派遣社員は傷病手当金を受給できるのか
前提として傷病手当金は、「正社員かどうか」で判断される制度ではありません。
そのため、派遣社員だからという理由だけで対象外になるということはなく、条件を満たせばだれでも受給可能な制度です。
制度上、正社員と派遣社員の扱いに違いはなく、支給条件・支給額・支給期間も同じです。
ただし、もちろんすべてが正社員と全く同じというわけではなく、傷病手当を受け取れるかどうかを分ける重要な要素を満たせていない場合もあるため注意が必要です。
「雇用形態」ではなく「加入保険」が重要
傷病手当金は、雇用保険ではなく健康保険から支給される給付です。
具体的には、協会けんぽや健康保険組合といった医療保険制度の中に位置づけられています。
そのため、派遣社員であっても、派遣元の社会保険(健康保険)に加入していれば、原則として傷病手当金の対象になります。
逆に、次のような場合は対象外となります。
- 国民健康保険に加入している
- 社会保険の加入要件を満たしていない
- すでに健康保険の資格を喪失している
このように、派遣か正社員かではなく、「社会保険に加入しているかどうか」が最初の分かれ目です。
社会保険加入の派遣社員が対象になる理由
派遣社員の多くは、派遣元(派遣会社)と雇用契約を結び、派遣元の社会保険に加入しています。
この場合、健康保険の被保険者としては正社員と同じ立場になります。
傷病手当金は、被保険者が病気やケガで働けなくなった場合の生活保障として設けられている制度であり、派遣という働き方そのものは判断材料に含まれていません。
派遣社員が傷病手当金を受給するための条件
派遣社員が傷病手当金を受給するためには、健康保険法で定められた要件をすべて満たす必要があります。
派遣社員だけに定められた条件というわけではなく、すべての雇用形態において共通した条件ですが、派遣という働き方だからこそ注意すべき点もあります。
共通する4つの支給要件
傷病手当金が支給されるためには、次の4つの条件をすべて満たしている必要があります。
1つ目は、業務外の病気やケガであることです。
仕事中や通勤途中のケガは労災保険の対象となるため、傷病手当金は使えません。
2つ目は、その病気やケガによって就労不能であることです。
単に体調が悪いという自己判断ではなく、医師が「労務に服することができない」と判断していることが前提になります。
3つ目は、連続する3日間の待期期間が完成していることです。
この3日間には、土日祝日や有給休暇も含まれます。派遣社員であっても、シフトが入っていない日だからといって除外されることはありません。
4つ目は、休業期間中に給与の支払いがないことです。
給与が一部でも支給されている場合は、その金額に応じて傷病手当金が減額、または支給されないことがあります。
派遣社員だからこそ注意すべきポイント
派遣社員の場合、共通要件に加えて「契約」と「雇用関係」を正しく整理しておくことが重要です。
まず押さえておきたいのは、派遣先ではなく派遣元が雇用主であるという点です。
傷病手当金の申請や判断に関わるのは派遣先ではなく、派遣元になります。
そのため、申請書にある事業主記入欄も、派遣先ではなく派遣元が記入することになります。この点を誤解して手続きが止まってしまうケースは少なくありません。
また、契約期間中か、契約満了時かによっても、実務上の扱いが変わることがあります。
ただし、「契約が終わる=傷病手当金がもらえない」というわけではありません。
重要なのは、健康保険の資格がある期間中に、支給要件を満たしているかどうかです。
契約期間や派遣会社の就業規則よりも、健康保険の資格関係が優先されます。
給与が支払われている場合の考え方
派遣社員の場合でも、休業中においても特別に最低限の給与が支給されたりすることがあります。
この場合でも、必ずしも傷病手当金が全くもらえなくなるわけではなく、支給される給与額が、傷病手当金として計算される金額より少ない場合は、その差額分が支給されます。
一方で、給与額が傷病手当金以上であれば、その期間は支給対象外となります。
派遣契約中に休職した場合の取り扱い
派遣社員が傷病手当金の相談をする中で、特に混乱しやすいのが「契約」と「休職」の関係です。
ここでは、派遣契約が継続している場合と、契約満了・途中終了になった場合に分けて整理します。
契約が継続しているケース
上記の条件を満たしている上で、派遣契約が継続している状態かつ業務外の病気やケガにより就労不能となった場合は、原則として傷病手当金の対象になります。
このとき、「派遣会社に休職制度があるかどうか」は本質的な問題ではありません。
重要なのは、健康保険の被保険者資格が継続しているかどうかです。
派遣社員の場合、契約期間中であれば多くのケースで派遣元の社会保険資格が維持されています。そのため、医師の意見書により就労不能と認められ、待期期間などの要件を満たしていれば、傷病手当金の申請が可能です。
実務上は、派遣会社から「休職扱いになります」「いったん就業停止になります」といった説明を受けることがありますが、表現の違いに過ぎません。
制度上は「労務不能による休業」として扱われます。
社会保険資格が継続しているかの確認が重要
派遣契約中に休職する場合、必ず確認しておきたいのが、社会保険の資格喪失日です。
派遣会社によっては、一定期間就労がない場合に資格喪失として処理されるケースもあります。
もし資格喪失日より前に、初診日および待期期間が完成していれば、その後に契約が終了しても、傷病手当金の継続受給が認められる可能性があります。
逆に、資格喪失後に初診日が来ている場合は、原則として対象外となります。
契約満了・途中終了になった場合
派遣契約が満了した、あるいは途中で終了した場合でも、すぐに傷病手当金が打ち切られるわけではありません。
ポイントは、「どの時点で支給要件を満たしているか」です。
たとえば、派遣契約中にすでに就労不能となり、待期期間も完成している場合、その後に契約満了を迎えても、一定の条件を満たせば傷病手当金の受給を継続できる可能性があります。
これは、いわゆる「資格喪失後の継続給付」と呼ばれる扱いです。
一方で、契約終了後に初めて受診し、就労不能となった場合は、原則として対象外になります。
この違いは非常に重要で、1日のズレで受給できるかどうかが変わるケースも珍しくありません。
派遣契約終了=自己都合になるのか
派遣社員の場合、「契約更新ができなかった」「派遣先が決まらなかった」といった理由で契約が終了することがあります。
このとき、「自己都合扱いになるから不利になるのでは」と心配されがちですが、傷病手当金の判断において、自己都合かどうかは本質的なポイントではありません。
傷病手当金は、退職理由ではなく、あくまで「健康保険の資格」と「就労不能の事実」に基づいて判断されます。
そのため、派遣契約終了そのものが、直ちに不支給理由になるわけではありません。
派遣契約終了後も傷病手当金はもらえる?
派遣契約が終了したあとでも、一定の条件を満たしていれば、傷病手当金を受給できるケースがあります。
ここで重要になるのが、「健康保険の資格喪失後の継続給付」という考え方です。
資格喪失後も継続受給できる条件
派遣社員が退職後も傷病手当金を受給するためには、主に次の要件を満たしている必要があります。
- 退職日(資格喪失日)の前日までに、傷病手当金の支給要件を満たしていること
- 退職日時点で、すでに傷病手当金を受給している、または受給できる状態であること
- 退職後も同一の病気やケガで就労不能状態が続いていること
この条件を満たしていれば、退職後に国民健康保険へ切り替えた場合でも、傷病手当金の受給を継続できる可能性があります。
ここでよくある誤解が、「退職したら自動的に終了する」という認識です。
実際には、退職の有無ではなく、退職前の時点で要件を満たしているかどうかが判断基準になります。
派遣社員が退職後に注意すべき点
派遣社員の場合、退職後にすぐ次の仕事を探すケースも多いため、失業保険との関係で混乱しがちです。
傷病手当金と失業保険は、同時に受給することはできません。
理由はシンプルで、制度の前提が真逆だからです。
- 傷病手当金:病気やケガで「働けない」状態
- 失業保険:就職する意思と能力があり「働ける」状態
このため、ハローワークで求職申込みを行い、失業保険の受給を開始すると、原則として傷病手当金は支給されなくなります。
失業保険に関する手続きや判断は、ハローワークが窓口になります。
派遣社員の傷病手当金の申請手続き
ここで、派遣社員だからこそ注意したいポイントを踏まえ申請の流れについて確認していきましょう。
申請の流れ
派遣社員が傷病手当金を申請する場合、基本的な流れは次のとおりです。
まず、傷病手当金支給申請書を入手します。
この申請書は、加入している健康保険(多くは全国健康保険協会)の公式サイトからダウンロードできる場合もあります。
保険組合によって異なる場合もありますが、申請書は主に以下のパートで構成されています。
- 被保険者本人が記入する欄
- 医師が記入する意見書
- 事業主が記入する欄
派遣会社(派遣元)とのやり取り
派遣社員が特につまずきやすいのが、事業主記入欄の扱いです。
この欄を記入するのは派遣先ではなく派遣元(派遣会社)になります。
派遣先に依頼してしまい、「うちは関係ない」と言われて申請が止まってしまうケースも珍しくありません。
申請時は、必ず派遣元に連絡し、事業主記入欄の対応を依頼する必要があります。
また、派遣会社によっては傷病手当金の制度理解が十分でない場合もあり、「休職扱いにできない」「契約が終わるから対象外」といった説明を受けることもあります。
その場合でも、判断の基準となるのは健康保険法であり、派遣会社の社内ルールが優先されるわけではありません。
派遣社員がつまずきやすいポイントと注意点
派遣社員の傷病手当金では、次のような点でトラブルや申請遅れが起きやすくなります。
- 契約満了日と資格喪失日の勘違い
- 初診日が資格喪失後になってしまう
- 事業主記入欄の依頼先を間違える
- 失業保険との切り替えタイミングを誤る
特に、資格喪失日と初診日の関係は非常に重要で、1日の違いで受給可否が分かれるケースもあります。
体調に不安を感じた時点で、早めに医療機関を受診し、制度の確認を行うことが大切です。
派遣社員の傷病手当金に関するよくある質問
ここでは、派遣社員の方から特に相談が多い質問について、制度上の考え方を整理します。
個別事情によって結論が変わることもありますが、判断の軸を理解する参考になります。
派遣社員でも短期契約の場合は傷病手当金の対象になりますか?
派遣契約が短期であっても、社会保険に加入している期間中に傷病手当金の支給要件を満たしていれば、原則として対象になります。
契約期間の長さ自体が、直接の判断基準になるわけではありません。
ただし、あくまで在職中の話となり、退職後の継続給付においては1年以上の健康保険への加入が必須のため注意してください。
登録型派遣で待機期間中に体調を崩した場合はどうなりますか?
登録型派遣であっても同様に健康保険(社会保険)への加入をしている状態で就労不能となれば、傷病手当金の対象になる可能性があります。
重要なのは「実際に就業しているかどうか」ではなく、「健康保険の被保険者であるかどうか」です。
一方で、待機期間中に社会保険資格を喪失している場合は、原則として対象外となります。
派遣先が変わった場合、傷病手当金はどうなりますか?
派遣先が変わっても、派遣元が同じで社会保険資格が継続していれば、傷病手当金の扱いに影響はありません。
傷病手当金は派遣先ではなく、派遣元との雇用関係および加入している健康保険を基準に判断されます。
派遣会社から「もう契約がないので申請できない」と言われました
派遣会社からこのような説明を受けるケースは少なくありませんが、契約の有無だけで傷病手当金の可否が決まるわけではありません。
判断基準は、健康保険の資格と、就労不能の事実です。
派遣会社の説明と制度の扱いが一致しない場合でも、最終的な判断は加入している健康保険が行います。
傷病手当金をもらっている間に転職活動はできますか?
医師から就労不能と判断されている期間は、「働ける状態」とは見なされないため、積極的な転職活動は制度上想定されていません。
転職活動を行う場合は、医師の判断や状態の変化に応じて、失業保険への切り替えを検討する必要があります。
傷病手当金の申請はいつまでに行う必要がありますか?
傷病手当金の申請には時効があり、支給対象期間の翌日から2年以内に申請する必要があります。
ただし体調不良の状況の中で手続きが遅れることも多いため、可能であれば早めに申請準備を進めることが望ましいでしょう。
まとめ
派遣社員であっても、傷病手当金は条件を満たせば正社員と同じ制度のもとで利用できる公的な給付金です。
派遣だから不利ということはなく、重要なのは次の点です。
- 社会保険に加入しているかどうか
- 就労不能となったタイミング
- 契約終了や退職前に要件を満たしているか
- 失業保険との関係を正しく整理できているか
派遣という働き方は、契約や雇用関係が分かりにくいため、制度を知らないまま進めてしまうと、本来受け取れるはずの給付を逃してしまうこともあります。
傷病手当金は、体調を回復させるための大切な制度です。
派遣社員であっても、仕組みを正しく理解し、早めに確認と手続きを行うことが重要です。
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