2025.10.07

失業保険について

年金と失業保険を同時にもらう方法はある?年齢別の受給方法を解説

年金手帳を確認する女性

60歳以降に退職した場合、年金の受給開始時期と失業保険の手続きが重なり、同時にもらえるのか気になる方は多いでしょう。実は、条件や年齢によってどちらかが減額されることもあれば、タイミング次第で両方満額受け取れることもあります。

ただし、年金と失業保険の手続きは煩雑なため、損しないためには仕組みを正しく理解しておくことが重要です。そこで本記事では、年金と失業保険をもらうために知っておきたい基礎知識を解説したうえで、同時に受け取れる条件や方法を紹介します。

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年金と失業保険は同時にもらえる?

年金手帳を確認する男性
実は、年金と失業保険を同時にもらう方法はあります。ただし、年金や失業保険の種類や個々の状況によって、実際にもらえるかどうかは変わります。

制度が複雑なため、同時にもらう際に知っておきたい基礎知識をまとめました。

公的年金とは

公的年金とは、高齢や障害などが原因で本人や家族の働き手が働けなくなったときに支給されるお金です。社会保障制度の一つで、原則として20歳以上60歳未満の人すべてが加入します。

一般的に「年金」と言うと、「老齢基礎年金」や「老齢厚生年金」を指します。「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」は、受給資格期間が10年以上ある人が原則65歳から受け取れる年金です。繰上げ受給を選択すると60歳から受給できるようになりますが、月0.4%、最大24%減額されます。

一方、繰下げ受給を選ぶと、66歳から75歳までの間で自由に受給開始時期を決められ、繰下げた月数に応じて月0.7%、最大84%増額されます。つまり、特別な手続きをしない場合の老齢年金は65歳から支給されますが、実際は受け取り開始時期を選択でき、60歳から受け取ることも可能です。

失業保険とは

失業保険とは、雇用保険に一定期間以上加入していた人が退職し、再就職を目指す場合に支給される給付金です。正式には雇用保険と呼ばれています。

少しでも早く失業状態から抜け出し、就職して生活を安定させることを支援するための制度で、複数の給付金制度が用意されています。

失業保険のなかでも、求職者の支援の基礎となる給付金は「基本手当」です。基本手当を指して、「失業保険」「失業手当」と呼ばれることもあります。

受給できるのは働く意欲があり、心身ともに働ける状況にある人が対象です。65歳以上の年金支給対象者でも、働ける状況にあれば失業保険の支給対象になることがあります。

失業保険でもらえる給付金の種類

失業保険には、再就職を支援するためのさまざまな給付制度が用意されています。その中でベースとなる給付制度には、主に以下の種類があります。

  • 基本手当
  • 高齢雇用継続給付金
  • 高齢求職者給付金

 

ここでは、それぞれの給付金の特徴や受給条件を解説します。

基本手当

基本手当とは、失業中の生活を安定させ、1日でも早い就職を促すための給付金です。64歳までが対象で、受給には以下の条件を満たす必要があります。

  • 就職しようとする積極的な意思がある
  • いつでも就職できる能力がある
  • 失業状態にある

 

上記の条件を満たしたうえで、雇用保険の加入期間が離職日以前の2年間に通算12か月以上必要です。ただし、会社都合ややむを得ない事情により退職した人は、加入期間の条件が緩和されることがあります。

給付金は原則4週間ごとに支給され、退職理由や雇用保険の加入期間、年齢により90日〜360日の間で給付日数が決まる仕組みです。一般的に、会社都合で退職した人や雇用保険の加入期間が長い人は給付日数が多くなる傾向にあります。

高年齢雇用継続給付

高年齢雇用継続給付には、以下の2つの給付金があります。

  • 高年齢雇用継続基本給付金
  • 高年齢再就職給付金

 

高年齢雇用継続基本給付金とは、基本手当を受給していない人のうち、60歳以降も働く人を対象とした給付金です。

原則として、60歳時点の賃金と60歳以後の賃金を比べたときに、60歳時点の75%未満となった人が、以下の条件を満たす場合に賃金の最高10%相当額が支給されます。

  • 60歳以上65歳未満の雇用保険の一般被保険者
  • 雇用保険の加入期間が5年以上

 

一方、高年齢再就職給付金は、60歳以上65歳未満の基本手当を受給した人が早期に再就職した場合に、以下の条件を満たすと受け取れる給付金です。

  • 基本手当を受給したときの雇用保険の加入期間が5年以上
  • 再就職した日の前日までの基本手当の支給残日数が100日以上
  • 1年を超えて引き続き雇用されることが確実な職業への再就職
  • 今回の再就職で再就職手当を受けていない

 

高年齢求職者給付金

高年齢求職者給付金は、雇用保険の高年齢被保険者に該当する人が失業した場合に、以下の条件を満たすと一括支給されます。高年齢被保険者とは、65歳以上の雇用保険加入者のことです。

就職しようとする積極的な意思がある
いつでも就職できる能力がある
失業状態にある

上記を満たしたうえで、離職日以前の1年間に雇用保険の被保険者期間が通算6か月以上ある場合が支給対象です。雇用保険の加入期間による給付金額の違いを、以下の表にまとめました。

雇用保険の被保険者期間

給付金額

1年以上

50日分

1年未満

30日分

参考:ハローワークインタネットサービス|基本手当について

公的年金制度の種類

公的年金制度は2階建て構造になっており、1階部分はすべての人が加入する国民年金(基礎年金)、2階部分は厚生年金です。

会社員や公務員は基礎年金と厚生年金の両方に加入してますが、個人事業主などの自営業者は基礎年金のみとなっています。基礎年金と厚生年金には、それぞれ以下の種類があります。

  • 老齢年金
  • 遺族年金
  • 障害年金

 

ここでは、公的年金制度の種類を解説します。

老齢年金

老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)とは、一定の条件を満たすと原則として65歳から受け取れる年金です。国民年金や厚生年金の加入期間、繰上げ・繰下げ制度の利用に応じて支給額が異なります。

以下の条件を満たす場合、老齢厚生年金とは別に60歳から64歳まで「特別支給の老齢厚生年金」を受け取れる可能性があります。

  • 昭和36年4月1日以前に生まれた男性
  • 昭和41年4月1日以前に生まれた女性
  • 老齢基礎年金の受給資格が10年以上ある
  • 厚生年金に1年以上加入していた

 

遺族年金

遺族年金とは、年金の被保険者が亡くなったときに、亡くなった人の収入によって生活していた遺族が受け取れる年金で、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があります。

遺族基礎年金は、亡くなったのが国民年金の被保険者で、その人の収入で生活していた子どものいる配偶者や子ども本人が受け取れる遺族年金です。ここで言う「子ども」とは、18歳になった年度の3月31日までの子や、20歳未満の障害年金1級または2級にある子を指します。子どもがいない、あるいは子どもが19歳以上の配偶者は遺族基礎年金の支給対象外です。

一方、遺族厚生年金とは、厚生年金の被保険者だった人が一定の条件を満たしている場合、その人の収入で生活している配偶者や父母、孫、祖父母などが受給できる遺族年金です。対象者の範囲は、遺族基礎年金より広くカバーされています。

遺族年金は支給対象となる配偶者が65歳に達すると支給が終了し、配偶者本人の老齢年金が支給されます。

障害年金

障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)とは、一定の条件を満たしたうえで、病気やけがで生活や就労が制限される人に支給される年金です。対象となる傷病を負ったときに加入している年金の種類によって、障害基礎年金か障害厚生年金が決まります。

60歳以上65歳未満で障害年金の支給対象者に該当する場合は、障害基礎年金が支給されます。

【年齢別】年金と失業保険を同時にもらう方法

年金と失業保険を同時にもらえるかどうかは、年齢によって異なります。60歳以上64歳以下、65歳以上の2パターンに分けて、同時に受け取る方法や金額を解説します。

60歳以上64歳以下の場合

60歳以上64歳以下の人は、年金と失業保険(高年齢雇用継続給付金)を同時にもらえる可能性があります。同時にもらえるのは、年金と失業保険の受給条件を満たしたうえで以下のどちらかに当てはまる人です。

  • 年金の繰上げ受給者
  • 特別支給の老齢厚生年金の受給対象者

働きながら年金をもらう場合は、賃金額に応じて年金が一部停止(減額)されることに注意が必要です。

また、年金と高年齢雇用継続給付を併用する場合は、収入によっては年金として受け取れる金額が最大で賃金の4%減額されることがあります。年金を繰上げると1か月分が0.4%ずつ減額されるため、65歳以上から受給するより総額が少なくなる可能性に留意しましょう。

失業保険(基本手当)を受給する場合は、同時に年金は受け取れません。基本手当を受け取っている間は年金が全額支給停止となり、受け取り終わった後に支給再開となります。

65歳以上の場合

65歳以上で失業した人は、年金と失業保険(高年齢求職者給付金)を同時にもらうことは可能です。ただし、年金と失業保険両方の受給条件を満たす必要があります。どちらか一方、あるいは両方とも条件を満たさない場合は同時に受け取れません。

高年齢求職者給付金は全額一括で支給され、もらえる金額は「基本手当日額×給付日数」で計算できます。基本手当日額とは、失業保険として受け取れる1日分の金額で、離職日前6か月間の賃金を1日分に換算した賃金日額に、給付率を掛けて計算します。

65歳以上の人が受け取れる基本手当日額を、賃金日額別に以下の表にまとめました。

賃金日額

基本手当日額

3,014円以上5,340円未満

2,411円〜4,271円

5,340円以上13,140円以下

4,272円〜6,570円

13,140円超14,510円以下

6,570円〜7,255円

14,510円超

7,255円(上限額)

参考:厚生労働省|雇用保険の基本手当日額が変更になります〜令和7年8月1日から〜

年金として受け取れる金額は、令和7年度実績で以下のとおりです。ただし、以下は満額支給の例であり、年金は加入期間などの条件により減額されることがあります。

加入している年金の種類

月額

国民年金(老齢基礎年金のみ)

69,308円

厚生年金(夫婦2人分)

232,784円

参考:日本年金機構|令和7年4月分からの年金額等について

年金と失業保険を同時にもらう場合の手続き方法

年金と失業保険は、それぞれの制度で受給条件や手続きの流れが異なるため、受給までの手順が煩雑に感じるかもしれません。特に、年金受給が始まる時期と退職のタイミングが重なるときは、どのような流れで手続きすればよいのか、迷う方も少なくないでしょう。

ここでは、60歳以上64歳以下の人と65歳以上の人に分けて、具体的な手続きの流れを解説します。

60歳以上64歳以下の人が退職したとき

64歳以下で退職した場合は、条件を満たせば失業保険の基本手当を受け取れる可能性があります。

しかし、年金と同時に受け取ることはできないため、基本手当を受け取ると年金を繰上げ受給している場合や特別支給の老齢厚生年金は全額支給停止されることに注意しましょう。支給停止のための手続きは原則不要です。

年金請求時に雇用保険被保険者番号がなかった場合は、年金事務所に「老齢厚生・退職共済年金受給権者支給停止事由該当届」の提出が求められます。具体的な手続きは、以下の手順で行います。

  1. 退職後、離職票を持ってすみやかにハローワークへ行く
  2. 求職申込みを行う
  3. 申込み後、該当する人は年金事務所に支給停止事由該当届を提出する
  4. 基本手当を受給する
  5. 受給満了後、年金事務所で年金を再開するための手続きを行う

 

失業保険の受給中に再就職した場合、一定の条件を満たすと高年齢再就職給付金を受け取れることがあります。

65歳以上の人が退職したとき

65歳以上で退職した場合、年金と失業保険の高年齢求職者給付金を同時にもらえるため、それぞれ受給の手続きを進めます。

老齢年金については、65歳になると年金請求書が届くので手続きを進めて受給開始します。一方、高年齢求職者給付金を受け取るための手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 退職後、離職票を持って速やかにハローワークへ行く
  2. 求職申込みを行う
  3. 求職活動を行い失業認定を受ける
  4. 高年齢求職者給付金が振り込まれる

 

年金と失業保険を同時にもらいたいときの注意点

年金と失業保険の同時受給について考える女性
年金と失業保険は条件次第で同時に受け取ることも可能ですが、年齢や退職時期によっては、受給額が変わったり支給停止になるケースもあります。

ここでは、年金と失業保険を同時にもらいたい場合に知っておきたいポイントや、損なく受給するための注意点を解説します。

65歳以上で退職すると失業保険の受給額が少なくなる

65歳以上であれば、年金と失業保険(高年齢雇用継続給付金)を同時にもらえますが、基本手当と比べてもらえる金額が少なくなることに注意が必要です。

例えば、雇用保険の加入期間が1年で自己都合退職した場合、基本手当の給付日数は90日です。一方、同じ条件で高年齢雇用継続給付金をもらう場合、給付日数50日分を一括で受け取れますが、総額は基本手当の方が多くなります。

退職後に再就職を目指す際は、退職時の年齢によって受給できるのが基本手当か高年齢求職者給付金か変わります。離職日に65歳以上の人は高年齢求職者給付金の対象になるため、64歳の時点で退職するほうが失業保険を多くもらえる点に留意しましょう。

65歳になるまでに退職して基本手当の受給を終え、65歳から年金を受給するとどちらも満額もらえます。

失業保険の受給期間内に申請する

失業保険を受給できるのは、原則として離職日の翌日から1年間です。給付日数が残っていても、受給期間を過ぎると受給できなくなるので注意しましょう。

すでに年金を受給している場合、支給停止になるからと失業保険の手続きを後回しにしていると、受給期間を過ぎて受け取れなくなる可能性があります。満額受け取るためには、自分の支給日数を確認したうえで、いつまでに手続きする必要があるか把握することが重要です。

年金の減額・支給停止のパターンを確認しておく

年齢や年金の受給状況、種類などによって失業保険と同時にもらえるかどうかは変わります。もらえる失業保険の種類も状況によって異なるため、自分のパターンはどのように受け取ると損しないかを考える必要があります。

特に、減額や支給停止される場合のパターンを把握しておくと、自分にとってベストな受け取り方で受給しやすいでしょう。

まとめ

年齢や受給条件によっては、年金と失業保険を同時にもらう方法もあります。例えば、65歳以上で失業して再就職を目指す場合は、同時に受け取ることも可能です。ただし、個々の条件によって損しない受け取り方は異なります。

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この記事の監修者

杉山雅浩

スピネル法律事務所 弁護士

東京弁護士会所属。
池袋中心に企業顧問と詐欺被害事件に多く携わっています。
NHKやフジテレビなど多くのメディアに出演しており、
詐欺被害回復などに力を入れている個人に寄り添った弁護士です。

YouTubeの他、NHK、千葉テレビ、テ日本テレビ、東海テレビ、FM西東京、フジテレビ、共同通信社、時事通信社、朝日新聞、朝日テレビ、読売新聞、日本経済新聞、毎日新聞、TBS、CBCテレビ、名古屋テレビ、中日新聞その他数多くのネット記事、週刊誌多数のメディアに取材されたり、AbemaTV、NHKスペシャル、クローズアップ現代、バイキングモア、おはよう日本、など有名番組に出演してます!

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