一部を後日提出にするなど、柔軟に対応してもらえることがあります。
なお、証明が得られず申請が遅れても、原則として時効(2年)以内であれば後から申請可能です。
あきらめず、まずは保険者に相談するのがおすすめです。
書類の不備・申請ミスで多いパターン
1. 休業期間のズレ
本人・会社・医師の3者で書く日付が少しでも違うと、審査で「どの期間が労務不能か」が分からなくなります。
1日でもズレると差し戻しになることもあるので、書く前にカレンダーで日付を合わせましょう。
2. 給与支払いの有無が不明
会社の欄で「給与が出ているかどうか」が空欄のままだと、支給額の計算ができません。
もし「有給休暇を使った期間」がある場合は、その日数を明記してもらう必要があります。
3. 医師意見欄の記入漏れ
特に「就労可能見込み日」「療養のために休む必要がある期間」などが空欄のまま提出されるケースが目立ちます。
医師に依頼する際は、全項目を埋めてもらえているか確認してから受け取るのが鉄則です。
書類に不備があった場合の再申請方法
もし審査で差し戻された場合も、落ち着いて修正すればOKです。
差し戻し理由とともに健康保険組合から連絡があるので、修正版を作成して再提出します。
再申請に期限はありませんが、再提出が遅れると支給時期も後ろ倒しになります。
修正依頼が来たら、できるだけ1週間以内を目安に返送しましょう。
退職・転職時の注意点
退職しても、条件を満たしていれば傷病手当金は受け取れます。
ただし、以下の2つの条件が大切です。
- 退職日の時点で労務不能であること(=医師の証明が必要)
 - 退職前に継続して1年以上健康保険に加入していたこと
 
このため、退職予定がある人は、退職前に必ず医師に証明をもらっておくのがポイントです。
証明をもらわずに退職してしまうと、その後の申請が難しくなることがあります。
実際のケースで見る「医師証明の流れ」
事例①:メンタル不調で休職になった場合
たとえば、30代の会社員Aさん。
最近ストレスが続き、出社できない日が増えてきたため心療内科を受診。
医師から「うつ状態による労務不能」と診断され、1か月の休職を勧められました。
Aさんはその場で「傷病手当金を申請したい」と伝え、協会けんぽの申請書を持参。
医師は初診日を基準に「労務不能の期間」「就労可能見込み日」などを記入してくれました。
その後、Aさんは会社に第2枚(事業主記入欄)を依頼し、本人欄を記入。
2週間ほどで健康保険組合へ提出完了。
初回支給までは約1か月半ほどかかりましたが、無事に月給の3分の2程度の傷病手当金が支給されました。
事例②:退職後に体調を崩した場合
一方で注意が必要なのが、退職後に症状が悪化したケース。
たとえばBさんは、退職後に腰痛が悪化して病院へ。
医師に「傷病手当金の証明」を依頼したところ、「退職後の初診なので対象外」と言われてしまいました。
このように、退職後に初めて受診すると、原則として支給対象外になります。
退職前にすでに診断・治療を受けていて、そのまま療養を続ける形ならOKですが、そうでない場合は申請できません。
そのため、「退職を考えているけど体調が不安」という人は、退職前に一度病院を受診しておくことがとても大切です。
支給額の目安と計算例
傷病手当金の支給額は、「過去12か月の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 2/3」が基本です。
たとえば、標準報酬月額が30万円の場合:
| 30万円 ÷ 30日 × 2/3 = 6,666円/日 | 
1か月(30日)休んだ場合、
約6,666円 × 30日 = 約20万円が支給される計算になります。
ただし、実際の金額は「給与支払いの有無」や「保険者の審査」によって多少前後します。
支給期間は最長で通算1年6か月まで。
長期療養が必要な場合でも、1年半を超えると支給が終了する点に注意しましょう。
スムーズに証明をもらうためのコツ
① 受診は早めに
「あと数日休んだら治るかも」と我慢しているうちに、初診日が遅れてしまうケースが多いです。
初診日が後ろ倒しになると、その前の休業期間が“証明外”になってしまうため、結果的に支給日数が減ることも。
体調が不安なときは、早めに医師に相談しておくのがベストです。
② 会社との連携をとっておく
会社の担当者(人事・労務)とも、いつまで休む予定かを共有しておくとスムーズです。
申請書の「事業主証明」欄は会社側が書くため、情報が食い違うと差し戻しの原因になります。
「〇月〇日から休む予定」「〇月末に医師証明をもらう」といったざっくりしたスケジュールでも共有しておくと安心です。
③ 医師には“仕事の実情”をしっかり伝える
医師の証明は「労務不能=仕事ができないかどうか」という観点で書かれます。
そのため、「どんな仕事をしていて、どんなことが難しいのか」を伝えることが大事です。
たとえば:
- 立ち仕事が多く、腰痛で長時間立てない
 - 精神的ストレスで集中力が続かず、対人業務が難しい
 - 体力的に出勤ができない状態
 
こうした具体的な情報を伝えると、医師も判断しやすくなり、的確な証明を書いてもらえます。
④ 書類はコピーを取っておこう
提出前にすべての申請書をコピーしておくのも大事です。
紛失や再提出の際に、どんな内容を記入したかを確認できます。
特に「医師意見書」は原本しか手元に残らないことが多いため、提出前に必ずスキャンかコピーを残しておきましょう。
まとめ|医師の証明は“最初の一歩”を早めに
- 医師の証明(医師意見書)は、傷病手当金の申請で最も重要な書類
 - 受診はできるだけ早めに行い、初診日を逃さない
 - 医師・会社・本人の3者で日付をそろえることが大事
 - 医師が証明を出せない場合も、焦らず相談・再診を
 
傷病手当金の申請は、慣れないうちは少し手間に感じるかもしれません。
でも、正しい手順を知っていればそこまで難しくはありません。
「医師の証明をどうもらうか」を理解しておけば、あとは書類をそろえて提出するだけ。
焦らず、必要なステップを一つずつ進めていきましょう。
また、証明書を取得する以外にも、傷病手当金の申請手続きには様々な複雑なやり取りが発生します。
退職後の申請の場合は会社が手伝ってくれることもありません。
まずは「社会保険給付金サポート」へ不安な点を相談してみると良いでしょう。
この記事の監修者
                                                萩原 伸一郎
CREED BANK株式会社
ファイナンシャルプランナー(FP)資格を持ち、東証一部上場企業に入社。資産形成、資産運用、個人のライフプランニングなどを経験。これまでに10,000名以上の退職後のお金や退職代行に関する相談などを対応した経験から、社会保険や失業保険についてわかりやすく解説。
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