2025.10.17
失業保険について
テーマ:
失業手当と扶養の関係を徹底解説(2025年版)|受給中に扶養に入れる?外れる?
「失業手当をもらいながら配偶者の扶養に入れるのか」「いつ扶養から外れるのか」。この記事は、2025年10月時点の最新制度にもとづき、健康保険の被扶養者認定と雇用保険(基本手当)の関係を整理していきます。
失業手当(基本手当)の基礎
制度の位置づけと受給の流れ
雇用保険の基本手当は、離職後の再就職活動を支える給付です。求職申込み→7日間の待期→(自己都合等では)給付制限→4週間ごとの認定という流れが基本です。給付期間は原則「離職日の翌日から1年以内」。
参考:https://jsite.mhlw.go.jp/hyogo-roudoukyoku/content/contents/000550665.pdf
2025年4月1日以降に「正当な理由のない自己都合」で退職した場合の給付制限は原則1か月。
ただし、退職日からさかのぼって5年以内に2回以上、正当な理由なく自己都合退職で受給資格決定を受けた人は3か月。
基本手当日額の上限・下限(2025年8月1日改定反映)
2025年8月1日から、賃金日額と基本手当日額の上限・下限が改定されています(年齢区分あり)。要点は次の通りです。
基本手当日額の上限
- 29歳以下:7,255円
- 30~44歳:8,055円
- 45~59歳:8,870円
- 60~64歳:7,623円
基本手当日額の下限(全年齢)
- 2,411円
賃金日額の上下限(例):29歳以下の賃金日額上限14,510円、下限6,570円(59歳以下) など
参考:https://www.mhlw.go.jp/content/001520021.pdf
「扶養」とは(本記事では社会保険上の扶養を扱います)
健康保険の被扶養者は、生計維持関係などの要件に加え、年間収入が原則130万円未満(60歳以上・一定の障害者は180万円未満)等の基準を満たす必要があります(協会けんぽ基準)。
参考:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3160/sbb3163/1959-230/
ただし、扶養可否は失業手当の受給そのものではなく、支給額水準(基本手当日額)や年間収入見込みで判断されます。多くの健康保険組合は、基本手当日額が3,612円以上(60歳以上は5,000円以上)の場合被扶養者認定不可とする運用例を示しています(給付制限中・待期中は可)。
失業手当と扶養の関係
- 待期7日・給付制限中:支給が無い(または見込まれない)ため、扶養認定可とする組合が多数。
- 受給開始後:基本手当日額の水準(例:3,612円以上 等)や年間見込みにより、扶養から外れる取り扱いが一般的。
- 喪失のタイミング:受給が始まった日(給付制限終了翌日や待期満了翌日など)をもって扶養喪失とする取扱いが明示される例が多い。
次章では「入れる/入れない」を金額・期間で判定する実例と、待期・給付制限中の扱いを詳説します。
失業手当の受給中、扶養に入れる?入れない?目安早見表(2025年版)
状況 |
扶養の一般的取扱い(例) |
待期7日・給付制限中 | 扶養可(ただし将来受給開始時は喪失手続) |
受給開始・基本手当日額3,612円以上 |
扶養不可(60歳以上は5,000円基準の例) |
受給開始・基本手当日額3,611円以下 |
組合によっては扶養可 |
被扶養者認定は保険者ごとに細則や運用が異なるため、加入先の組合規定を必ず確認してください。
扶養を外れた場合の国民年金保険料(2025年度)は月額17,510円です(付加保険料は+400円/月、任意)。
失業手当受給中に扶養に入れるケース・入れないケース(2025年最新版)
基本的な考え方
失業手当を受け取っているかどうかではなく、「支給される金額」と「収入見込み」が扶養認定の判断基準になります。
多くの健康保険組合では、基本手当日額が3,612円以上(60歳以上・障害者は5,000円以上)と見込まれる場合、
「年間収入が130万円(または180万円)を超える」と判断され、扶養に入れません。
反対に、3,611円以下であれば、年間収入が約130万円未満に収まるため、扶養内とみなされることが多くなります。
ただし、あくまで目安であり、保険者ごとの細則に従う必要があります。
扶養に「入れる」ケース
ケース1:基本手当日額が低い場合(3,611円以下)
年間換算(3,611円 × 30日 × 12か月 = 約130万円未満)で収入が基準を下回るため、多くの組合で扶養認定可能です。
MUFG健康保険組合、FR健康保険組合、太陽日酸健康保険組合などではこの数値を基準としています。
参考:FR健康保険組合 Q&A
ケース2:待機期間・給付制限期間中
待機期間(7日間)や給付制限期間中は、失業手当が支給されていません。
そのため、「収入がない」と見なされ、扶養に入ることが可能です。
ただし、給付制限が終了して支給が始まると扶養喪失手続きが必要になります。
保険証返却や国保加入の準備をしておくとスムーズです。
ケース3:受給期間が短く年間見込みが130万円未満の場合
例えば、受給期間が90日で基本手当日額が5,000円の場合、
5,000円 × 90日 = 45万円の見込み収入。
この場合は130万円未満となるため、扶養認定されることがあります。
ただし、短期受給でも日額が高額(8,000円以上)の場合は対象外となる場合もあります。
扶養に「入れない」ケース
ケース1:基本手当日額が3,612円以上(60歳以上は5,000円以上)
この場合は、年間見込み収入が130万円を超えるとみなされ、
被扶養者認定から除外されるケースが一般的です。
ケース2:長期受給(270日~1年)の場合
日額が3,600円台でも、長期受給で総額が130万円を超えると扶養不可になります。
例:3,611円 × 270日 = 約97万円 → 扶養可
5,000円 × 270日 = 約135万円 → 扶養不可
ケース3:アルバイト・業務委託等の副収入がある場合
失業手当以外の収入も年間収入に合算して判断されます。
少額でも副業や一時収入がある場合、扶養基準を超える可能性があります。
ケース別シミュレーション(2025年基準)
条件 |
基本手当日額 |
受給期間 |
年間換算見込み |
扶養判定(目安) |
Aさん(30歳) |
3,500円 |
90日 |
約31万円 |
扶養可能 |
Bさん(35歳) |
4,000円 |
180日 |
約72万円 |
扶養可能 |
Cさん(40歳) |
5,000円 |
270日 |
約135万円 |
扶養不可 |
Dさん(55歳) |
7,000円 |
90日 |
約63万円 |
扶養可能(短期) |
Eさん(60歳) |
5,100円 |
90日 |
約45万円 |
扶養不可(60歳以上基準超) |
※表はあくまで一般的な目安であり実際の認定は健康保険組合の判断によります。
給付制限期間中・待機期間中の取り扱い(2025年版)
2025年4月から、自己都合退職の給付制限期間は原則1か月となりました。
この間は失業手当の支給が行われないため、扶養に入ることが可能です。
ただし、制限期間が終了して受給が始まると即日扶養喪失となるケースが多い点に注意してください。
高年齢求職者給付金と扶養の関係
60歳以上の離職者には、高年齢求職者給付金(一括支給型)が支給されます。
これは「基本手当の短期一括支給版」で、支給総額が扶養判定の基準になります。
たとえば支給総額が40万円程度であれば扶養内とされるケースもありますが、
130万円(180万円)を超える場合は扶養対象外です。
扶養可否の判断は「日額×期間」で決まる
チェック項目 |
判断基準(2025年) |
基本手当日額 |
3,612円未満(60歳以上5,000円未満)なら扶養可 |
給付期間 |
短期(90日など)なら扶養可の余地あり |
待機・制限期間 |
扶養に入れる(受給開始後は喪失) |
副収入 |
合算して130万円超なら扶養不可 |
高年齢求職者給付金 |
支給総額で判断(40万円程度なら扶養内の例あり) |
失業手当と扶養、どちらを優先すべきか
失業手当を受給しながら配偶者の扶養を維持できるかは、金額と期間のバランスで判断されます。
しかし、実際には「扶養を維持して保険料負担を減らす」か、「失業手当を受給して収入を得る」かで悩む方が多いでしょう。
ここでは、それぞれの選択肢のメリット・デメリットを整理します。
失業手当を優先するメリット・デメリット
メリット
- 一定期間、生活費の補填が受けられる(最大で離職前賃金の45~80%)
- 再就職手当などの追加給付を受ける可能性がある
- 公的な求職活動支援を受けられる
デメリット
- 扶養から外れるため、健康保険料・国民年金保険料を自己負担する必要あり
- 国民健康保険料は前年所得ベースで算出され、退職直後でも高額になる場合がある
- 手続き(国保・任意継続・年金切替など)が煩雑
扶養を優先するメリット・デメリット
メリット
- 健康保険料・年金保険料がゼロ円(扶養者が負担)
- 医療給付を継続して受けられる
- 家計全体の保険料負担を軽減できる
デメリット
- 基本手当日額が一定額を超えると扶養認定が取り消しになる
- 扶養喪失後の再加入手続きが必要
- 失業手当を受けない場合、収入がなく生活費を貯蓄から賄う必要
どちらを選ぶべきか?判断の目安
状況 |
推奨される対応 |
基本手当日額が3,611円以下(または5,000円以下) |
扶養を維持(健康保険料・年金負担が軽い) |
受給期間が短期(90日程度) |
扶養維持を検討(受給総額130万円未満の可能性) |
給付期間が長期 or 日額が高い |
失業手当を優先(国保・年金負担あり) |
再就職までの期間が不明 |
失業手当を受け、生活の安定を確保 |
扶養を外れた場合の手続きと費用(2025年度基準)
1. 扶養喪失のタイミング
失業手当の支給が開始された日(=給付制限明けまたは待機期間終了翌日)に、扶養喪失となるのが一般的です。
保険証は返却し、14日以内に新しい保険への加入手続きを行います。
2. 国民健康保険への加入
市区町村役場で手続き。
保険料は前年所得を基に算出され、年間約20〜40万円前後になるケースが多いです。
(所得0円でも均等割・平等割により数万円は発生します)
3. 任意継続被保険者制度の利用
退職前の健康保険を最長2年間継続できる制度です。
会社負担分を含めた全額自己負担となるため、現役時の約2倍の保険料となりますが、
国保よりも安い場合も多いため比較が重要です。
4. 国民年金への切り替え(2025年度保険料)
扶養から外れると、国民年金第1号被保険者として自分で保険料を支払います。
2025年度の保険料は、月額17,510円(年間210,120円)となっています。
なお、所得が低い場合は「免除制度」や「納付猶予制度」も利用可能です。
5. 扶養への再加入(再扶養)
失業手当の支給が終了したら、再度配偶者の扶養に戻る(再認定)ことが可能です。
必要書類の例:
- 雇用保険受給終了証明書
- 離職票または支給終了通知書
- 所得証明書
再認定の可否は各組合の基準に従います。
税制上の扶養との違い
社会保険上の扶養と、税制上の扶養(配偶者控除・扶養控除)は別の制度です。
区分 |
判定基準 |
判断主体 |
主な効果 |
社会保険上の扶養 |
年間収入130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満) |
健康保険組合 |
保険料ゼロで被保険者の保険に加入 |
税制上の扶養 |
所得48万円以下(給与収入103万円以下) |
税務署 |
所得税・住民税が軽減される |
つまり、失業手当は非課税のため、
税制上の扶養には含まれず、社会保険上のみ影響します。
よくある質問(Q&A)
Q1:扶養から外れるときの手続き期限は?
→ 喪失日から14日以内に国保加入、または任意継続の申請を行う必要があります。
Q2:給付制限期間中に扶養申請し、後で受給が始まった場合は?
→ 支給開始日に遡って扶養喪失扱いとなり、保険証返却・再手続きが必要です。
Q3:失業手当をもらっていても税制上の扶養に入れる?
→ 失業手当は非課税所得のため、他に収入がなければ配偶者控除の対象になります。
まとめ:2025年10月時点の最新基準で確認を
- 2025年4月以降の自己都合退職は給付制限1か月(例外で3か月)
- 基本手当日額の上限・下限は2025年8月改定値(上限8,870円/下限2,411円)
- 扶養の基準は基本手当日額3,612円未満(60歳以上5,000円未満)
- 国民年金保険料は月額17,510円(2025年度)
- 扶養喪失後は国保または任意継続で対応し、受給終了後に再扶養可
その他にも、失業保険の申請には様々なルールや条件が存在します。自分が給付金の対象となるかどうか知りたい方は「社会保険給付金サポート」へお問い合わせください。
この記事の監修者

萩原 伸一郎
CREED BANK株式会社
ファイナンシャルプランナー(FP)資格を持ち、東証一部上場企業に入社。資産形成、資産運用、個人のライフプランニングなどを経験。これまでに10,000名以上の退職後のお金や退職代行に関する相談などを対応した経験から、社会保険や失業保険についてわかりやすく解説。
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