2025.10.17

失業保険について

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失業手当(失業保険)をもらいながら扶養に入れる?条件や手続き方法を解説

失業手当のイメージ

退職後は収入が減り、社会保険料や税金の支払いが大きな負担になることがあります。そのため「失業手当を受け取りながら扶養に入れるのか」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

実は、扶養には「社会保険上の扶養」と「税制上の扶養」の2種類があり、条件や扱いが異なります。本記事では、失業手当の受給中に扶養に入れるかどうかを分かりやすく解説し、損をしない加入のタイミングを紹介します。

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失業手当の受給中は扶養に入れる?

扶養する家族がいる様子家族の扶養に入れれば、税金や社会保険料の支払いはなくなると考える方もいるかもしれませんが、実は扶養に入るためには条件を満たさなくてはいけません。

失業手当の受給中に扶養に入る条件を「社会保険上の扶養」と「税制上の扶養」に分けて解説します。

社会保険上の扶養に入る条件

詳しくは後述しますが、社会保険上の扶養とは「健康保険と厚生年金に加入している家族の被扶養者になる」ことを指します。この後に紹介する「税制上の扶養」とは考え方が異なるため、それぞれの違いを理解することが重要です。

原則として、失業手当の受給中は社会保険上の扶養には入れません。

しかし、60歳未満の人で失業手当の基本手当日額が3,611円以下の場合は、被扶養者になることが可能です。60歳以上の人や障害年金の受給者で、基本手当日額が4,999円以下の場合も加入できます。

また、失業手当の受給が始まる前の待期期間中や給付制限期間中、受給延長期間中は扶養に入れます。

税制上の扶養に入る条件

失業手当の受給中に、税制上の扶養に入ることは可能です。

「税制上の扶養」とは、家計を支える納税者の所得控除にかかわる扶養のことです。社会保険上の扶養との違いなど、詳しくは後述します。

失業手当は非課税であり、所得という扱いにならないため所得控除には関係ありません。そのため、失業手当以外の給与収入が一定以下であれば、税制上の扶養に入り、配偶者控除や配偶者特別控除などの控除を受けられます。

  • 配偶者控除:103万円以下(令和7年度税制改正により123万円以下)
  • 配偶者特別控除:150万円以下(令和7年度税改正により160万円以下)

参考:国税庁|No.1191 配偶者控除国税庁|令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について

失業手当とは?

失業手当とは、失業した人の生活を安定させ、再就職を支援するために支給される給付金です。失業したら誰でももらえるものではなく、一定の条件を満たす必要があります。

ここでは、失業手当をもらう条件と受給額の計算方法、手続き方法を解説します。

失業手当の受給条件

失業手当を受給するためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 雇用保険の加入期間が離職前2年間で通算12か月以上
  • 失業状態にある

 

条件の「失業状態にある」というのは、以下の状態を指します。

  • 積極的に就職しようとする意思がある
  • いつでも就職できる能力がある
  • 本人やハローワークの努力によっても職業に就けていない

 

上記を満たしたうえで、ハローワークで求職の申込みをして、受給資格が決定すると受給できるようになります。

受給額の計算方法

失業手当の受給額は、「基本手当日額×支給日数」で計算できます。

基本手当日額とは、失業手当として受け取れる1日分の金額のことです。「賃金日額×給付率」で計算します。基本手当日額は、前述のとおり社会保険上の扶養にも影響します。

賃金日額は、退職日直前の6か月間に毎月決まって支払われていた賃金を180日で割って、1日分に換算したものです。

また、給付率は45%〜80%の間で、離職時の年齢と賃金日額によって決められています。基本的に、年齢が若いほど、賃金日額が低いほど給付率は高く設定されています。2025年8月時点の賃金日額と給付率、基本手当日額を年齢別にまとめました。

・29歳以下

賃金日額

給付率

基本手当日額

3,014円以上5,340円未満

80%

2,411円〜4,271円

5,340円以上13,140円以下

80%〜50%

4,272円〜6,570円

13,140円未満14,510円以下

50%

6,570円〜7,255円

14,510円超(上限)

7,255円(上限)

 

・30歳〜44歳

賃金日額

給付率

基本手当日額

3,014円以上5,340円未満

80%

2,411円〜4,271円

5,340円以上13,140円以下

80%〜50%

4,272円〜6,570円

13,140円未満16,110円以下

50%

6,570円〜8,055円

16,110円超(上限)

8,055円(上限)

 

・45歳〜59歳

賃金日額

給付率

基本手当日額

3,014円以上5,340円未満

80%

2,411円〜4,271円

5,340円以上13,140円以下

80%〜50%

4,272円〜6,570円

13,140円未満17,740円以下

50%

6,570円〜8,870円

17,740円超(上限)

8,870円(上限)

 

・60歳〜64歳

賃金日額

給付率

基本手当日額

3,014円以上5,340円未満

80%

2,411円〜4,271円

5,340円以上13,140円以下

80%〜45%

4,272円〜5,310円

13,140円未満16,940円以下

45%

5,310円〜7,623円

16,940円超(上限)

7,623円(上限)

参考:厚生労働省|雇用保険の基本手当日額が変更になります〜令和7年8月1日から〜

失業手当を受け取る基本の流れ

退職から失業手当を受け取る流れは、主に以下のとおりです。

  1. 退職後、会社から離職票を受け取る
  2. 必要書類を持参し、ハローワークで求職の申込みを行う
  3. 7日間の待期期間を過ごす
  4. 雇用保険初回説明会に参加し、雇用保険受給資格者証を受け取る
  5. 求職活動を行い、失業認定を受ける
  6. 失業手当が振り込まれる
  7. 以降、所定給付日数分を受け取るまで求職活動と失業認定を繰り返す

 

正当な理由のない離職者や重責解雇された人など給付制限がかかる場合、その間は失業手当を受け取れません。待期期間中と給付制限期間中は無収入となるため、条件を満たせば社会保険上の扶養に入れます。

扶養とは

そもそも扶養は、「社会保険上の扶養」と「税制上の扶養」の2つに分けられます。それぞれ条件やメリットが異なるため、ここで詳しく解説します。

社会保険上の扶養

「社会保険上の扶養」とは、健康保険や厚生年金といった社会保険に加入している家族の扶養に入ることです。被扶養者は保険料を支払う必要はなく、社会保険を受けられるようになります。

ただし、前述の通り失業手当の受給額が一定以上の場合は、自分で保険料を支払う能力があると判断されるため、被保険者にはなれません。

扶養に入る具体的な条件は以下のとおりです。原則として、同一世帯の場合は扶養に入る人の年間収入が130万円未満、かつ被保険者の2分の1未満が該当します。

  • 社会保険に加入している人の父母、祖父母、配偶者、子、孫、兄弟姉妹など被保険者に生計維持されている人
  • 三親等以内の親族などで、被保険者と同一世帯で生計維持されている人

参考:全国健康保険協会|被保険者とは?

税制上の扶養

「税制上の扶養」とは、生計を維持している人がいる納税者の所得税や住民税の負担を軽くするための制度です。納税者の配偶者であれば配偶者控除、配偶者以外の親族で同一生計の人であれば扶養控除の対象になることがあります。

税制上の扶養に入るためには、被扶養者となる人の年間合計所得金額が48万円以下、給与収入のみの場合は合計103万円以下が条件です。前述のとおり、失業手当は非課税所得となるため、その他の所得がなければ受給中でも税制上の扶養に入れます。

失業手当の受給中に社会保険上の扶養に入るタイミング

失業手当の受給中でも条件を満たせば社会保険上の扶養に入れますが、タイミングによっては損してしまうことがあります。ここでは、扶養に入れる時期やベストなタイミングを紹介します。

基本的には退職後すぐがベスト

退職すると会社で入っていた社会保険は資格喪失となり、再就職まで国民健康保険や国民年金に加入する必要があります。切り替え後、社会保険料の支払いが開始されるため、退職したらまずは家族の扶養に入る手続きを行いましょう。

失業手当の受給が始まるまでは社会保険上の扶養に入れるため、退職後から受給開始までの期間は入っておくと社会保険料の負担を減らせます。特に給付制限がかかる人は、受給が始まるまで1か月以上かかることがあります。その間は無収入にもかかわらず、社会保険料の支払いが必要になるため、退職したらできるだけ早く扶養に入る手続きを進めることが大切です。

受給中は外れる必要がある

失業手当の受給開始までは社会保険上の扶養に入れますが、受給が始まると受け取る金額によっては外れなくてはいけません。ただし、60歳未満で基本手当日額が3,611円以下の人は、そのまま加入し続けられます。

知らずに扶養に入り続けたままになると不正受給とみなされ、過去の社会保険料の支払いを求められることがあるため注意が必要です。

不正受給と判断された期間に、健康保険を使って医療機関を受診した場合、健康保険組合が負担した分の支払いを請求されることもあります。受給が始まる際は、すみやかに扶養を外れる手続きを行いましょう。

受給終了後に社会保険上の扶養に入ることも可能

失業手当の受給終了後に就職しない場合、条件を満たせば社会保険上の扶養に再び入ることも可能です。

失業手当が支給される日数は、90日〜330日です。総額が一括で振り込まれるのではなく、約28日分ずつ支給されるため、そこから毎月の社会保険料を支払う必要があります。

職業に就いているときより収入が減ったことで社会保険料の支払いが困難な場合は、減額や免除、納付猶予などの制度も利用できます。必要に応じて、減額や免除が可能か市区町村役場で相談しましょう。

失業中に社会保険上の扶養に入るときの手続き

失業手当の受給中に社会保険上の扶養に入る場合は、以下の手順で手続きを進めます。

  1. 扶養に入れる条件を確認する
  2. 5日以内に書類を準備して提出する
  3. 被扶養者認定が決定される
  4. 健康保険証が発行される

 

それぞれの手順を詳しくみていきましょう。

扶養に入れる条件を確認する

まずは、扶養に入れるか条件を確認しましょう。基本的な加入条件は以下のとおりです。

  • 年収が130万円未満
  • 失業手当の受給中であれば、基本手当日額が3,611円以下

 

上記以外にも、各健康保険組合が提示する条件を満たす必要があります。詳細は、扶養する家族の会社に問い合わせが必要です。

5日以内に書類を準備して提出する

手続きは、扶養に入る必要が生じた日から5日以内に行う必要があります。扶養者の会社に手続きを依頼し、必要書類を揃えて提出しましょう。

5日を過ぎてしまった場合も手続きは可能ですが、保険組合に書類が到着した日が被扶養者と認定された日になるため、加入が遅れる原因になります。この場合は「遅延理由書」を提出し、正当な遅延理由があったと証明されれば、実際の事由発生日が認定日となる場合もあります。

提出が必要な書類も各健康保険組合によって異なりますが、一般的には「被扶養者異動届」や「住民票」、「健康保険資格喪失証明書の写し」などが必要です。収入がない人は所得証明書など、状況に応じて必要書類が異なるため、会社を通じて問い合わせしておくと安心でしょう。

被扶養者認定が決定される

会社を通して必要書類が健康保険組合に届くと、被扶養者と認定するための審査が開始されます。審査期間は時期や健康保険組合によって異なりますが、書類に不備があると認定までの期間が延びることがあるため、ミスのないよう記入しましょう。

健康保険証が発行される

被扶養者に認定されると、健康保険証が発行されます。入社手続きの多い4月など、時期によっては手元に届くまでに2週間以上かかることがあります。

マイナ保険証の場合は、認定後に情報登録されるまで新しい保険証は使えません。情報が更新されると使えるようになります。

健康保険証が手元に届くまでの期間に医療機関を受診する場合は、医療費を一旦全額負担し、保険証が届いてから健康組合に自己負担分以外の払い戻しを依頼します。以前の健康保険証を使ってしまうと、無資格受診となり医療費を変換しなくてはならないため、誤って使わないように注意しましょう。

失業手当の受給中に税制上の扶養に入る手続き

扶養の手続きの様子

税制上の扶養に入るときは、扶養者が年末調整を受けるか、確定申告するかによって手続き方法が異なります。それぞれの場合に分けて、手続きの仕方を解説します。

扶養者が年末調整を受ける場合

扶養する人の所得が給与所得だけで確定申告しない場合は、会社の年末調整で配偶者控除や扶養控除を申告します。年末調整の際、「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」と必要な添付書類を揃えて会社に提出することで、税制上の扶養として手続きされます。

税制上の扶養は12月31日時点の扶養状況が反映されるため、年の途中で入ったり外れたりする手続きは必要ありません。年の途中で失業し、家族の収入で暮らしていたとしても、その年の12月31日に就職している場合は、配偶者控除や扶養控除の申告は不要です。

扶養者が確定申告する場合

扶養する人が会社で年末調整を受けない場合、翌年の確定申告で扶養控除や配偶者控除の申告が必要です。

確定申告書の配偶者控除や扶養控除の欄に必要事項を記入し、確定申告の時期に住所地の税務署に提出します。年末調整で申告し忘れてしまった場合でも、還付申告することで払い過ぎた税金の還付手続きが可能です。

失業手当の受給中に扶養に入る際によくある質問

失業手当を受給している人が扶養に入るときに多い不安や疑問点をピックアップし、詳しく回答します。

扶養から外れるときの手続きは?

失業手当の受給中や就職により家族の扶養から外れるときは、扶養者が勤める会社を通じて各健康保険組合に「被扶養者異動届」の提出が必要です。

国民健康保険や国民年金、別の保険組合の健康保険に加入したからといって、自動的に切り替えられるわけではないので注意しましょう。

知らずに扶養に入ってしまったらどうなる?

失業手当の受給中、条件を満たしていないのに扶養に入ってしまった場合は、すみやかに扶養を外れる手続きをしましょう。

その際、条件を満たしていなかった期間に受けた医療費などの返還や、その他のペナルティを受ける可能性があります。

失業手当と扶養どちらが得?

失業手当を受給するか、扶養に入るかどちらが得かは状況によって異なります。例えば、受給額が社会保険料を上回るのであれば、扶養に入らず失業手当を受け取るほうが得になります。

一方、社会保険料の負担が大きくマイナスになるのであれば、扶養に入って社会保険料の負担を減らすほうが得になる可能性があります。

収入が減ったことで、社会保険料を支払えなくなったときは、免除や減額できる制度もあるため、一概にどちらが得とは言えません。自分だけでなく家族の収入も加味して、得になる選択肢を選ぶことが大切です。

まとめ

失業手当を受け取りながら、家族の扶養に入ることは可能ですが、一定の条件を満たす必要があります。また、タイミングによっては加入できないケースもあるため、個々の状況に応じた対応が必要です。

失業手当の受給中に扶養に入れるのか、入る場合はどのような手続きが必要なのか不安がある場合は、「社会保険給付金サポート」を活用してみましょう。

社会保険給付金サポートでは、退職後のお金の不安に寄り添い、社会保険給付金を受け取る際のベストな方法をご提案します。手続きの際も丁寧にサポートしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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この記事の監修者

杉山 雅浩

スピネル法律事務所 弁護士

東京弁護士会所属。
池袋中心に企業顧問と詐欺被害事件に多く携わっています。
NHKやフジテレビなど多くのメディアに出演しており、
詐欺被害回復などに力を入れている個人に寄り添った弁護士です。

YouTubeの他、NHK、千葉テレビ、日本テレビ、東海テレビ、FM西東京、フジテレビ、共同通信社、時事通信社、朝日新聞、朝日テレビ、読売新聞、日本経済新聞、毎日新聞、TBS、CBCテレビ、名古屋テレビ、中日新聞その他数多くのネット記事、週刊誌多数のメディアに取材されたり、AbemaTV、NHKスペシャル、クローズアップ現代、バイキングモア、おはよう日本、など有名番組に出演してます!

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