失業保険をもらいながら職業訓練は受講できる
失業保険の受給資格がある人は、基本手当をもらいながらハローワークの職業訓練を受講できます。
これは厚生労働省が「ハロートレーニング」という愛称で案内している公的制度で、就職に必要な知識やスキルを原則無料で学べる仕組みです。
事務、IT、介護、建設、ものづくりなど扱う分野は幅広く、未経験の職種にチャレンジしたい人にも活用されています。
通常、失業保険は所定給付日数の上限までしか受け取れませんが、ハローワークの受講指示を受けて職業訓練に通っている間は、所定給付日数を使い切ったあとも訓練が修了するまで支給が続きます。
生活費の不安を抑えながらじっくりスキルアップできるため、再就職の選択肢を広げたい人にとってはよい選択肢となるでしょう。
職業訓練とは?2つの種類
職業訓練は、受講者が失業保険を受給できるかどうかによって「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」の2種類に分かれます。
どちらも受講料は原則無料で、テキスト代や作業着代など一部の実費のみ自己負担となる点は共通しています。
公共職業訓練|失業保険を受給している人が対象
公共職業訓練は、主に失業保険の受給資格がある人を対象にした訓練です。
ハローワークから受講の指示を受けて通うと、訓練が修了するまで基本手当の支給が続く点が大きな特徴です。
訓練期間はコースによって幅があり、3か月程度の短期から2年に及ぶ長期のものまで用意されています。
事務、IT、建設、介護、ものづくり系など、学べる分野も多岐にわたるため、希望職種に合わせてコースを選べます。
求職者支援訓練|失業保険を受給できない人が対象
求職者支援訓練は、雇用保険の適用がなかった、あるいは自営業を廃業したなどの理由で失業保険を受給できない人を主な対象とした制度です。
本人や世帯の収入・金融資産などの要件を満たせば、月10万円の「職業訓練受講給付金」を受けながら受講できます。
訓練期間は2か月から6か月程度のコースが中心で、事務系・IT系を軸に基礎から学べる内容が多いのが特徴です。
給付金を受け取るには、主に次のような要件を満たす必要があります。
- 本人の収入が月8万円以下であること
- 世帯全体の収入が月30万円以下であること
- 世帯全体の金融資産が300万円以下であること
- 現住所以外に土地・建物を所有していないこと
- 訓練実施日のすべてに出席すること(やむを得ない理由がある場合を除く)
これらはあくまで代表的な要件です。
個別の判定は世帯の状況によって変わるため、詳しくはハローワークに確認しましょう。
2つの制度の違いを表にまとめます。
| 項目 | 公共職業訓練 | 求職者支援訓練 |
|---|---|---|
| 主な対象者 | 失業保険の受給資格がある人 | 失業保険を受給できない人 |
| 受講料 | 原則無料(テキスト代等は自己負担) | 原則無料(テキスト代等は自己負担) |
| 訓練期間中の主な給付 | 失業保険(基本手当)が訓練修了まで継続 | 要件を満たせば職業訓練受講給付金(月10万円) |
| 訓練期間の目安 | 3か月〜2年 | 2か月〜6か月 |
教育訓練給付金との違い
職業訓練とあわせて名前が挙がりやすい制度に「教育訓練給付金」があります。
教育訓練給付金は、在職中の人や離職後1年以内の人が対象で、自分で民間スクールの講座等を受講し、修了後にかかった費用の一部が支給される仕組みです。
一方、職業訓練は主に離職者を対象とし、受講料そのものが原則無料になる点で大きく異なります。
両者の違いを整理すると次のとおりです。
| 項目 | 職業訓練 | 教育訓練給付金 |
|---|---|---|
| 主な対象者 | 離職者 | 在職者や離職後1年以内の人 |
| 受講料 | 原則無料 | いったん自己負担 |
| 給付のタイミング | 受講中に失業保険が支給される | 修了後に受講費用の20〜80%程度が支給される |
教育訓練給付金の給付率や対象講座は制度改正で見直されることがあるため、最新情報は厚生労働省「教育訓練給付制度」で確認してください。
なお、専門実践教育訓練を初めて受講する45歳未満の離職者向けには、教育訓練支援給付金という制度も別途用意されています。
あわせて自分が使える制度を確認しておくと、選択肢を取りこぼしにくくなります。
職業訓練で学べる主な分野の例
職業訓練と聞くと事務やパソコンスキルのイメージが強いかもしれませんが、実際に開講されているコースの分野はかなり幅広いです。地域や時期によって開講状況は変わりますが、代表的な分野の例を挙げると次のとおりです。
| 分野 | コース例のイメージ |
|---|---|
| 事務・OA系 | ビジネス実務、経理事務、Word・Excel活用など |
| IT系 | Webデザイン、プログラミング、ITパスポート対策など |
| 介護・福祉系 | 介護職員初任者研修、医療事務など |
| ものづくり・建設系 | CAD、電気工事、溶接、内装施工など |
| 販売・接客系 | 販売実務、ビジネスマナー、接客スキルなど |
希望する職種によって必要なスキルは変わるため、まずはハローワークの職業相談で、自分に合った分野やコースの候補を一緒に整理してもらうとスムーズです。
最新の開講コースはハローワークインターネットサービスで都道府県・分野・期間ごとに検索できます。
失業保険を受給しながら職業訓練を受けるための4つの条件
公共職業訓練を受けて失業保険と併用するには、ハローワークから「受講指示」という形で正式な受講許可を受ける必要があります。主な条件は次の4つです。
ハローワークで求職の申し込みをしていること
退職後、まずはハローワークに離職票を提出し、求職の申し込みを済ませておく必要があります。
求職の申し込みより前に訓練を受講しても、受講指示の対象にはなりません。手続きの順番を間違えないよう注意しましょう。
受講開始日に失業保険の残日数が一定以上あること
受講指示を受けるには、訓練開始日の時点で失業保険の所定給付日数がどれくらい残っているかも重要な判断材料になります。
目安となる残日数は次のとおりです。
| 所定給付日数 | 給付制限ありの場合に必要な残日数 | 給付制限なしの場合に必要な残日数 |
|---|---|---|
| 90日 | 31日以上 | 1日以上 |
| 120日 | 41日以上 | 1日以上 |
| 150日 | 51日以上 | 31日以上 |
| 180日 | 61日以上 | 61日以上 |
| 210日 | 71日以上 | 71日以上 |
| 240日 | 91日以上 | 91日以上 |
| 270日 | 121日以上 | 121日以上 |
| 330日 | 181日以上 | 181日以上 |
自分の所定給付日数や残日数は、雇用保険受給資格者証で確認できます。
受講指示は訓練開始時点の残日数で判断されるため、訓練を検討している人は早めにハローワークへ相談しておくと安心です。
細かい判断基準は個別の状況によって異なるため、正確な数字は窓口で確認するのが確実です。
ハローワークから受講の必要性を認められていること
訓練の申し込み前には、ハローワークの職業相談を受ける必要があります。
相談の中で、希望する職種と訓練内容が合っているか、今のスキルと希望職種との間にどれくらいギャップがあるかなどをふまえて、訓練を受ける必要性が判断されます。
単に「訓練を受けたい」という意欲だけでなく、再就職につながるかどうかが見られる点は押さえておきましょう。
前回の公共職業訓練の修了から1年以上経過していること
過去に公共職業訓練を修了している場合、修了日の翌日から起算して1年間は、原則として新たに訓練を受けることができません。
ただし、求職者支援訓練の基礎コースから公共職業訓練へ連続して受講するなど、ハローワークが再就職のために必要と認めた場合には、例外的に連続受講が認められることもあります。

失業保険をもらいながら職業訓練を受ける4つのメリット
条件を満たして職業訓練を受講すると、次のようなメリットが得られます。
訓練修了まで給付が延長される(訓練延長給付)
職業訓練の受講中に失業保険の所定給付日数が終了しても、受講指示を受けていれば訓練修了日まで基本手当の支給が延長されます。
これを「訓練延長給付」と呼びます。
給付制限期間が解除される
転職など自己都合で退職した場合、通常は7日間の待期期間のあとに給付制限期間が設けられ、その間は失業保険を受け取れません。
この給付制限期間は2025年4月の制度改正により、原則2か月から原則1か月へ短縮されています。
参考:厚生労働省「令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について」
さらに、ハローワークの受講指示を受けて職業訓練を受講すると、給付制限期間そのものが訓練開始日の前日で解除され、訓練開始日以降はすぐに基本手当を受け取れるようになります。
受講手当・通所手当が支給される
公共職業訓練の受講中は、基本手当に加えて次のような手当が支給される場合があります。
- 受講手当:訓練に出席した日ごとに支給(日額500円、上限40日分)
- 通所手当:訓練施設までの交通費相当額(上限は月額42,500円)
- 寄宿手当:やむを得ず家族と別居して寄宿する場合に支給(月額10,700円)
具体的な支給要件や金額は住んでいる地域やケースによって異なるため、詳細はハローワークに確認してください。
職業訓練が「求職活動」として認められる
失業保険を受け取り続けるには、原則として月2回以上の求職活動実績が必要です。
しかし訓練期間中は、訓練を受けていること自体が求職活動とみなされるため、別途求人に応募したりセミナーに参加したりする必要はありません。
訓練施設からの出席報告をもとに失業認定の手続きが行われ、指定の口座に基本手当が振り込まれます。
職業訓練の申し込みから受講開始までの流れ
公共職業訓練を受講するまでの大まかな流れは次のとおりです。
ハローワークで職業相談を受ける
離職票を提出して求職の申し込みをしたあと、ハローワークの窓口で職業相談を受けます。
ここで希望する職種や訓練の必要性を確認し、自分に合いそうなコースの方向性を相談します。
職業訓練のコースを決めて申し込む
ハローワークの窓口やパンフレット、ハローワークインターネットサービスでコースを検索し、募集期間内に申し込みます。
事前に施設見学ができるコースもあるため、迷ったら実際に足を運んで雰囲気を確認するのもおすすめです。
選考試験(筆記・面接)を受ける
多くのコースでは、国語や数学などの基礎的な筆記試験に加えて、個人またはグループでの面接が行われます。
人気コースは倍率が高くなる傾向があるため、志望動機や訓練後のキャリアプランを具体的に説明できるよう準備しておくと安心です。
合格後、受講を開始する
合否は郵送で通知されます。
合格したら再びハローワークで手続きを行い、正式に受講指示を受けたうえで、指定された日から訓練がスタートします。
訓練コースの検索は、全国の求人・訓練情報を扱うハローワークインターネットサービスから行えます。
受講中に注意すべき2つのポイント
職業訓練は再就職のための制度なので、通学中は一定のルールが設けられています。
出席率8割が修了の絶対条件
多くのコースで、修了の要件として訓練時間の8割以上の出席が求められます。
出席率が不足すると退校となる可能性があり、退校になるとその翌日以降は基本手当の延長や職業訓練受講給付金の支給も打ち切られます。
体調不良や就職活動による欠席は、診断書や証明書の提出で考慮されることがありますが、無断欠席が続く場合や就職支援を拒否した場合は、給付金の返還を求められることもあるため注意が必要です。
アルバイトには制限がある
訓練受講中のアルバイト自体は禁止されていませんが、週の労働時間が20時間以上になると「就職した」とみなされ、失業保険が受け取れなくなります。
契約内容によっては訓練校を退校になる可能性もあるため、働く時間には注意しましょう。

よくある質問
職業訓練中に内定が決まったらどうすればいい?
入社日が決まったら、速やかにハローワークと訓練校の両方に報告し、退校日を相談してください。
入社日によっては、最後まで訓練を受けきれるケースもあります。
倍率が高いコースは受かりにくい?
人気コースは倍率が上がり、選考に通りにくくなる傾向があります。
筆記試験対策に加えて、面接で就職への意欲や希望コースとの関連性をしっかり伝えることが対策のポイントです。
職業訓練の受講歴は履歴書に書いてもいい?
記載して問題ありません。訓練校名やコース名、習得したスキル、作成した成果物などを具体的に書くことで、スキルアップの裏付けとしてアピールできます。
オンライン(eラーニング)形式の訓練もある?
ITスキルや事務系スキルを中心に、オンラインで受講できるコースも増えています。
自宅で学べる一方、通学と同様に8割以上の出席が条件となるため、安定したネット環境の準備と自己管理が求められます。
訓練の途中で辞めたらどうなる?
就職以外の理由で途中退校した場合、退校日以降の受講手当・通所手当や訓練延長給付は支給されなくなります。
ただし、退校後も失業保険の所定給付日数が残っていれば、その分の基本手当は引き続き受け取れます。
妊娠や長期入院など、やむを得ない事情がある場合は個別に取り扱いが異なるため、早めにハローワークへ相談しましょう。
選考に落ちたらどうすればいい?
選考に不合格でも、失業保険の受給資格自体がなくなるわけではありません。
別のコースの募集時期にあわせて再挑戦することもできますし、通常の求職活動を続けながらタイミングを見て応募し直すことも可能です。
不合格の理由や次の対策について、ハローワークの職業相談で相談してみるのもひとつの方法です。
受講前に確認しておきたいこと
職業訓練は原則無料で受けられる制度ですが、募集定員に対して応募が少ない場合はコース自体が開講されないこともあります。
また、訓練期間が長くなるほど生活費の見通しを立てておくことが重要になるため、受講前には次のような点を確認しておくと安心です。
- 希望するコースの募集時期と選考スケジュール
- 訓練期間中に受け取れる基本手当や各種手当のおおよその金額
- 託児サービスの有無や在宅受講が可能なコースかどうか
- 訓練修了後にどのような職種への就職を目指すか
小さな子どもがいるなど通学に不安がある場合は、託児サービスを利用できるコースやオンライン形式のコースも選択肢になります。気になる点は、申し込み前にハローワークの窓口で相談しておきましょう。
まとめ
失業保険を受給しながら職業訓練を受けると、給付期間の延長や給付制限の解除、各種手当の支給など、経済的な負担を抑えながらスキルを身につけられるメリットがあります。
一方で、受講には求職申込やハローワークでの相談、選考試験といった手順があり、出席率などの条件も守る必要があります。制度の内容は法改正によって変わることもあるため、申し込み前には必ず最新の情報をハローワークで確認しましょう。
まずは最寄りのハローワークに相談し、自分の状況で受講指示を受けられるかどうかを確認するところから始めてみてください。
失業保険にまつわる手続きは複雑で、給付制限など個別の判断が必要な場面も少なくありません。
「自分の場合はどの制度が使えるのか」「手続きを一人で進めるのが不安」という人は、退職後の給付金申請をサポートする退職コンシェルジュの社会保険給付金サポートを活用すると、条件確認から申請までを専門スタッフに相談しながら進められます。まずは無料相談で、自分が受けられる給付の可能性をチェックしてみてはいかがでしょうか。
給付金がいくらもらえるか
知りたい方
給付金サポートを
ご検討中の方
評判・口コミ
給付金がもらえる
転職支援を活用する方
1年以上ご通院を続けている方
もらえる給付金ラボ
退職コンシェルジュについて
退職して失業保険を受け取りながら、次の仕事のためにスキルを身につけたいと考える人は少なくありません。
