2025.10.17

失業保険について

勤続1年未満でも失業保険はもらえる?勘違いしやすい条件を整理

勤続一年未満の男性

「勤続1年未満で退職したら、失業保険はもらえない」と思っている人は少なくありません。
しかし実際には、勤務期間が1年未満でも一定の条件を満たせば受給できる場合があります。
この記事では、2025年10月時点の厚生労働省の最新情報をもとに、
「勤続1年未満でも失業保険をもらえるケース」や「もらえないケース」などをわかりやすく解説します。

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失業保険の正式名称と目的

失業保険は正式には「雇用保険の基本手当」と呼ばれます。
雇用保険法第1条には、次のように定められています。
労働者が失業した場合に必要な給付を行い、その生活と雇用の安定を図るとともに、再就職の促進を図ること。
つまり、単に失業中の生活を支えるだけでなく、再就職までの支援を目的とした制度です。

出典:https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001512409.pdf

受給の基本条件

失業保険を受け取るには、次の2つを満たす必要があります。
離職前2年間に、通算12か月以上の被保険者期間があること

就職する意思と能力があり、積極的に求職活動を行っていること

ただし、離職理由が会社都合ややむを得ない事情(特定理由離職)である場合は、この条件が「6か月以上」に緩和されます。
つまり勤続1年未満でも6か月以上勤務していれば、受給資格を得られる可能性があります。

被保険者期間のカウント方法

「勤務していた期間=被保険者期間」ではありません。
被保険者期間は、賃金支払基礎日数が11日以上ある月のみが1か月としてカウントされます。
たとえば以下のようなケースです。

出勤日数

被保険者期間に算入されるか

1月

15日

2月

10日

×

3月

12日

4月

8日

×

5月

20日

この場合、実働5か月でも被保険者期間は「3か月」となります。
短期勤務者はこの数え方で条件を満たさないことが多いので注意が必要です。

退職理由による大きな違い

勤続1年未満であっても、退職理由によって結果はまったく異なります。
大きく分けると次の3区分です。

区分

被保険者期間の要件

給付制限

支給開始時期

会社都合退職(特定受給資格者)

6か月以上

なし

待機7日後から

特定理由離職者(やむを得ない自己都合)

6か月以上

なし

待機7日後から

自己都合退職(通常)

12か月以上

2〜3か月

待機7日+制限後

この表からもわかるように、「会社都合」や「特定理由離職」に該当すれば、
勤続1年未満でも失業保険を受け取ることができます。

雇用保険加入の確認方法

失業保険の対象になるには、そもそも雇用保険に加入していたことが前提です。
以下の方法で確認しましょう。

  1. 給与明細に「雇用保険料」の項目があるか
  2. 退職時に「離職票」が交付されているか
  3. ハローワークで「被保険者番号」をもとに照会できる

 

雇用保険に加入していなかった場合は、原則として失業保険の受給はできません。
ただし、後述する求職者支援制度という別の支援制度を利用できる場合もあります。

勤続1年未満でも失業保険をもらえる具体的なケース

前段では、勤続1年未満でも「会社都合」や「やむを得ない事情」がある場合には受給できる可能性があることを説明しました。
ここでは、実際にどのようなケースで失業保険を受け取れるのかを、厚生労働省の基準をもとに整理して解説します。

① 特定受給資格者(会社都合退職)

「特定受給資格者」とは、本人の意思に反して離職した人のことです。
つまり、解雇や倒産など、働く側には責任がない場合に該当します。
主な該当例は以下のとおりです。

  • 会社の倒産、経営不振による整理解雇
  • 契約社員・派遣社員の契約終了(更新を希望していたが会社側が拒否)
  • 会社の指示による配置転換や転勤が困難で退職
  • 賃金の未払い、労働条件の大幅な悪化

 

参考:https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_range.html

これらはすべて「本人の責任によらない離職」とみなされ、
6か月以上の被保険者期間で失業保険の受給資格を得ることができます。

給付開始までの流れ

会社都合退職者は、申請から7日間の待機期間を経てすぐに支給が始まります。
給付制限(2〜3か月の待機期間)は一切なく、
ハローワークでの初回認定日以降、最初の振込が行われます。

項目

内容

被保険者期間

6か月以上で可

給付制限

なし

給付開始

7日間の待機後すぐ支給

給付日数

年齢・勤続期間により90〜150日程度

契約社員や派遣社員の場合の注意点

契約満了に伴う退職は、通常「自己都合」と誤解されがちです。
しかし、以下のような状況であれば会社都合扱いになる可能性があります。

  • 契約書に「更新の可能性あり」と明記されていた
  • 過去に複数回更新されていた
  • 自身は更新を希望していたのに会社側から打ち切られた

この場合は「雇止め」として、会社都合退職の特定受給資格者に該当します。
離職票に記載された「離職理由コード(例:21・31など)」を必ず確認しましょう。
もし実際の理由と異なる内容が記載されていた場合は、
ハローワークで異議申し立てを行うことができます。

② 特定理由離職者(やむを得ない自己都合)

「特定理由離職者」とは、形式上は自己都合退職でも、
やむを得ない事情によって離職せざるを得なかった人を指します。
この場合も、6か月以上の被保険者期間があれば受給できます。
主な例として次のようなケースがあります。

区分

具体的な内容

健康上の理由

病気やケガで勤務継続が困難と医師が判断した場合

家庭の事情

介護・育児・配偶者の転勤・DV避難など

労働環境

長時間労働・パワハラ・セクハラなど

雇用契約の変更

賃金カットや勤務地変更など、重大な労働条件の不利益変更

このような事情がある場合、離職票に「特定理由離職」と記載され、
会社都合退職と同じく給付制限なしで7日後から支給されます。

必要となる証明書類の例

特定理由離職者として認められるには、客観的な証拠が必要です。
ハローワークに提出する代表的な書類を以下にまとめます。

理由

提出書類の例

病気・ケガ

医師の診断書(「就労制限」等の記載があるもの)

介護

要介護認定証・介護申請書の写し

育児

保育園不承諾通知書など

配偶者の転勤

辞令または転勤証明書

パワハラ・セクハラ

録音・メール・労基署相談記録など

 

これらがない場合、単なる自己都合と判断されることがあるため注意が必要です。

特定理由離職者の取り扱いまとめ

項目

内容

被保険者期間

6か月以上

給付制限

なし

待機期間

7日

必要書類

医師の診断書・証明書など

主な理由

健康・家庭・職場環境などやむを得ない事情

このように、「会社都合」または「やむを得ない自己都合」に該当すれば、
勤続1年未満でも失業保険の受給資格が認められる可能性が十分あります。
次章では、反対に「どんな場合にも失業保険がもらえないケース」と、
その際に活用できる代替制度(求職者支援制度・再就職手当など)について解説します。

勤続1年未満では失業保険をもらえないケースとその理由

ここまで説明したように、「会社都合退職」や「やむを得ない理由のある自己都合退職」であれば、
勤続1年未満でも失業保険を受け取れる可能性があります。
しかし、すべての短期離職者が対象となるわけではありません。
ここでは、失業保険をもらえない代表的なケースと、その根拠を整理します。

① 自己都合退職かつ6か月未満の勤務

自己都合で退職した場合、受給資格を得るには「離職前2年間に通算12か月以上の被保険者期間」が必要です。
6か月や8か月の勤務では条件を満たさないため、失業保険の支給対象外となります。
これは、雇用保険が「保険料を一定期間納めた人に対して支給される制度」であるためです。
短期間で退職した場合は、納付額が少ないため給付対象外とされています。

出典:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139508.html#Q1

② 雇用保険に未加入だったケース

失業保険を受け取るには、雇用保険への加入が前提条件です。
以下の2点を満たさなければ加入対象になりません。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上あること
  • 31日以上の雇用見込みがあること

そのため、週15時間勤務のパートや1か月未満の短期アルバイトなどは対象外となります。
また、会社側の手続き漏れで加入していなかったケースも実際に多く見られます。

雇用保険加入漏れがあった場合の対応

勤務実態があり、加入要件を満たしていたにもかかわらず手続きが行われていなかった場合は、
ハローワークで相談することで「遡及して資格取得」できる場合があります。

相談時に持参すべき主な書類:

  • 給与明細(雇用保険料項目が空欄でも可)
  • 雇用契約書
  • 出勤簿やシフト表

これらで「31日以上の雇用見込み」や「週20時間以上勤務」を証明できれば、
遡って被保険者資格が認められる可能性があります。

③ 学生アルバイト・短期業務委託などの対象外労働者

次のような人は、そもそも雇用保険の対象外です。

区分

理由

学生アルバイト

学業が主であるため「被保険者」とならない

フリーランス・個人事業主

雇用契約ではなく業務委託のため対象外

日雇い契約(31日未満)

一般被保険者ではなく日雇特例被保険制度の対象

家族経営の手伝い

労働契約関係が明確でない場合は除外される

こうしたケースでは、雇用保険料がそもそも天引きされていないため、
失業保険を申請しても受給資格は認められません。

失業保険をもらえない場合に利用できる制度

「短期間勤務で失業保険がもらえなかった」「雇用保険に入っていなかった」という人でも、
次の2つの制度を利用できる可能性があります。

① 再就職手当(雇用保険受給者向け)

失業保険の受給資格を持つ人が、給付を受ける前に早期再就職した場合に支給される手当であり、再就職を促進する目的で設けられています。

条件

内容

基本手当の受給資格を持つ

必須

所定給付日数の3分の1以上残して再就職

要件

1年以上の雇用見込みがある職に就く

要件

支給率

残日数の60〜70%相当

たとえば、失業給付を90日分持っていて、60日分を残して再就職した場合:
5,000円 × 60日 × 70% = 21万円 支給されます。

参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139508.html#Q39

② 求職者支援制度(雇用保険に未加入の人向け)

雇用保険の対象外で失業保険をもらえない人には、求職者支援制度があります。
職業訓練を無料で受けながら、条件を満たすと月10万円の生活支援給付金を受け取れます。

内容

詳細

対象

雇用保険非加入・給付終了者など

支給額

月10万円+交通費

条件

本人収入月8万円以下、世帯収入25万円以下など

期間

3〜6か月

実施機関

ハローワーク(職業訓練校と連携)

参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyushokusha_shien/index.html

この制度を利用すれば、雇用保険に入っていなかった人でも、
新しいスキルを学びながら生活支援を受けることができます。
介護・事務・IT・製造など多様な職業訓練コースがあり、再就職率も高い制度です。

勤続1年未満での退職ケース別シミュレーションとまとめ

ここでは、実際に「勤続1年未満で退職した場合に、どのような結果になるのか」を具体的なケースで確認します。
失業保険がもらえるかどうか、またもらえない場合にどの制度を利用すべきかを整理していきましょう。

ケース①:契約社員が7か月で契約終了(会社都合)

  • 雇用形態:契約社員
  • 勤続期間:7か月
  • 雇用保険:加入あり
  • 退職理由:契約更新を希望したが、会社都合で更新されず

 

この場合、「雇止めによる会社都合退職」と判断される可能性が高いです。
離職票の理由コードが「21」や「31」などであれば、特定受給資格者として受給対象になります。

項目

内容

被保険者期間

6か月以上(要件クリア)

給付制限

なし

支給開始

待機7日後

給付日数

約90日(年齢により変動)

このケースでは、勤続1年未満でも問題なく受給可能です。
契約社員や派遣社員は誤って「自己都合」と記載されることもあるため、
離職票の内容確認が重要です。

ケース②:正社員が10か月で体調不良により退職(特定理由離職)

  • 雇用形態:正社員
  • 勤続期間:10か月
  • 雇用保険:加入あり
  • 退職理由:体調を崩して勤務継続が困難

医師の診断書などで「業務に支障がある」と証明できる場合、
特定理由離職者として認定され、給付制限なく受給が可能です。

項目

内容

被保険者期間

6か月以上

給付制限

なし

必要書類

医師の診断書(就労制限の記載があるもの)

支給開始

待機7日後

一方で、診断書などの客観的証拠がなければ「自己都合退職」と判断され、
10か月では受給資格を満たさなくなるため注意が必要です。

ケース③:パート勤務5か月で自己都合退職(雇用保険未加入)

  • 雇用形態:週15時間勤務のパート
  • 勤続期間:5か月
  • 雇用保険:未加入
  • 退職理由:家庭の都合による自己都合

このケースでは、週20時間未満の勤務のため雇用保険対象外です。
そのため、失業保険の受給資格はありません。
しかし、次の制度が利用可能です。

利用制度

内容

求職者支援制度

無料の職業訓練+月10万円の生活支援

条件

本人収入月8万円以下・世帯収入25万円以下

手続き

ハローワークで求職登録し、訓練コースを選択

この制度を活用すれば、雇用保険に入っていなかった人でも、
生活を維持しながら再就職につながるスキルを身につけることができます。

ケーススタディまとめ表

ケース

勤務期間

離職理由

雇用保険

受給可否

契約社員7か月

会社都合(契約終了)

加入あり

給付制限なし

正社員10か月

健康上の理由(特定理由離職)

加入あり

診断書必須

パート5か月

自己都合・短時間勤務

未加入

×

求職者支援制度で代替可

申請から受給までの基本的な流れ

1.会社から離職票を受け取る

退職後10日程度で交付。離職理由を必ず確認。

2.ハローワークで求職申込みと受給手続き

離職票・マイナンバーカード・通帳などを持参。

3.7日間の待機期間

この期間中に就職した場合は対象外。

4.受給説明会に参加

制度の説明と「受給資格者証」の交付。

5.4週間ごとの認定日で失業状態を報告

失業が認定されると、28日分の給付金が振り込まれる。

よくある質問(Q&A)

Q1. 試用期間中に退職しました。失業保険はもらえますか?

→ 被保険者期間が6か月未満であれば対象外です。ただし、過去の勤務を合算できる場合もあるため、前職分を含めて確認を。

Q2. 離職票に「自己都合」と書かれていたが、実際は会社の都合でした。

→ ハローワークで異議申し立てが可能です。解雇通知や雇止め証拠を提出すれば訂正されることがあります。

Q3. 雇用保険に入っていなかったが、働いた証拠があります。

→ 出勤簿や給与明細を持ってハローワークに相談しましょう。要件を満たせば遡及加入が認められる場合もあります。

まとめ:1年未満でも諦めずに確認を

  • 6か月以上勤務していれば受給の可能性あり
  • 会社都合・特定理由離職なら給付制限なしで支給開始
  • 6か月未満または未加入者も「求職者支援制度」で生活支援が可能

勤続1年未満でも、退職理由や証明書類次第で制度を利用できる場合があります。受給要件については「社会保険給付金サポート」でもご相談可能です。退職後の生活における金銭面に不安がある方は自身の失業保険の総額が可能かどうかお気軽にお問い合わせください。

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この記事の監修者

萩原 伸一郎

CREED BANK株式会社

ファイナンシャルプランナー(FP)資格を持ち、東証一部上場企業に入社。資産形成、資産運用、個人のライフプランニングなどを経験。これまでに10,000名以上の退職後のお金や退職代行に関する相談などを対応した経験から、社会保険や失業保険についてわかりやすく解説。

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