「退職給付金200万円」って結局本当?
いくら公的制度だと言われても200万円ももらえる、と聞くと金額が金額なだけになんだか疑わしく感じます。一体どんな内訳なのでしょうか。
SNS広告でよく見るフレーズの実態
「退職給付金」「社会保険給付金」「在職中から申請できる給付金」──こうした言葉を使った広告は、ここ数年でSNSやWEB上に急増しています。広告のパターンとしては、おおむね以下のような文言が多く見られます。
| よく見る広告フレーズ | 実態 |
|---|---|
| 「退職したら最大200万円受け取れます」 | 就職困難者認定を受けた場合の失業保険の受給総額の目安 |
| 「うつ病・適応障害の方は給付金が申請できます」 | 精神疾患の診断書・意見書で就職困難者認定を受けられる場合がある |
| 「在職中から申請できる社会保険給付金」 | 在職中の傷病手当金申請と、退職後の失業保険申請をセットで指している場合が多い |
| 「平均受給額〇〇万円」「最大〇〇万円」 | 月給・年齢・加入期間によって金額が変わるため、幅のある表現になっている |
これらの広告は誇張表現を含むものもありますが、制度の中身自体は正規の公的給付金です。毎月の給与から天引きされてきた雇用保険料を財源とする失業保険(基本手当)であり、受給資格を満たしていれば自分で申請できます。
「退職給付金」という制度は存在しない
「退職給付金」「社会保険給付金」という名称の公的制度は、ハローワークにも協会けんぽにも存在しません。これらは給付金申請のサポートを行う民間業者がマーケティング上の言葉として使い始めた造語です。
そのため「退職給付金を申請したい」とハローワーク窓口で伝えても担当者には伝わりません。正確には「失業保険(基本手当)の申請をしたい。就職困難者として認定してもらえるか確認したい」という形で相談する必要があります。
200万円・300万円・400万円──金額がバラバラな理由
ネット上でよく目にする退職給付金の受給金額は2oo万円だけではありません。広告によって広告によって「200万円」「300万円」「最大400万円以上」と金額がバラバラなのは、失業保険の受給総額が以下の3つの要素の組み合わせで人によって大きく変わるためです。
| 変動要素 | 内容 |
|---|---|
| 給付日数 | 就職困難者は最大300〜360日。年齢・加入期間によって変わる |
| 基本手当日額 | 退職前6か月の賃金をもとに計算。月給が高いほど日額も高くなる(上限あり) |
| 傷病手当金の利用 | サポート業者によっては傷病手当金と失業保険の合算額を「〇〇万円」と表示している場合もある |
月給・年齢・勤続年数が高い方ほど受給総額も大きくなるため、広告では「最大〇〇万円」という上限付近の数字が使われやすく、実際の受給額とのギャップが生じやすい構造になっています。
就職困難者とは何か
ハローワークが定める就職困難者の定義
就職困難者とは、ハローワークの定める基本手当の所定給付日数において設けられた受給者区分のひとつです。身体障害・知的障害・精神障害などにより、一般的な条件での就職が長期にわたって困難と認められる方が対象となります。
就職困難者に認定されると、失業保険の給付日数や受給要件が一般の離職者よりも大幅に優遇されます。
障害者手帳がなくても認定される場合がある
就職困難者の認定は、原則として身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれかを所持していることが要件です。ただし一定の精神疾患については、手帳がなくても主治医の意見書があれば認定されることが可能です。
ただし、最終的な認定の可否はハローワークが判断します。医師の意見書は重要な判断材料ですが、それだけで自動的に認定されるわけではなく、別途複雑な申請書類に抜け漏れなく項目の記載をしなければなりません。また、管轄するハローワークによって判断の基準に差がある場合もあります。詳しくは管轄のハローワーク窓口に相談が早いですが、就職困難者制度の国内における適用というのは事例が少なく、ハローワークの職員に直接問い合わせてもスムーズに回答が得られないケースも多いです。
就職困難者と一般離職者の給付日数の違い
ハローワークの所定給付日数の規定によると、就職困難者の給付日数は以下のように定められています。一般の離職者と比べると、その差は歴然です。
| 区分 | 雇用保険加入期間 | 給付日数 |
|---|---|---|
| 一般の離職者(自己都合退職等) | 1年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 | |
| 就職困難者(45歳未満) | 6か月以上1年未満 | 150日 |
| 1年以上 | 300日 | |
| 就職困難者(45歳以上65歳未満) | 6か月以上1年未満 | 150日 |
| 1年以上 | 360日 |
雇用保険の加入期間が1年以上あれば、45歳未満で300日、45歳以上65歳未満で360日の給付が受けられます。一般の自己都合退職(加入1〜10年で90日)と比べると、給付日数が3〜4倍になるケースもあります。
また、一般の自己都合退職には通常「給付制限期間(2025年4月以降は原則1か月)」がありますが、就職困難者に認定された場合は7日間の待機期間のみで受給が開始でき、給付制限がありません。
受給額シミュレーション──200万・300万・400万円になる条件
失業保険の1日あたりの給付額(基本手当日額)は、退職前6か月の賃金合計を180で割った「賃金日額」に給付率(約50〜80%)を掛けて算出します。賃金が低い方ほど給付率が高くなる仕組みです。
以下は月給・年齢別の受給総額の目安です。就職困難者認定を受けた場合(雇用保険加入1年以上)で試算しています。
| 月給(手当含む) | 年齢 | 給付日数 | 基本手当日額の目安 | 受給総額の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 45歳未満 | 300日 | 約4,400円 | 約132万円 |
| 25万円 | 45歳未満 | 300日 | 約5,500円 | 約165万円 |
| 30万円 | 45歳未満 | 300日 | 約6,600円 | 約198万円 |
| 35万円以上 | 45歳未満 | 300日 | 約7,065円(上限) | 約212万円 |
| 20万円 | 45歳以上 | 360日 | 約4,400円 | 約158万円 |
| 25万円 | 45歳以上 | 360日 | 約5,500円 | 約198万円 |
| 30万円 | 45歳以上 | 360日 | 約6,600円 | 約238万円 |
| 40万円以上 | 45歳以上 | 360日 | 約8,870円(上限) | 約319万円 |
月給30万円・45歳未満(300日)で約200万円、45歳以上(360日)で約238万円が目安です。月給40万円以上・45歳以上(360日・上限日額)では約320万円に達します。
広告で「300万円」「400万円」という数字が使われる場合は、傷病手当金(健康保険)との合算額を指しているケースが多く、失業保険単体では45歳以上・高月給の方でも320万円前後が現実的な上限です。「400万円」という数字は傷病手当金を含めた場合の目安と考えておくのが適切です。
なお、基本手当日額には年齢区分ごとに上限が定められており、2025年8月改定の上限額は45歳未満が7,065円、45〜59歳が8,870円です(詳細はハローワーク「基本手当について」をご確認ください)。
就職困難者認定を受けるための手順
主治医の意見書(ハローワーク指定様式)が必要
手帳なしで就職困難者の認定を受ける場合、ハローワークが指定する専用様式の「主治医の意見書(就労可否証明)」が必要です。意見書の様式はハローワークの窓口でのみ入手できるため、まず最初にハローワークへ相談し様式を受け取った上で、主治医に記入を依頼する流れになります。
一般的な診断書では代用不可
病院で通常発行される「診断書」は、就職困難者認定の資料としては使えません。意見書の作成を主治医に依頼する際は、「ハローワークの失業給付申請に必要な公式書類」であることを明確に伝え、ハローワークの指定様式を手渡した上で依頼することが重要です。
最終判断はハローワーク
就職困難者の認定は、医師の意見書のみでは決まりません。ハローワークの担当者が窓口での聞き取り内容と意見書の内容を総合的に判断したうえで認定の可否を決定します。
申請の流れ
就職困難者として失業保険を申請する際の一般的な流れは以下の通りです。
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 退職・離職票の受け取り | 会社から雇用保険被保険者離職票(1・2)を受け取る | 通常退職後10日前後に郵送される。遅い場合はハローワークに相談可 |
| 2. ハローワークへ相談・様式を受け取る | 就職困難者として申請したい旨を伝え、主治医の意見書の指定様式を入手する | この段階で窓口に病状や退職理由を説明しておくとスムーズ |
| 3. 主治医へ意見書の記入を依頼 | ハローワークから受け取った指定様式を主治医に渡し、記入を依頼する | 余裕を持って依頼する(医療機関によっては数日〜2週間かかる場合あり) |
| 4. ハローワークへ書類一式を提出・求職申込み | 離職票・意見書・本人確認書類等を持参してハローワークで手続きを行う | この日が「受給資格決定日」となり、7日間の待機期間がスタートする |
| 5. 就職困難者の認定・受給開始 | 7日間の待機期間終了後、失業認定日を経て受給開始 | 給付制限なし。認定後おおむね1か月以内に最初の振り込みがある |
| 6. 4週間ごとに失業認定を受ける | 指定された認定日にハローワークへ来所し、失業状態であることを証明する | 就職困難者は求職活動実績が1回でOK(一般は2回以上) |
よくある質問(Q&A)
Q. 広告で見た「退職給付金」は詐欺ですか?
A. 制度の中身自体は詐欺ではありません。失業保険(基本手当)という正規の公的給付金を指しています。ただし「必ず200万円もらえる」「誰でも対象」といった断定的な広告表現は誇張を含む場合があります。また、サポートを名目に過大な手数料を請求する悪質な民間業者も存在するため、依頼する場合は料金体系と実績を事前に確認することが重要です。
Q. 自己都合退職でも就職困難者として認定されますか?
A. はい、退職理由が自己都合か会社都合かは就職困難者の認定に直接影響しません。就職困難者の認定はあくまで病状・健康状態をもとにハローワークが判断するため、自己都合退職であっても認定される可能性があります。
Q. 給付制限(待機期間)はありますか?
A. 就職困難者に認定された場合、自己都合退職であっても給付制限はありません。7日間の待機期間のみで受給が開始されます。これは一般の自己都合退職(2025年4月以降は原則1か月の給付制限)と比べて大きなメリットです。
Q. 就職困難者として認定されなかった場合はどうなりますか?
A. 就職困難者として認定されなかった場合でも、通常の失業保険(基本手当)の申請は引き続き可能です。退職理由によっては特定受給資格者・特定理由離職者として扱われ、給付日数が増える場合もあります。まずはハローワーク窓口で適用される区分を確認しましょう。
Q. 給付金サポートの民間業者に頼む必要はありますか?
A. 就職困難者の申請自体は、本人がハローワークで直接行うことができます。ただし、認定条件の確認や意見書の取得など、慣れていないと手間がかかる手続きも多いため、不安がある場合は専門のサポートを利用することも選択肢のひとつです。利用する場合は費用の妥当性・実績・サポート内容を事前に確認してください。
まとめ
「退職給付金200万円」に関するポイントを整理すると、以下の通りです。
- 「退職給付金」という名称の制度は存在しない。実態はハローワーク「就職困難者」区分での失業保険(基本手当)受給額の目安
- SNS・WEB広告でよく見る「〇〇万円」という数字は、月給・年齢・給付日数の組み合わせによって変わる。「400万円」など高額な数字は傷病手当金との合算を指している場合が多い
- 就職困難者に認定されると給付日数が最大300〜360日になり、一般の自己都合退職(90〜150日)と比べて大幅に長くなる
- 一定の精神疾患については、障害者手帳がなくても主治医の意見書があれば認定される場合がある
- 意見書はハローワーク指定の専用様式が必要。一般的な診断書では代用できない
- 最終的な認定可否はハローワークが判断する。認定されなかった場合も通常の失業保険は申請できる
- 認定された場合、自己都合退職でも給付制限なし。7日間の待機期間のみで受給開始できる
月給・年齢・加入期間によって実際の受給総額は変わりますが、条件を満たせば200万円前後の受給が現実的に見込める制度です。自分が対象になるかどうかの確認も含め、まずはお住まいの地域のハローワークか専門のサポート窓口に相談することが第一歩です。
自分が就職困難者の対象になるかどうかの確認や、申請手続きについて不安がある方は、退職コンシェルジュの給付金サポートへの相談もご検討ください。「自分は対象になるのか」「どう手続きを進めればいいか」という疑問に、専門スタッフが個別の状況に合わせて対応しています。
▼社会保険給付金サポートへのお問い合わせはこちら
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