2025.02.10

給付金について

病気療養のための退職で失業保険は受け取れる?期間別に解説

失業保険や傷病手当は、退職後の生活を安定させるための大切な支援制度です。それぞれの申請方法や手続きの流れを理解しておくことで、スムーズに受給できます。

本記事では、失業保険と傷病手当の概要および具体的な申請手順について詳しく解説します。

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病気療養のための退職で失業保険はもらえる?

失業保険は健康で働く意思と能力があり、積極的に再就職活動を行っている方が受給できる制度です。そのため、病気やケガで退職した場合、すぐに受給することはできません。まずは治療に専念することを優先しましょう。

健康が回復し、就労可能な状態になったら、失業保険の給付が可能です。ハローワークで求職を申し込んだあと、7日間の待機期間を経て、失業保険の受給が開始されます。病気による退職は「特定理由離職者」として扱われることもあり、通常の自己都合退職に比べて給付制限期間が短縮される可能性があります。

病気療養が必要で就職活動が難しい場合、失業保険の受給期間を延長することが可能です。通常は離職後1年間の受給期間を、最大で4年間まで延長できます。

失業保険とは

失業保険(失業手当)は、働く意思と能力があり、いつでも就労できる状態にある求職者に対して給付を行う雇用保険の制度です。失業期間中の生活安定を図り、再就職を支援する役割を果たしています。

ここでは失業保険の受給条件や受給金額、受給期間について解説します。

失業保険の概要

失業給付は、労働者が失業した場合や、雇用の継続が困難になる事由が生じた場合に支給されます。失業者の生活を安定させるとともに、再就職を目指す活動の支援が目的です。

雇用保険に加入している労働者が対象となり、保険料を納めていた期間に応じて受給資格が発生します。

失業保険の受給条件

失業保険を受給するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。条件は次の通りです。

  • 雇用保険に加入し、保険料を支払っていること
  • 離職前の2年間に12カ月以上の被保険者期間があること(特定受給資格者の場合は、1年間に6カ月以上)
  • 就労の意思と能力があり、かつ積極的に求職活動を行っていること

 

受給額は離職前の給与額や年齢によって異なり、給付開始までの期間も退職理由に応じて変わります。自己都合退職の場合、給付開始までに給付制限期間が設けられている一方で、会社都合退職は待機期間後にすぐ受給が開始します。

失業保険の受給金額

失業保険の受給額は「給付日数 × 基本手当日額」で決まります。一般的には、離職前の賃金の50%から80%程度が支給される仕組みです。具体的な計算手順は以下の通りです。

1. 賃金日額の計算方法:退職前6カ月の賃金合計 ÷ 180
2. 基本手当日額の計算方法:賃金日額 × 給付率
3. 基本手当総額の計算方法:基本手当日額 × 給付日数

給付率は離職時の年齢や賃金水準によって異なり、賃金が低いほど高い給付率が適用されます。

失業保険の受給期間

失業保険の受給期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。ただし、所定給付日数が330日の場合は1年と30日、360日の場合は1年と60日です。

受給期間中に病気やけが、妊娠、出産、育児などで30日以上働けない場合、その期間分だけ受給期間を延長できます。延長できる期間は最長で3年間です。

失業保険だけじゃない!病気療養の人が受け取れる給付金制度

失業保険は失業中の生活を支える重要な制度ですが、病気やけがなどで療養が必要な場合には、通常の失業保険以外にも利用できる給付金制度があります。

ここでは、ほかにどのような給付金を受け取れるのかを詳しく解説します。

【病気の療養期間が14日以内の場合】失業保険

失業保険の受給には、就労の意思と能力があり、求職活動を行っていることが基本条件です。しかし、14日以内に復帰できれば失業保険の申請は可能です。

療養期間が失業認定日と重なる場合には、ハローワークで認定日の変更手続きを行う必要があります。

【病気の療養期間が15日以上の場合】傷病手当

病気やけがの療養期間が15日以上続く場合、失業保険ではなく「傷病手当」が受給対象となります。傷病手当は失業保険と同様に雇用保険給付の一つであり、療養中の生活を支えるための制度です。

傷病手当の日額は、失業保険の日額と同額で計算されます。ただし、傷病手当の支給日数は、失業保険の所定給付日数からすでに支給された失業保険の日数を差し引いた残りの日数となります。なお。待期期間中や給付制限中は、失業保険同様、支給されません。

【病気の療養期間が30日以上続いた場合】傷病手当か受給期間の延長

療養期間が30日以上に及ぶ場合、求職者には以下の2つの選択肢があります。

1.引き続き傷病手当を受給する
2.失業手当の受給期間を延長する

傷病手当を受け続けることで、療養に専念しながら生活できます。傷病手当の支給日数は所定給付日数内で調整されます。

失業保険は延長も可能です。通常、失業保険の受給期間は退職日の翌日から1年間ですが、療養が長期化する場合には受給期間を最大で3年間延長できます。延長手続きを希望する場合には、ハローワークで「受給期間延長申請書」を提出する必要があります。

失業保険の受給における自己都合・会社都合とは

失業保険の受給条件や給付額は、退職理由によって大きく異なります。退職理由は大きく「自己都合退職」と「会社都合退職」に分類され、それぞれで適用される給付条件や待機期間が異なります。

ここでは、「自己都合退職」と「会社都合退職」の違いと、失業保険の受給にどのような影響を及ぼすのかを詳しく解説します。

自己都合退職とは

自己都合退職は、労働者自身の意思や個人的な事情により退職することを指します。具体的には、転職、結婚、出産、介護、家庭の事情、キャリアチェンジなど、労働者の自主的な理由で退職する場合のことです。

自己都合退職の場合、失業保険の給付条件が会社都合退職とは異なり、給付開始までに一定の期間が設けられています。まず、7日間の待期期間があり、その後さらに給付制限期間として2カ月間(2025年4月以降は1カ月間)の待機が必要です。給付制限期間中は失業保険を受け取ることができないため、自己都合退職を検討している場合は十分な貯蓄や計画的な準備が重要です。

会社都合退職とは

会社都合退職は、企業側の事情や都合により労働者が退職することを指します。具体的には、リストラ、事業縮小、倒産、解雇、退職勧奨、労働条件の大幅な変更、賃金未払い、過重労働、ハラスメントなど、労働者の責任によらない理由で退職する場合などです。

会社都合退職の場合、失業保険の給付条件が自己都合退職よりも優遇されます。例えば、給付制限期間が設けられず、7日間の待期期間を過ぎれば速やかに受給が開始されます。受給期間も自己都合退職より長く設定されることが一般的です。

病気療養のため退職は会社都合?自己都合?

退職理由が「病気療養」の場合、それが会社都合と自己都合のどちらに該当するかは状況により異なります。ハラスメントや過酷な労働環境が原因での病気療養であれば「会社都合」または「特定受給資格者」として認められる場合があります。

一方、本人の健康上の理由から退職を選択する場合は「自己都合」となるケースが一般的です。次でそれぞれのケースを詳しく解説します。

会社都合(特定受給資格者)になるケース

会社都合退職として認められるケースには、ハラスメントや過重労働など、企業側の不適切な行為が原因で労働者が病気になり、結果的に退職を余儀なくされる場合が含まれます。具体的な状況としては、職場でのパワハラ、セクハラ、あるいは長時間労働が原因で精神的・身体的な病気を患った場合が該当します。

このような場合、労働者の退職理由は「会社都合」として扱われる可能性が高くなります。認定されると、失業保険の給付制限期間がなくなり、待機期間終了後すぐに受給が開始されます。

特定理由離職者になるケース

病気やけがが原因で退職を余儀なくされた場合、「特定理由離職者」として認定される可能性があります。「特定理由離職者」の認定を受けると、失業保険の給付制限が緩和されます。具体的には、次のような人です。

  • 契約期間満了で更新を希望していたにもかかわらず、会社から一方的に契約を打ち切られた人(雇い止め)
  • 正当な理由のある自己都合により離職した人

 

特定受給資格者と同じように、給付制限が免除されるうえに、所定給付日数が手厚くなります。ただし、結婚や出産、育児、介護、体調不良やケガが理由の場合、所定給付日数は通常の自己都合退職と同じです。

参考:厚生労働省|特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準

失業保険と傷病手当の申請方法

失業保険や傷病手当の申請は、生活を安定させ、再就職活動を進めるために重要です。それぞれの申請方法には、特定の手続きや必要書類があります。

ここではそれぞれの具体的な申請手順を詳しく説明します。

失業保険の申請手順

失業保険を受給するためには、ハローワークでの求職申し込みと必要書類の提出が基本的な手順となります。

必要書類を準備する

申請の第一歩は、必要書類を準備することです。以下の書類が必要になります。

  • 雇用保険被保険者離職票-1・2
  • 雇用保険被保険者証
  • 証明写真(たて3cm×よこ2.4cm、正面上半身)×2
  • 本人名義の普通預金通帳またはキャッシュカード
  • 住所・氏名・年齢が確認できる本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)
  • 個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票のいずれか1つ)

 

これらの書類を揃えたうえで、ハローワークに向かいましょう。

ハローワークで求職の申し込みを行う

退職後は、ハローワークで求職の申し込みを行います。具体的な流れは以下の通りです。

1.求職申込書に記入する
2.必要書類を提出する
3.職業相談を行う

申し込み後、受給資格が決定すると「失業等給付受給資格者のしおり」が渡されます。また、「雇用保険説明会」の日時が案内されるため、忘れずに確認しておきましょう。

待機期間が過ぎるのを待つ

受給資格が確定すると、7日間の待機期間が設けられます。待機期間中に短時間の勤務やアルバイトをすると、失業保険の給付に影響を及ぼすため注意が必要です。

待機期間中に入社日を迎えると、再就職手当を受け取る資格を失うため、計画的に進めることが重要です。

雇用保険受給説明会に参加する

案内された説明会に参加することは必須です。説明会では、失業保険の仕組みや求職活動の進め方が詳しく説明されます。以下を持参してください。

  • 雇用保険受給資格者のしおり
  • 印鑑
  • 筆記用具

 

説明会終了後には、「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が渡され、初回の失業認定日が案内されます。

失業認定日にハローワークを訪れる

失業認定日は、ハローワークが失業の事実を認定する日です。失業認定申告書を提出し、就職活動の実績を報告する必要があります。

通常は4週間ごとに1日、指定された日が失業認定日となります。

傷病手当の申請手順

傷病手当は、病気やけがで就労が難しい場合に受給できる給付金です。申請方法は以下の通りです。

1.傷病手当支給申請書の入手
2.必要書類の準備
3.申請を行う

傷病手当支給申請書は、ハローワーク窓口やハローワークインターネットサービスからダウンロードできます。傷病手当支給申請書に加えて、受給資格者証などの関連書類を揃えましょう。

書類が揃ったら、住所地を管轄するハローワークに申請します。診断書は必要ありませんが、医療機関で労働不能な状態であると診断を受けなければなりません。

まとめ

失業保険や傷病手当は、退職後の生活を支える重要なサポートとなり、再就職や療養に向けた大きな支えになります。ただし、正確な申請手続きや必要書類の準備が欠かせないため、事前に十分な情報収集を行い、スムーズな手続きができるよう備えることが重要です。

また、申請手続きが複雑で不安を感じる方や、適切に進められるか心配な場合には、専門家のサポートを受けることをおすすめします。「社会保険給付金サポート」では専門家が失業保険の手続きをサポートします。

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