失業保険をもらった後に働かなくても問題にならない理由
制度が対象にしているのは「受給中の失業状態」
雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)は、離職者が新しい仕事を探す期間の生活を支えるための給付です。ハローワークの説明でも、基本手当は「失業中の生活を心配しないで、新しい仕事を探し、1日も早く再就職していただくために支給されるもの」と位置づけられています。
参考:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
つまり制度が管理しているのは、あくまで「受給している期間」における失業状態や求職活動の実態です。受給が終わったあとにどう過ごすかという部分まで、法律や制度が縛っているわけではありません。
受給終了後の進路はハローワークが関知する範囲外
基本手当の受給は、原則として離職日の翌日から1年間の受給期間内に、所定給付日数を上限として支給されます。(同上)この所定日数を使い切った、あるいは受給期間が満了した時点で、手続き上の関係は終了します。
その後に就職しないままでいたとしても、それだけを理由にハローワークから連絡が来たり、給付の返還を求められたりすることはありません。受給中にきちんと要件を満たして支給を受けていたのであれば、その後の進路は個人の自由な選択の範囲になります。
注意が必要なのは「受給後」ではなく「受給中」の過ごし方
働かないこと自体は問題にならない一方で、受給中の行動には明確なルールがあります。ここを誤解していると、意図せず不正受給という扱いを受けてしまう可能性があるため、あらためて整理しておきます。
求職活動実績がなければ、そもそも受給が続けられない
基本手当を受け取り続けるには、原則として4週間に1度の失業認定日に、求職活動の実績を申告する必要があります。具体的には、認定対象期間中に原則2回以上(最初の認定日については1回以上)の求職活動実績が求められます。(ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」)
この「求職活動」には、ハローワークでの職業相談や求人への応募などが該当し、単に求人サイトを眺めただけ、知人に紹介を頼んだだけといった行動は実績として認められません。実績が足りない場合は、その認定対象期間分の給付が受けられなくなります。
このため失業手当を受給しながらも現状すぐ就職するつもりがないという場合でも失業手当の受給を継続するために形式上としてでも求職活動を行う必要があります。
不正受給にあたる代表的なケース
不正受給として扱われるのは、あくまで「受給中に虚偽の申告をした場合」です。ハローワークが示している典型例は次のとおりです。
参考:ハローワークインターネットサービス「不正受給の典型例」
| 該当する行動 | 内容 |
|---|---|
| 求職活動実績の虚偽申告 | 実際には行っていない求職活動を、失業認定申告書に記載する |
| 就労の未申告 | パート、アルバイト、日雇い、試用期間なども含め、働いた事実を申告しない |
| 自営や内職の未申告 | 事業を始めた事実や、内職・手伝いで得た収入を申告しない |
| 役員就任の未申告 | 名義だけであっても、会社役員に就任した事実を申告しない |
見ての通り、いずれも「受給中に実態と違う申告をしたかどうか」が判断基準になっています。受給後に就職しない、扶養に入る、引っ越すといった行動は、この一覧には含まれていません。
発覚した場合のペナルティは重い
不正受給が発覚すると、不正のあった日以降の給付が一切支給されなくなるほか、すでに受け取った金額の全額返還が命じられます。さらに、直接不正によって受給した額の最大2倍に相当する金額の納付も命じられる場合があり、合計で「3倍返し」と呼ばれる重い処分になります。(ハローワークインターネットサービス「基本手当について」)受給中の申告は、面倒に感じても正確に行うことが結果的に一番のリスク回避になります。
働かない期間、お金と保険はどうなるのか
受給が終わったあとすぐに働かない選択をする場合、次に気になるのが健康保険や年金の扱いです。ここは制度の切り替えが必要になる部分なので、あらかじめ把握しておくと手続きがスムーズです。
健康保険と年金は国民健康保険・国民年金への切り替えが基本
会社を退職すると、それまで加入していた健康保険の資格は失われます。次の勤務先が決まっていない場合、多くは国民健康保険と国民年金(第1号被保険者)への切り替え手続きが必要になります。手続きは住まいを管轄する市区町村の窓口で行います。
配偶者の扶養に入れるかどうかの判断基準
配偶者が会社員などで健康保険に加入している場合、その扶養に入るという選択肢もあります。ただし、扶養に入るには収入要件を満たす必要があり、雇用保険の失業給付もこの収入に含まれる点に注意が必要です。全国健康保険協会(協会けんぽ)では、被扶養者の年収要件を次のように示しています。
| 状況 | 収入要件 |
|---|---|
| 被保険者と同居している場合 | 年収130万円未満(60歳以上または障害厚生年金該当者は180万円未満)、かつ被保険者の年収の半分未満 |
| 被保険者と別居している場合 | 年収130万円未満(同上の年齢要件あり)、かつ被保険者からの仕送り額より少ないこと |
ここでいう年収には、給与だけでなく雇用保険の失業給付も含まれます。そのため、失業保険を受給している間は扶養の収入要件を超えてしまい、いったん国民健康保険に加入する必要があるケースが多くなります。受給が終わり、その後働かない状態が続くのであれば、あらためて扶養に入れるかどうかを、加入予定の健康保険(協会けんぽや健康保険組合)に確認するとよいでしょう。
国民年金保険料の免除・納付猶予という選択肢
働かない期間が続いて収入がない場合、国民年金保険料の負担が重く感じられることもあります。この点については、失業等による特例免除という制度があります。失業した方は前年所得にかかわらず、免除や納付猶予の審査を受けられる仕組みで、雇用保険受給資格者証などの書類を添えて申請します。
参考:日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
未納のまま放置するより、免除や猶予の手続きを取っておくほうが、将来の年金受給資格の面でも安心です。
働かない期間が長引く場合に知っておきたいこと
受給期間(原則1年)を過ぎると給付は受けられなくなる
基本手当を受け取れる受給期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。この期間を過ぎると、所定給付日数がまだ残っていたとしても、それ以降は基本手当を受け取ることができなくなります。
病気やけが、妊娠・出産・育児などの事情がある場合は受給期間の延長を申請できる制度もあるため、長期間働けない見込みがある場合は早めにハローワークへ相談しておくと安心です。
就業のブランクが今後の転職活動に影響する可能性
制度上のペナルティがないとはいえ、働かない期間が長くなるほど、再就職活動を始めるときに空白期間の説明を求められる場面は増えてきます。ブランクそのものが不利になるとは限りませんが、期間中に何をしていたかを整理しておくと、いざ動き出すときの準備がしやすくなります。
まとめ
失業保険をもらった後に働かないことは、受給中のルールを守っていれば法律上問題になりません。不正受給として扱われるのは、あくまで受給中に虚偽の申告をした場合に限られます。一方で、働かない期間が続く場合は、国民健康保険・国民年金への切り替えや、扶養に入れるかどうかの収入判定、年金保険料の免除申請など、お金まわりの手続きは別途必要になります。制度を正しく理解したうえで、自分に合った過ごし方を選んでいきましょう。
退職後の手続きや今後の進め方について、「何から手をつければいいかわからない」「自分の場合はどうなるのか個別に聞きたい」という方は、退職コンシェルジュの失業保険サポートで相談できます。手続きの整理から今後の選択肢まで、まとめて相談したい方はこちらからご確認ください。
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