「退職給付金サポート」とは何か、正しく理解しよう
「退職給付金」という公的制度は存在しない
まず根本的な点を押さえておく必要があります。「退職給付金」という名称の公的制度は、日本に存在しません。
業者や広告が「退職給付金」と呼んでいるものの実態は、雇用保険の基本手当(一般に「失業保険」や「失業手当」と呼ばれるもの)です。これはハローワーク(公共職業安定所)で申請を行い、一定の要件を満たした場合に受給できる公的支援制度です。
給付額や給付日数は、退職理由・雇用保険の加入期間・年齢・退職前の賃金額などによって雇用保険法に基づき自動的に算定されます。外部の民間業者が介入することで受給額や期間が変わる性質のものではありません。
制度の詳細は、厚生労働省が公開している「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」で確認できます。
サポート事業者が実際に提供しているサービス
では、退職給付金サポートを名乗る事業者は何をしているのでしょうか。正当な業務範囲としては、以下のようなものが挙げられます。
- クリニック紹介(法令遵守で適切に運営されているもの)
- 会社、ハローワーク、健康保険組合とのやり取りの補助
- 書類の記入指導
- 再就職先斡旋、就労移行支援
重要なのは、ハローワークや健康保険組合との申請手続き自体を代行できる資格を持つのは社会保険労務士のみという点です。資格のない業者が「申請代行」を行う場合、社会保険労務士法違反になる可能性があります。
国が認めた「悪質業者トラブル」の実態
国民生活センターの相談件数は4年で約5倍に急増
2025年12月3日、国民生活センターは「失業保険の給付額等を増やすことができるとうたう申請サポートに注意——不正受給を促すかのようなケースも!」と題した注意喚起を公表しました(国民生活センター 発表情報 2025年12月3日)。
PIO-NETに登録された相談件数の推移は以下のとおりです。
| 年度 | 相談件数 |
|---|---|
| 2021年度 | 42件 |
| 2022年度 | 54件 |
| 2023年度 | 113件 |
| 2024年度 | 217件 |
| 2025年度(10月末時点) | 216件 |
2025年度はすでに2024年度の年間件数に迫る水準であり、問題はむしろ拡大しています。同時期、東京労働局も「「失業保険の金額・期間を増やせる」とうたう申請サポートにご注意ください」として独自に注意喚起を公表しており、厚生労働省・消費者庁・国民生活センターが連携して啓発資料を作成するに至っています。
実際に報告された3つのトラブル
国民生活センターが公表したトラブルは、大きく次の3つに分類できます。
約束した給付金が受け取れなかった
「最大200万円の失業保険が受給できる」と説明を受け、約30万円のサポート契約を締結。しかし実際の給付額はそれをはるかに下回るものだった。サポート費用の返金を求めたが応じてもらえない、というケースが最多です。
解約時に高額な違約金を請求された
サービス途中で解約を申し出たところ、契約書に記載されていた違約金条項を根拠に高額請求を受けた。契約前に違約金について十分な説明がなかったケースも多く報告されています。
不正受給を促すかのような誘導を受けた
これが最も深刻です。メンタル不調がないにもかかわらず、業者から指定のクリニックを受診するよう指示を受けた事例が確認されています。傷病による離職として認定されれば給付日数が延びる制度を悪用しようとするもので、発覚した場合は不正受給として受給額の3倍返還を求められる可能性があります。最も大きなリスクの一つと言えるでしょう。
失業保険を「増額できる」は嘘?
サポート業者が謳う「失業保険の増額」や「最大200万円」の正体は失業手当の「就職困難者制度」を利用した受給期間の延長を指します。
一般離職者での通常申請の場合受給期間は3~5か月のところを10か月(45歳以上は12か月)となるため、その分受給総額や再就職手当も多くなるという仕組みです。
参考:ハローワークインターネットサービス|よくあるご質問(雇用保険について)
この就職困難者制度の申請については国内でも件数が少なく、またインターネット上にも情報がないため複雑な書類手続きの手ほどきを行うサポート業者は、仕事でストレスを抱えている方や元々精神疾患の診断を受けている方には心強い味方となるでしょう。
しかし問題なのは、就職困難者の受給要件となるうつ病の診断を、全くメンタルの不調を抱えていない方にも適用させるべく案内及び不正な提携クリニックの斡旋を行う業者の存在です。
この認定を行うのはあくまでもハローワークの職員であり、民間業者が「認定させる」ことはできません。離職理由の実態と異なる申告を業者に促された場合、それは不正申告になります。
給付額・給付日数が法令に基づいて算定されることは、厚生労働省のQ&Aでも明確に示されています(厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」)。
悪質業者を見分ける7つのポイント
退職コンシェルジュの運営目線から、悪質業者に共通するパターンをお伝えします。以下の項目に1つでも該当する場合は、契約前に立ち止まることを強くお勧めします。
ポイント1:「給付額を増やせる」「受給期間を延ばせる」と断言する
前述のとおり、給付額と給付日数は法令で決まります。「増やせる」と断言する業者は、法令への理解が不十分か、意図的に誤解を与えようとしているかのいずれかです。信頼できる業者は「可能性を確認します」という表現にとどめ、保証はしません。
ポイント2:費用が著しく高額(目安として30万円超)
正当な業者であれば、成果に応じた後払いや、費用対効果が説明できる料金体系を提示します。また、解約時の返金を認めない条件を提示する業者は要注意です。
ポイント3:社会保険労務士など有資格者の関与が不明
申請の正確性・適法性を担保するには、社会保険労務士の関与が不可欠です。「誰が監修しているのか」「社労士の登録番号は」という問いに明確に答えられない業者は信頼性に欠けます。
ポイント4:特定のクリニック・医師への受診を勧める
前述の就職困難者制度や傷病手当金の申請手続きは医師からの適切な診断が必要となりますが、自覚症状が一切ない場合でも提携クリニックで100%診断を取得可能であるという案内を受ける場合があります。不正受給に該当するためどこのクリニックに通院するかという自由を与えず特定のクリニックへの通院を指定してくる場合はかなり注意が必要です。
ポイント5:契約前に書面での詳細説明がない
特定商取引法に基づき、一定の取引では書面交付が義務付けられています。サービス内容・料金・解約条件が明記された書面を契約前に渡さない業者は、法令遵守の意識が低いと判断できます。
ポイント6:解約条件・違約金の記載が曖昧
契約書の違約金条項は必ず確認してください。「途中解約不可」「違約金は残額の全額」といった一方的な条件が記載されている場合は、消費者契約法上問題がある可能性があります。
ポイント7:SNS広告と口コミ情報しか実態が確認できない
会社名・所在地・代表者名・法人番号が公式サイトに明記されているか確認しましょう。法人番号は国税庁の法人番号公表サイトで誰でも照合できます。設立から日が浅い法人や、記載情報が公式登記と一致しない業者は特に注意が必要です。
また、日本年金機構のサイトでは、その会社の社員数=保険加入者の数も社名や法人番号の入力で確認することができます。
被保険者数が極端に少ない場合は問い合わせ窓口やサポート体制をほぼ外部のリソースで賄っており、会社としての実態は存在していないと言えるでしょう。
サポート業者を使った方が良いケースと、自分でやった方が良いケース
退職コンシェルジュとして多くの方の相談を受けてきた経験から言えば、サポート業者の活用が有効なケースと、自分で申請した方が明らかに良いケースは分かれます。費用を払う前に、まず自分がどちらに当てはまるかを確認してください。
サポート業者の利用が向いているケース
以下のいずれかに当てはまる方は、適切なサポートを受けることで正しい申請につながる可能性があります。
仕事続きで精神的・体力的に疲弊しているが、金銭的に生活が不安で仕事を辞められない
そもそもが複雑な申請手続きに加え離職直後は心身ともに余裕がないことも多いため手を動かすだけで申請可能なサポート業者はかなり心理的負担の軽減になるででょう。また、仕事上のストレスが原因で退職する方はメンタルクリニックへの通院を検討している方も多いのでは。休養の時間を確保するための申請手続きにスムーズに切り替えることが可能です。
複数の関連制度(傷病手当金・失業保険・住民税猶予など)も組み合わせて活用したい
傷病手当金申請後の失業保険への切り替えや、切り替えるにしてもさらに就職困難者制度も利用したいとなった場合は、特殊な手続きが必要となるケースが多いです。一つ手順を間違えるだけで制度利用が難しくなってしまうため、専門業者を頼ることでそのリスクを減らすことができます。
給付金受給後のスムーズな再就職を目指したい・給付金受給中に再就職に向けて準備したい
給付金受給後の課題の一つとしてはスムーズな再就職や社会復帰ができるかという点が挙げられます。
「退職コンシェルジュ」をはじめ、最近ではほかにも転職・再就職サポートの機能を持った給付金業者も増えてきています。
給付金に対する知見から再就職手当の受給のための最適なスケジュール調整など可能など独自の強みを持つほか、その人の経歴や特性も既に把握できているため、申請サポートから再就職サポートまで一つの業者の一気通貫で行うことは様々なメリットがあります。
また、「退職コンシェルジュ」では転職サポートに加え就労移行支援も行っております。今後はこういった退職から退職後の過ごし方、再就職までを包括的にサポート可能かという点が業者を選ぶうえで重要なポイントとなるでしょう。
また、転職サポート・就労移行支援共に事業の開始にあたっては国からの認可が必要となるため、会社としてきちんと法令遵守で運営しているのかの証明の一つになります。
離職理由が複雑で、特定受給資格者・特定理由離職者への該当可能性がある
ハラスメントや健康上の理由による退職、雇用条件の一方的な変更など、一見「自己都合」に見えても法令上は「会社都合」相当となる場合があります。就職困難者制度へのスライドが難しい場合でも特定理由離職者認定にあたってはどんな情報が必要かなどは、専門的な知識が必要です。
自分で申請した方が良いケース
以下に当てはまる場合は、一般離職者として自身で失業手当の申請を行うのみに留めるべきです。
精神的不調が一切ない
精神的な不調や自覚症状、仕事や私生活において全くストレスを感じていないという場合は制度利用の対象外となるためそれに伴いサポート業者の利用も本来はできません。一般離職者としての失業手当のみを申請しましょう。
今の会社に1年未満しか勤めていない
こちらも上記と同じく条件を満たせていないためサポート業者の利用はできません。
また、こちらについては解雇などの特殊な退職理由でない限りそもそも自分でも制度の利用はできません。
給与が極端に低い
各種退職給付金に分類される制度はどれも現職での総支給に基づき受給額が決定されます。
金銭的リスクやマイナスは起こらない仕組みになってはいるもののそれでもサポート料金を加味すると相対的に旨味が少ないケースもあります。
自分でハローワーク申請する場合の流れ
俗にいう退職給付金制度は使わず「自分で通常の失業手当のみを申請しよう」と決めた方のために、手続きの全体像を解説します。
こちらについては難しいことはなく、正確に手順を踏めば問題なく受給できます。
申請に必要な書類
ハローワーク窓口への初回来所時に必要な書類は以下のとおりです(厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」より)。
| 書類 | 入手先・補足 |
|---|---|
| 雇用保険被保険者離職票(1・2) | 退職した会社から郵送される(10日〜2週間が目安) |
| マイナンバーカード(または通知カード+本人確認書類) | 個人番号の確認と身元確認を兼ねる |
| 本人確認書類 | 運転免許証・パスポートなど写真付きのもの |
| 証明写真(縦3.0cm×横2.4cm)2枚 | スピード写真可。背景白・正面上半身 |
| 普通預金通帳またはキャッシュカード | 給付金の振込先として登録する |
| 印鑑 | 認印可 |
なお、離職票が会社から届かない場合は、ハローワークに相談することで仮手続きが可能です。
申請から受給までのステップ
大まかな流れは以下のとおりです。
STEP 1|離職票を受け取る
退職後、会社から「雇用保険被保険者離職票-1・2」が郵送されてきます。届いたら、記載されている離職理由に誤りがないか必ず確認してください。相違がある場合はハローワークに申し出ることができます。
STEP 2|ハローワークで求職申込・受給資格の決定
住所を管轄するハローワークへ出向き、求職の申し込みと受給資格の確認を行います。この日から「受給期間」のカウントが始まります。離職票が手元に届いたら、なるべく早めに手続きを行いましょう。
STEP 3|待機期間(7日間)
受給資格が決定してから7日間は、すべての退職者に共通の「待機期間」となり、この期間は給付されません。
STEP 4|給付制限期間(自己都合退職の場合)
自己都合退職の場合、待機期間終了後に給付制限期間が設けられます。2025年4月1日の雇用保険法改正により、この期間は原則2ヶ月から1ヶ月に短縮されました。ただし、過去5年以内に2回以上自己都合退職で受給歴がある場合は、従来どおり3ヶ月の給付制限が適用されます。
また、同改正では、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講している場合、給付制限が解除されて基本手当を受給できる「訓練特例」も導入されています。
STEP 5|失業認定・受給開始
指定された「認定日」にハローワークへ出向き、求職活動の状況を申告します。認定を受けると、約5営業日後に指定口座へ給付金が振り込まれます。以降、4週間ごとに認定日が設定され、所定給付日数を使い切るまでこのサイクルが続きます。
| ステップ | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| STEP 1 | 離職票の受け取り・確認 | 退職後10日〜2週間 |
| STEP 2 | ハローワークで求職申込・受給資格決定 | 離職票到着後なるべく早めに |
| STEP 3 | 待機期間 | 7日間(全員共通) |
| STEP 4 | 給付制限期間(自己都合の場合) | 原則1ヶ月(2025年4月改正後) |
| STEP 5 | 失業認定・受給開始 | 認定日から約5営業日で振込 |
2025年4月改正のポイントをおさえておく
2025年4月1日施行の雇用保険法改正は、退職者にとって重要な変更を含んでいます。主なポイントを整理します。
自己都合退職の場合の給付制限期間が原則2ヶ月から1ヶ月に短縮されました。これにより、以前は待機7日+給付制限2ヶ月=約2ヶ月半を待つ必要がありましたが、改正後は約1ヶ月半で初回給付を受けられるようになっています。
また、厚生労働大臣が指定する教育訓練(離職前1年以内の受講を含む)を受けていた場合、給付制限が完全に解除されます。スキルアップを検討していた方は、退職前にこの要件を確認しておくと有利に働く可能性があります。
もしトラブルに遭ったときの相談窓口
すでに契約してしまった・違約金を請求された・不審な指示を受けたという場合は、一人で抱え込まず以下の窓口にすぐに相談してください。
消費者ホットライン「188(いやや)」
最寄りの消費生活センターに自動的につながります。全国共通の番号で、土日祝日も対応している地域があります。
国民生活センター(相談窓口)
https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/index.html
電話相談のほか、Webでの相談受付も行っています。
住所を管轄するハローワーク
申請手続きそのものへの疑問や、離職票の記載内容に問題がある場合はハローワークへ。全国のハローワーク所在地はこちらから確認できます。
まとめ:退職給付金サポートを正しく判断するために
改めて整理します。
退職給付金サポートというサービスカテゴリは、正当な業者が存在する一方で、悪質な業者が業界全体の信頼性を大きく損ねているのが現状です。国民生活センターや東京労働局が公式に注意喚起を出しているという事実は、この問題の深刻さを示しています。
しかし、「業界に問題業者がいる」ことと「サービス全体が詐欺である」ことは、まったく別の話です。適切な業者を選び、正しい目的で利用すれば、複雑な手続きのサポートとして機能する場面はあります。
重要なのは、会社としてきちんと運営されている実態があるか、不正受給の斡旋を行わないか、社労士など有資格者の関与があるか、この3点です。
退職後の手続きに不安を感じている方、離職理由が複雑でどう対応すべきか判断できない方は、まずLINEや個別面談など無料相談の範囲から確認することを強くお勧めします。ハローワークや健康保険組合へ直接問い合わせてもいいでしょう。その上で、専門的なサポートの必要性を判断してください。
▼社会保険給付金サポートへのお問い合わせはこちら
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退職コンシェルジュについて
「退職給付金サポート」を検索しようとするとサジェストに表示される「詐欺」の文字。行政からの注意喚起も発表されそんな声をSNSや口コミサイトで目にする機会が増えています。
