2025.11.27

失業保険について

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再就職手当とは?もらえる条件や金額、メリット・デメリットを解説

再就職手当

再就職手当とは、失業中に再就職を果たした方へ支給される給付金です。再就職のタイミングが早いほど受け取れる金額が大きくなるメリットがある一方で、失業保険との関係性や受給のための条件に注意が必要です。

本記事では、再就職手当と他の給付金との違い、受給条件や受給額を解説します。また、給付金をもらうメリット・デメリットや手続きの流れを紹介するので、受給を考えている方はぜひ参考にしてみてください。

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再就職手当とは

再就職手当の受給額を計算する様子再就職手当とは、失業中の人が早期再就職するのを支援するための制度です。雇用保険の就職促進給付に該当し、失業保険の受給資格が決定した後に安定した仕事に就いた場合に給付金を受け取れます。

失業保険の受給中に再就職すれば必ずもらえる給付金ではないため、受給条件を満たすか確認することが重要です。まずは、再就職手当と似た制度の違いを解説します。

失業保険との違い

失業保険とは、失業中で求職活動している人の生活を守るための制度です。雇用保険の求職者給付にあたるもので、正式には基本手当と呼ばれています。

一方、再就職手当は失業保険の受給終了後、再就職したときに受け取れる給付金です。

失業保険は離職理由や年齢、雇用保険の加入期間によって決められている給付日数をすべて受給し終えるか、再就職するかいずれか早い日まで支給されます。そのため、再就職すると支給停止となることに留意が必要です。

常用就職支度手当との違い

常用就職支度手当とは、以下の条件を満たす人のうち、障害などを理由に就職が困難な人が安定した職業に就くともらえる給付金です。再就職手当と同様に、雇用保険の就職促進給付に分類されます。

  • 失業保険の受給資格があり、支給残日数が3分の1未満の人
  • 高年齢受給資格者
  • 特例受給資格者
  • 日雇受給資格者

 

支給額は、再就職した時点の支給残日数に応じて以下の計算式で算出できます。ただし、計算式で使用する基本手当日額の上限額は6,570円(60歳以上65歳未満の人は5,310円)です。

支給残日数

支給額の計算方法

90日以上

基本手当日額×90日×40%

45日以上90日未満

基本手当日額×支給残日数×40%

45日未満

基本手当日額×45日×40%

参考:ハローワークインターネットサービス|就職促進給付

就業促進定着手当との違い

就業促進定着手当とは、再就職したものの、離職前より賃金が下がった場合に差額が補填される制度です。再就職手当と同様に、雇用保険の就職促進給付に分類されます。

就職促進定着手当は、以下の条件を満たすときに受け取れます。

  • 再就職手当を受け取っている
  • 引き続き再就職先に6か月以上雇用されている
  • 再就職先の6か月間の賃金1日分が離職前の賃金日額より低い

 

上記を満たした上で手続きすると、以下の計算式で算出された金額を受け取れます。

就職促進定着手当=(離職前の賃金日額-再就職した日から6か月間の賃金1日分)×再就職日から6か月間の賃金支払いの基礎となる日数

再就職手当の受給に必要な8つの条件

再就職手当を受給する際は、一定の条件を満たす必要があります。

条件①失業保険の支給残日数が3分の1以上ある

再就職手当を受け取るためには、就職日前日までの失業保険の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上必要です。残日数が3分の1未満になってから就職した場合は、受け取れません。

以下の表では所定給付日数ごとに、再就職手当を受け取れる支給残日数をまとめました。

所定給付日数

支給対象となる支給残日数

90日

30日以上

120日

40日以上

150日

50日以上

180日

60日以上

210日

70日以上

240日

80日以上

270日

90日以上

300日

100日以上

330日

110日以上

360日

120日以上

参考:ハローワークインターネットサービス|再就職手当のご案内

条件②過去3年以内に再就職手当をもらったことがない

再就職手当の受給回数に制限はありませんが、前回受け取ったのが就職日の3年以内の場合はもらえません。

例えば、2022年11月1日に就職して再就職手当をもらっている場合、2025年11月1日を過ぎてからの就職であればもう一度再就職手当をもらえます。前回の就職日から3年以内に再就職してしまうと受け取れないため、就職のタイミングに気を付けましょう。

条件③待期期間後の就職である

失業保険の申請後、7日間は待期期間として受給が制限されます。この期間は失業状態にあるかを確認するためのものであるため、待期期間中に就職してしまうと再就職手当はもらえません。

ただし、待期期間に内定をもらった場合は、入社日が待期期間後であれば再就職手当の対象になります。

条件④待期期間後、給付制限1か月間は決められた事業者の紹介で就職する

待期期間後の就職であっても、給付制限がかかる人は注意が必要です。

待期期間後から給付制限期間の1か月以内の就職で再就職手当をもらう場合は、ハローワークや国の許可を受けた職業紹介事業者から紹介された就職先への就職であることが条件です。該当の期間中に、自分で探した求人や許可を受けていない民間の職業紹介事業者からの紹介で就職すると、再就職手当の対象外になります。

ただし、待期期間から1か月が過ぎてからは紹介元の制限がなくなり、自分で見つけた就職先でも対象です。

条件⑤失業保険の申請前に内定をもらっていない

再就職手当は、失業保険の受給資格が決定した後の就職を対象にしたものです。受給資格が決定する前、つまり失業保険の申請前に内定をもらった会社に就職する場合は対象外となります。

ただし、申請前に内定をもらっていたとしても、「満足のいく会社を見つけたい」と失業保険を受給し、結果として別の会社に就職する場合は再就職手当を受け取れます。

条件⑥退職前の会社や関連会社への就職ではない

再就職手当は、退職前の会社やその関連会社への就職は対象外です。例えば、退職前に派遣会社で派遣社員として働いていた場合、派遣先が変わったとしても雇い元である派遣会社は変わらないので再就職手当はもらえません。

就職先と退職前の会社が取引関係にある場合、年間売上の50%以上の取引があると再就職手当の支給対象外です。

条件⑦1年を超える雇用が確実である

再就職手当は安定した職業に就くことを支援する制度であるため、雇用期間が1年未満とわかっている場合は対象外です。

また、同様の理由で、契約更新に一定の目標達成が求められる場合や登録型派遣で派遣予定がない場合は受給できません。

条件⑧原則として就職先で雇用保険に加入する

原則、雇用保険に加入できる条件での雇用が求められます。雇用保険の加入条件は以下のとおりです。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上の雇用が見込まれる

 

ただし、再就職手当は事業を開始する人も対象になるため、必ずしも雇用保険の加入条件を満たす必要はありません。

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再就職手当としてもらえる金額の計算方法

再就職手当は、「基本手当日額×所定給付日数の支給残日数×支給率」で支給額を計算できます。失業保険は認定日ごとの支給ですが、再就職手当は一括支給です。上記で計算した金額が一度にもらえます。

ここでは、支給額の計算方法を詳しく解説します。

ステップ①基本手当日額を調べる

まずは、雇用保険受給資格者証で基本手当日額を調べましょう。

原則として、表面に書かれている基本手当日額で計算しますが、以下の上限額が設定されていることに注意が必要です。上限を超える場合は、上限額で計算します。

離職時の年齢

基本手当日額の上限額

29歳以下

7,255円

30歳〜44歳

8,055円

45歳〜59歳

8,870円

60歳〜64歳

7,623円

参考:厚生労働省|雇用保険の基本手当日額が変更になります ~令和7年8月1日から~

ステップ②支給残日数を把握する

次に、雇用保険受給資格者証の裏面に記載されている「所定給付日数に対する支給残日数」を把握します。

ただし、受給資格者証に書かれている支給残日数は、前回の認定日時点の日数です。実際には、入社日前日までは失業保険の支給対象であるため、まだ受給中の場合はそれを加味して支給残日数を確認します。

例えば、前回の認定日が11月1日でその時点の支給残日数が90日、入社日が11月16日の場合は11月1日から11月15日までの15日分を差し引いた75日が最終的な支給残日数です。

<h3>ステップ③支給率を確認して受給額を計算する
支給率とは、以下のように支給残日数に応じて再就職手当の受給額を計算するときに使われる割合です。

  • 支給残日数が所定給付日数の3分の2以上:70%
  • 支給残日数が所定給付日数の3分の1以上:60%

 

上記の支給率と基本手当日額、支給残日数を用いて、再就職手当の受給額を計算します。

再就職手当をもらう4つのメリット

再就職手当の受給にはいくつかの条件を満たす必要がありますが、この手当を受け取ることで得られるメリットは多岐にわたります。ここでは、再就職手当をもらうことで得られる4つの主なメリットを解説します。

就職後の生活費や就職準備費として使える

再就職手当は用途の決まっていない給付金のため、使い方は受け取った人が自由に決められます。

就職した直後は生活費や就職準備にお金が必要になることがあるため、まとまった金額を受け取れる再就職手当はメリットが大きくなります。すぐに使う予定がない場合でも、貯金や投資に回すことも可能です。

税金がかからず全額受け取れる

再就職手当は収入(所得)には含まれないため、税金はかかりません。受け取った金額はそのまま自由に使えます。

所得ではないため、年末調整や確定申告の必要がなく、手間がかかる心配もありません。

受給してすぐ退職しても返金する必要がない

万が一、再就職手当を受給後すぐに就職先を退職することになったとしても、返金する必要がないこともメリットです。

もらった後の進路に影響しないため、「すぐに辞めてしまうかもしれない」と受給をためらう必要はありません。

早期退職で失業保険の残りを受け取れることがある

短期退職した場合は、条件次第で失業保険の残りを受け取れます。

通常、失業保険をもらうと雇用保険の加入期間がリセットされるため、就職先をすぐに退職すると「離職日以前の2年間に通算12か月」という条件を満たせない可能性があります。

しかし、就職先で新たに受給資格を得られなかった場合は、前回受給した失業保険で以下を満たすと受給再開できる可能性があるため、自身の条件を確認しましょう。

  • 受給期間内である
  • 支給日数が残っている

 

再就職手当を受け取っている場合、支給残日数から受け取った金額相当分が差し引かれ、残りが支給されます。

再就職手当をもらう2つのデメリット

再就職手当のメリットだけを見て安易に受給を決めると、かえって損をしたり、後悔したりするリスクもあります。特に、「受給額」と「再就職の質」については、慎重な検討が必要です。

納得のいく転職を実現するために、押さえておきたい2つのデメリットを解説します。

失業保険を満額もらうより受給額が少なくなる

再就職手当でもらえる金額は、失業保険を満額もらうより少なくなります。支給率が基本手当日額の60%〜70%のため、その分受け取れる金額が減ることに留意が必要です。

ただし、就職のタイミングによっては、結果的に失業保険を満額受け取れなくなります。早期に就職する場合は、再就職手当をもらうほうが最終的にもらえる金額が大きくなるケースがあります。

また、失業保険を満額もらおうとすると、最低でも90日間は就職しないことになり、ブランクができて再就職しにくくなることが懸念点です。

失業保険を満額もらうか、早期に就職して再就職手当をもらうか、どちらが得になるかは一概に言えません。

焦って求職活動してしまいやすい

再就職手当は早期に就職するほどもらえる金額が大きくなるため、焦って就職してしまうことがあります。企業研究が不十分なまま就職してしまうと、入社後にギャップを感じて早期退職につながるリスクに注意が必要です。

受給額を増やすために早期の再就職を目指すだけでなく、納得できる条件で就職することも大切です。

就職決定から再就職手当を受給するまでの流れ

ハローワーク

再就職手当を受給するためには、複数のステップを踏む必要があります。手続きをスムーズに完了させ、給付を確実に受け取るためには、適切なタイミングで必要な書類を提出することが重要です。

ここでは、就職が決定してから、実際に再就職手当を受け取るまでの具体的な手続きの流れを、ステップごとに解説します。

就職先で採用証明書を書いてもらう

再就職が決まったら、「受給資格者のしおり」に添付されている採用証明書を就職先に提出して「事業主記入欄」に必要事項を記入してもらいます。

内定をもらったら、できるだけ早く書類の作成を依頼するとスムーズです。ただし、すぐに書いてもらえない場合は、後から提出しても問題ありません。

入社日の前日にハローワークへ行く

入社日の前日に以下の書類を持って、ハローワークへ行って手続きします。入社日の前日が土日祝日など閉庁日にあたる場合は、さらにその前日に来所しましょう。

  • 雇用保険受給資格者証
  • 失業認定申告書
  • 採用証明書(後日郵送でも可)

 

例えば、12月1日日曜日が入社日とすると、11月29日金曜日に来所します。ただし、入社日までの期間に認定日が設定されている場合は、認定日にも来所が必要です。

就職申告と認定手続きを行う

窓口で就職が決まったことを伝え、必要書類を提出しましょう。

当日は、「就職申告」「失業認定」の2つの手続きを行います。ここで、前回の認定日から入社日前日までの失業認定を受け、最後の失業保険を受け取ります。

ただし、当日採用証明書を持参できない場合は、最後の振り込みは採用証明書の提出後になるため、速やかに採用証明書の作成依頼・提出をしましょう。

就職先に再就職手当支給申請書を書いてもらう

就職申告と最後の失業認定を終えたら、窓口で再就職手当支給申請書を受け取ります。この書類を就職先に提出し、必要事項の記入を依頼しましょう。

ハローワークに申請書を提出する

就職先で記入してもらった再就職手当支給申請書をハローワークに提出すると、再就職手当が指定の口座に振り込まれます。

申請書の提出期限は、原則として入社日翌日から1か月以内です。ただし、時効は入社日の翌日から2年が経過する日のため、申請期限内であれば手続きを忘れてしまっていても受給できます。

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まとめ

再就職手当は早期の再就職を後押しする制度ですが、受給するには失業保険の残日数や過去の受給歴、就職先の制限といった条件を満たす必要があります。

また、再就職のタイミングによって支給額が変わるため、就職の時期を慎重に見極めることが重要です。受給申請の手続きは、就職日の前日までにハローワークで申告や就職先に書類を記入してもらうなど煩雑で手間がかかります。

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この記事の監修者

杉山 雅浩

スピネル法律事務所 弁護士

東京弁護士会所属。
池袋中心に企業顧問と詐欺被害事件に多く携わっています。
NHKやフジテレビなど多くのメディアに出演しており、
詐欺被害回復などに力を入れている個人に寄り添った弁護士です。

YouTubeの他、NHK、千葉テレビ、日本テレビ、東海テレビ、FM西東京、フジテレビ、共同通信社、時事通信社、朝日新聞、朝日テレビ、読売新聞、日本経済新聞、毎日新聞、TBS、CBCテレビ、名古屋テレビ、中日新聞その他数多くのネット記事、週刊誌多数のメディアに取材されたり、AbemaTV、NHKスペシャル、クローズアップ現代、バイキングモア、おはよう日本、など有名番組に出演してます!

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