退職給付金とは?基本の仕組みをおさらい
「退職給付金」という呼び方は国で定義された公的な制度の名称ではなく、雇用保険の「基本手当」や傷病手当金の継続給付など、退職後に仕事を行っていない期間に受け取ることができる給付金制度を総称した呼び名です。厚生労働省のハローワークインターネットサービスでは、失業手当について離職者が失業中の生活を心配せずに再就職活動できるよう支給する制度だと説明されています。
参考:厚生労働省(ハローワークインターネットサービス)「基本手当について」
混同されやすい制度に「退職金」があります。
退職金は会社の就業規則に基づいて支給される任意の制度で、公的な給付ではありません。
「退職給付金」には民間の制度は含まれず国の公的な給付金のみが該当する、というのが一般的な見方です。
退職給付金制度の5つのデメリット
退職給付金は生活の支えになる制度ですが、いくつか押さえておきたい注意点があります。
まずは代表的な5つのデメリットを表で確認してみましょう。
受給には社会保険(雇用保険・健康保険)の加入期間などの要件がある
基本手当を受け取るには、雇用保険に一定期間加入していたことが前提になります。
自己都合退職の場合は離職日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上、会社都合退職や特定理由離職者に該当する場合は離職日以前1年間に通算6か月以上必要です。
短期間で転職を繰り返していた方や、週の労働時間が短く雇用保険に加入していなかった方は、この要件を満たせない可能性があります。
特に次のようなケースは対象外になりやすいため注意しましょう。
- 入社から1年未満で退職した
- 週の所定労働時間が20時間未満のパート・アルバイトで雇用保険に未加入だった
- 業務委託やフリーランスとして働いていた期間が長い
退職を決める前に、自分の加入期間をハローワークや会社の人事担当に確認しておくと安心です。
申請から初回支給まで一定のタイムラグが発生する
いずれの制度も申請して即日もらえるわけではなく、実際に振り込まれるまでには一定の日数がかかります。
おおまかな流れと目安期間は次のとおりです。
失業手当の受給スケジュール
会社都合退職であれば待期期間後まもなく支給が始まりますが、自己都合退職の場合はさらに給付制限期間が加わるため、退職後まとまった期間、収入がない状態が続くことになります。
具体的には、正当な理由のない自己都合退職の場合、7日間の待期期間のあとにさらに給付制限がかかります。
2025年(令和7年)4月1日以降の離職からは、この給付制限が原則1か月に短縮されました(それ以前の離職は原則2か月)。
ただし、離職日からさかのぼって5年間のうちに2回以上、正当な理由のない自己都合退職をしている場合や、重大な責任による解雇(重責解雇)の場合は、給付制限が3か月になる点に注意が必要です。
参考:厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」
退職前に、当面の生活費をどのくらい確保しておく必要があるか、大まかにでもシミュレーションしておくと安心です。
傷病手当金の受給スケジュール
一般的に退職日から数えて2か月後の支給になるとされています。
ただしどの健康保険組合に申請するかによって条件が異なったりスケジュールが前後する場合もあるため注意が必要です。
受給額は在職中の給与を下回る
在職中の給与を100%保証する制度は存在せず、給与額を基にその何割かが支給されます。
退職給付金の中でも制度によって受給金額の計算方法が変わるため注意しておきたいポイントです。
失業手当の受給額
基本手当日額は、離職前6か月間の賃金をもとに計算され、おおむね在職時の給与のおよそ50〜80%程度になります。
上限額も年齢ごとに設定されておりますので、ご参考ください。
基本手当日額と上限額は毎年度改定されるため、最新の金額は厚生労働省やハローワークの公表情報で確認するようにしましょう。
受け取れる総額は、この基本手当日額に給付日数をかけた金額になります。
給付日数は退職理由や雇用保険の加入期間、年齢によって90日から330日程度まで幅があり、自己都合退職より会社都合退職のほうが手厚くなる傾向があります。
自分がどの区分に該当するかは、ハローワークの窓口で確認するのが確実です。
傷病手当金の受給額
傷病手当金の受給金額は、1日あたり、「支給開始日以前の直近12ヵ月の標準報酬月額の平均÷30」の約3分の2(67%)に相当する額です。下記の計算式で計算が可能です。
- (直近12ヵ月の標準報酬月額の平均 ÷ 30) × 2/3
傷病手当金の最大受給期間となる18か月間すべて受け取り切る場合、上記の一日あたりの受給金額×549(18か月を日数に直した数)が受給総額の目安です。
失業手当と違い傷病手当金の上限額は1日あたり約30,889円(標準報酬月額の最高等級139万円を基準とした場合)とそこまで失業手当ほど厳しい設定ではないため、在職中の給与の高さがそのまま受給金額の高さへ反映されやすいです。
受給期間中の就労には制限がある
失業手当と傷病手当金共通して受給中のアルバイトをはじめとした就労についてはルールが定められています。
失業手当の受給中にアルバイトをすること自体は禁止されていませんが、労働時間によっては基本手当が減額されたり、支給が止まったりします。
1日4時間以上働いた日は基本手当が不支給となり、週20時間以上の就労は「就職した」とみなされて受給資格そのものを失うおそれがあります。
働いた事実を申告せずに受給を続けると不正受給とみなされ、返還や追加納付を求められることもあるため、アルバイトを検討する場合は事前にハローワークへ相談しておくことが大切です。
反対に傷病手当金の受給中の就労は原則禁止されています。傷病手当金自体が働けない人に向けた制度であるため、就労ができる時点で制度の受給要件と矛盾してしまうからです。
ただ、収入を得ること自体が禁止されているのかというとそういうわけでもなく、いわゆる不労所得であれば認められるケースもあります。
二つの制度の関係で注意したいデメリット
体調不良やメンタルヘルスの不調をきっかけに退職する方は、傷病手当金と失業保険のどちらも視野に入れることが多いはずです。
しかしこの2つには見落としやすい落とし穴があります。
傷病手当金と失業保険は同時に受け取れない
傷病手当金は健康保険から支給されるもので、業務外の病気やケガで働けない状態にあることが支給の条件です。
一方、失業保険(基本手当)は「働ける状態で求職活動をしていること」が前提になるため、この2つを同時に受給することはできません。
また、傷病手当金の1日あたりの支給額は、前述の通り支給開始日以前12か月間の標準報酬月額を平均した額を30で割り、その3分の2を乗じて計算されます。
連続して3日間仕事を休んだあと、4日目以降の休業日から支給対象になる点も押さえておきましょう。
退職コンシェルジュでは、給付金サポートを専門としたサービスとして退職前のご相談から給付金の受給完了まで一貫してサポートしております。
制度の内容がよく分からない方や自分が対象になるのか知りたい方は、お気軽にご相談ください。
▼社会保険給付金サポートへのお問い合わせはこちら
順序を間違えると受け取れる総額が減るリスクがある
傷病手当金は、支給を開始した日から通算して1年6か月まで受け取ることができます。
もし体調が回復しないうちに先に失業保険の受給手続きを進めてしまうと、「働ける状態」であることを前提とした失業保険の要件と矛盾してしまい、傷病手当金の継続受給が難しくなるケースがあります。
体調面に不安がある場合は、まず傷病手当金を活用し、働ける状態になってから失業保険の申請に進むという順序を意識しておくと安心です。
受給期間の延長手続きを活用する方法もある
失業保険には、病気やケガなどにより引き続き30日以上働くことができない場合、申請によって受給期間を延長できる制度があります。
原則1年間の受給期間を最大4年間まで延長できるため、体調の回復を待ってから基本手当を受け取りたい場合は、この延長手続きを利用する方法もあります。
延長の申請は、住所地を管轄するハローワークで行います。
参考:厚生労働省(ハローワークインターネットサービス)「受給期間の延長申請について」
退職給付金のデメリットへの対処法・事前にできる準備
退職後の生活費をあらかじめ試算しておく
自己都合退職では、待期期間と給付制限期間を合わせて2か月前後、収入がない状態が続く可能性があります。
退職前にある程度の貯蓄を確保し、家賃や生活費をどう賄うか、簡単にでも資金計画を立てておくと安心です。
アルバイトをする場合は事前にハローワークへ相談する
受給中に収入を補いたい場合は、労働時間の基準を正しく理解したうえで、必ずハローワークに事前確認をしてから始めましょう。
認定日には失業認定申告書に就労の事実を正確に記載することも忘れないようにしてください。
申請に必要な書類を早めに準備しておく
ハローワークで求職の申し込みと受給手続きを行う際には、離職票のほか、マイナンバーが確認できる書類、本人確認書類、証明写真、本人名義の口座情報などを準備する必要があります。
特に離職票は会社からの発行が遅れることも多いため、退職前に「いつ届くのか」を人事担当者へ確認しておくと、手続き開始が後ろ倒しになるのを防げます。
また、傷病手当金の申請用紙は健康保険組合のHPからダウンロードできる場合があります。また全国健康保険協会をはじめ神の申請用紙を用いず電子申請がメインの組合もあるため、申請用紙を事前に準備できるかという点を事前に確認しておくと良いでしょう。
デメリットだけじゃない、退職給付金のメリット
生活の安定を図りながら求職活動に専念できる
収入がゼロになる離職期間中に一定の生活費を確保できることは、退職給付金の大きなメリットです。
焦って条件の悪い求人に飛びつくリスクを減らし、じっくりと次のキャリアを考える余裕が生まれます。
家賃や光熱費などの固定費を工面する不安が和らぐだけでも、精神的な負担はかなり軽くなるはずです。
職業訓練など再就職支援も活用できる
公共職業訓練(ハロートレーニング)の受講が認められると、訓練期間中は所定給付日数を超えても基本手当が支給され、受講手当や通所手当も別途受け取れます。
IT・介護・事務など多様な分野を無料で学べる講座も用意されているため、スキルアップをしながら求職活動を進められる点も、制度を上手に活用するメリットの一つです。
もし体調が優れない場合等がある場合には傷病手当金の申請を行える可能性がございますので、お気軽にご相談ください。
▼社会保険給付金サポートへのお問い合わせはこちら
退職給付金のデメリットに関するよくある質問
Q1. 傷病手当金と失業保険はどちらを先に申請すればいい?
体調がすぐれず働ける状態にない場合は、先に傷病手当金を申請し、働ける状態になってから失業保険の申請に進むのが基本的な順序です。
傷病手当金と失業手当は同時受給が出来ないため注意が必要です。
Q2. 給付制限期間中は本当に何も受け取れないの?
正当な理由のない自己都合退職の場合、待期期間満了後、原則1か月は基本手当が支給されません。
ただし、2025年4月以降に教育訓練などを受けている場合は、給付制限が解除されるケースもあります。
Q3. 早く再就職が決まったら給付はどうなる?
受給期間中に早期に再就職が決まった場合、残りの給付は打ち切られますが、一定の要件を満たせば「再就職手当」として残日数分の一部をまとめて受け取れる場合があります。
早期の再就職を後押しする制度なので、内定が決まったら速やかにハローワークへ相談しましょう。
まとめ
退職給付金(失業保険)は退職後の生活を支える心強い制度ですが、受給要件や給付制限、就労制限など、事前に知っておきたいデメリットも少なくありません。
特に傷病手当金との併用を考えている方は、受給の順序を間違えないよう注意が必要です。
制度の仕組みを正しく理解し、退職前から準備を進めておくことで、想定外のトラブルを避けながら安心して次のステップに進むことができます。
とはいえ、離職票の確認や給付制限の判断、傷病手当金との調整など、一人で進めるには複雑に感じる手続きも多いものです。
退職に関する手続きや給付金の申請サポートについて相談したい方は、退職コンシェルジュの給付金サポートサービスもあわせてご検討ください。
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