2025.10.20
社会保険について
退職時に保険証はどうする?退職代行を使った場合の手続きも解説

退職をすると、これまで勤務先で加入していた健康保険はどうなるのだろうと不安に思う人も多いでしょう。健康保険証は身分証明にも使えますし、病院で診療を受ける際には提出しなければ全額自己負担になるので高額な診察料を支払わなければなりません。
そこで、退職後の健康保険証の切り替えについて詳しく解説していきます。
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退職をする時に健康保険証は返却する
健康保険は日本に住む全員に加入義務があり、会社に勤めている間は会社が健康保険料を半額負担してくれています。しかし、退職することになると健康保険証は会社に返却しなければなりません。そのため退職した翌日から健康保険の資格を失うことになり、健康保険証は使用できなくなります。
参考:日本年金機構|従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き
もし扶養者であるならば、配偶者や子供など家族全員の保険証も返却する必要があり、使用できなくなります。
退職時の健康保険証はいつまで使える?
退職日まで在職中の健康保険証は通常通用しますが、退職日の翌日からはその健康保険証は使えません。これは「退職により健康保険の被保険者資格を失う」ためで、厚生年金保険・健康保険の資格喪失日は退職日の翌日となると日本年金機構でも明確にされています。
在職中に病院に行く必要がある場合は退職日までに受診を済ませましょう。また、保険証は退職日に使用し、その後は必ず返却します(返却期限は保険者によって異なりますが、多くは資格喪失日から数日以内が目安です)。
健康保険証を返却しないとどうなる?
退職後、健康保険の被保険者資格を失ったのに旧保険証を使い続けると、本来加入資格のない健康保険を利用したことになり、後から医療機関や保険者から支払い請求が来る可能性があります。各健康保険組合の公式案内でも「資格喪失後の保険証利用は無効で、全額自己負担となる旨」が注意点として挙げられています。
例えば、任意継続や国民健康保険など新たな保険への加入手続きをしていない状態で旧保険証を提出した場合、全治療費の自己負担になるケースがあり注意が必要です。加入切り替えを忘れていた場合でも、速やかに手続きを行い、新しい保険証で受診するようにしましょう。
離職期間がある場合の健康保険の対処法
退職した後に、すぐに再就職するのであれば健康保険は新しい会社で保険証を取得することができます。しかし、離職期間がある場合には健康保険はどのようにすればいいのでしょうか?
3つの選択肢があるので、自身の状況に合う手段を考えて選ぶようにしましょう。
任意継続する
任意継続とは、退職した会社と同じ健康保険を退職後も継続して加入することです。
退職前に2カ月以上被保険者期間があれば、最長2年間は継続することができるのです。しかも、扶養家族もそのまま健康保険を継続することができます。ただし、在職中は会社が保険料を半額負担してくれていましたが、退職すれば自身で全額負担しなければなりません。
保険料は、退職前であれば月給から標準報酬月額が算出されて保険料が決められていました。しかし、退職した後の場合には、退職時の標準報酬月額か28万円のどちらか安い方が基準となって保険料が決められます。
家族の扶養に入る
配偶者や子供、未婚の場合であれば両親など家族の勤務先の健康保険に被扶養者として加入するという手段もあります。家族の健康保険に被扶養者として加入すれば、保険料の支払いは必要ありません。ただし、加入するためには厳しい条件を満たしている必要があります。
その条件は以下のものがあります。
- 60歳未満であれば年収130万円未満、60歳以上では年収180万円未満
- 同居の場合、年収が被保険者の半分未満
- 別居の場合、収入が仕送りなどの援助額より低い
- 失業手当を受け取っていない
これらの条件を満たしているか審査があり、審査に通らなければ家族の扶養に入ることは出来ません。
国民健康保険に加入する
国民健康保険は市区町村が保険者となり、任意継続や家族の扶養を選ばなければ自動的に加入することになる保険です。
任継続や家族の扶養で保険加入するにしても、退職の翌日付けで手続きをしていなければ少しでも期間が開くことになります。しかし、退職した翌日には国民健康保険に加入していることになるため、少しのブランク期間でも国民健康保険に加入していることとなり、保険料の納付義務が発生します。
国民健康保険の保険料は、「前年所得」「世帯収入」「加入人数」などを考慮して算出されますが、住んでいる市区町村によって支払う保険料は異なってきます。
退職から保険切り替えまでに空白期間ができたらどうなる?
退職日の翌日から健康保険の資格がなくなると、新しい健康保険に加入するまでは保険適用がありません。この間に病院で診察を受けると、保険適用外の全額自己負担になりますので注意が必要です。
国民健康保険への加入手続きは退職日の翌日から14日以内(市区町村によって窓口や郵送・オンラインが利用可能)。
任意継続に申し込む場合は資格喪失日から20日以内に申請が必要です。
加入手続きが遅れると、保険料が遡及して請求される可能性や、最悪過料として罰金が科される場合もあります。予定が決まっている場合は、退職日以前に次の保険加入先を決めておくと安心です。
健康保険の切り替え方法
退職した後の健康保険の対処法を紹介してきましたが、それぞれの健康保険に切り替える方法について紹介していきます。
退職後にすぐに新しい会社で働く場合にも、また離職期間がある場合でも、まずは退職日に会社へ保険証を返却します。そして、その後はそれぞれの方法で健康保険の切り替え手続きを行っていきます。
任意継続する場合
任意継続をする場合には、退職した翌日から20日以内に手続きを行わなければなりません。申請期間が短いので、退職後は速やかに手続きを行うようにしましょう。
手続きを行う場所は、全国健康保険協会に加入していた場合には住んでいる地域を管轄する全国健康保険協会、組合管掌健康保険に加入していた場合には健康保険組合事務所になります。任意継続被保険者資格取得申出書を窓口もしくはHPより入手し、記載します。
家族の扶養に入る場合
家族の扶養として健康保険に加入する場合には、まず被扶養者の基準に認定される必要があります。
手続きに必要な書類は、各事業所の健康保険担当者に提出することになります。被扶養者異動届けと一緒に、離職票や退職証明書などの退職日が分かる書類、別居している場合には移し先の住民票を添付して審査を受けます。
国民健康保険に加入する場合
国民健康保険に加入する場合には、退職日から国民健康保険に自動的に加入していることになります。しかし、保険証が手元にないことは病院で診療を受ける際には困りますし、自治体によっては遅延金が発生する場合があります。そのため、14日以内に加入手続きを行うようにしましょう。
国民健康保険の加入手続きは、住んでいる市区町村の健康保険担当の窓口で行います。各市区町村で定められている届出書と共に本人確認書類、健康保険の資格が喪失した日が分かる書類も提出します。
離職票もしくは退職証明書、健康保険被保険者資格喪失証明書のどれかを提出しましょう。
退職代行を利用した場合の健康保険手続き方法
退職代行サービスを利用した場合、退職手続きは業者が代行しますが、健康保険や年金の切り替えは自分で行う必要があります。退職後、以下の手続きを行いましょう。
健康保険証の返却
退職後、会社から交付された健康保険証は速やかに返却する必要があります。退職代行を利用している場合、返却方法について代行業者を通じて確認すると良いでしょう。一般的には、健康保険証は直接郵送で返却するか、退職代行に依頼して会社に届けてもらいます。未返却の場合、保険の無効期間中の利用とみなされ、後に返還請求されることがあるため注意が必要です。
保険の切り替え手続き
退職後は、新たな保険への切り替えが必要です。まず、退職後に送付される離職票や健康保険資格喪失証明書を確認します。これらの書類を基に、次の選択肢から適切な手続きを行いましょう。
- 任意継続
会社の健康保険を継続したい場合は、退職後20日以内に加入手続きを行います。保険料は全額自己負担となります。 - 国民健康保険への加入
市区町村役場での手続きが必要で、保険料は所得に応じて変わります。 - 扶養加入
配偶者の健康保険に加入できる場合、配偶者の勤務先で手続きを行います。
健康保険証を切り替えている期間の対処法
退職して健康保険の切り替えを行ったとしても、すぐに保険証が手元に届くというわけではありません。もし手元に保険証がまだ届いていないにも関わらず、病院に行きたいという場合にはどうすればいいのでしょうか?
まず、急な症状などで病院に行くことになる以外の場合であれば、退職日までに病院に行くことをおすすめします。退職日当日も保険証を使うことはできますが、退職日の翌日からは使用出来ません。退職日当日に病院に行くのであれば、翌日会社に郵送などで保険証を返却するといいでしょう。
また、急な病気などで保険証が手元に届く前に病院へ行く場合には、一時的に全額自己負担をして立て替えで対処することになります。この際に支払った代金は、新しい保険証が届いた後で返金手続きを行うことができます。そのため、病院の窓口で一時的に立て替える旨を伝えておきましょう。
マイナ保険証を使っている場合の退職時の扱い
マイナンバーカードを健康保険証として利用している場合、退職により被保険者資格を失うと同じく旧健康保険情報は無効になりますが、マイナンバーカード自体は手元に残ります。そのため新しい保険への加入手続き後に、マイナンバーカードの保険登録情報を書き換えるだけで継続利用できることが一般的です。
マイナ保険証の切り替え方法や、利用可能な医療機関の範囲は加入先の保険者や自治体によって異なるため、加入後にしっかり確認するようにしましょう。
退職理由によって健康保険手続きは変わる?
退職が自己都合、会社都合、退職代行の利用など理由にかかわらず、健康保険の資格喪失と加入手続きの流れは基本的に同じです。ただし、再就職がすぐに決まっている場合は、新しい職場の健康保険への加入手続きを忘れず行います。再就職先が決まっていない場合や空白期間がある場合はここまで紹介したように任意継続・国民健康保険・扶養への加入のいずれかを選ぶ必要があります。
よくある質問(FAQ)
退職日に病院へ行っても大丈夫ですか?
退職日までは在職中として健康保険が有効ですので、診察や薬の処方は通常通り保険適用で受けられます。ただし、退職日の翌日以降は効力がなくなるので注意しましょう。
保険証が手元にない間はどうすればいい?
国民健康保険または任意継続加入後、保険証が届くまでの間は資格証明書やマイナンバーカードに紐づく保険情報を提示することで受診できる自治体・医療機関もあります。詳細は加入先の窓口で確認してください。
手続き期限を過ぎたらどうなる?
国民健康保険は退職後14日以内、任意継続は20日以内の手続きが基準です。遅れた場合でも手続き自体は可能ですが、その間の保険料が遡って請求されることがあるため注意してください。
まとめ
退職した翌日から健康保険証は使えなくなり、新しい保険証が届くまで数週間はかかるものです。少しでも早く保険証が手元に届くように、手続きは早めに行いましょう。退職することが不安で健康保険まで手が回らないというような人もいるかもしれませんが、健康保険はとても大切なものです。
退職コンシェルジュでは退職に関するサポートを行っていますので、退職に関する不安がある場合にはご相談ください。
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この記事の監修者
萩原 伸一郎
ファイナンシャルプランナー(FP)資格を持ち、東証一部上場企業に入社。資産形成、資産運用、個人のライフプランニングなどを経験。これまでに10,000名以上の退職後のお金や退職代行に関する相談などを対応した経験から、社会保険や失業保険についてわかりやすく解説。
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